高齢者向け住宅の数値目標と「サービス付き高齢者向け住宅」登録制度

 国土交通省では、住生活基本計画(全国計画)の中で、高齢者向け住宅に関する数値目標を示している。

関連エントリー

2 住生活の安心を支えるサービスが提供される環境の整備
 高齢者や障害者が安心して暮らすことができるサービスや、子育て世帯が安心して子どもを産み育てることができるサービスなど、住生活の安心を支えるサービスが地域において提供され、こうしたサービスをニーズに応じて受けることができるための環境の整備を図る。


【指標】
[高齢者の安定した住まいの確保]
・高齢者人口に対する高齢者向け住宅の割合 【0.9%(平17)→3~5%(平32)】
[地域における福祉拠点等の構築]
・生活支援施設を併設している公的賃貸住宅団地(100戸以上)の割合【16%(平21)→ 25%(平32)】


【基本的な施策】
○ 医療・介護・住宅が連携し高齢者が安心できる住まいを確保するため、サービス付きの高齢者向け住宅の供給を促進する。
○ ライフステージに応じた住み替えの促進を図るため、住み替え時の金銭負担の軽減等を図るリバースモーゲージの普及の促進等を行う。
○ 高齢者、障害者、子育て世帯等(以下「高齢者等」という。)の地域における福祉拠点等を構築するため、公的賃貸住宅団地等において、民間事業者等との協働による医療・福祉サービス施設や子育て支援サービス施設等の生活支援施設の設置を促進する。
○ 公的賃貸住宅の計画的な建替え、ニュータウン再生の支援等を通じて、高齢者をはじめとする居住者の生活の利便性の向上を図る。

 高齢者人口は、2005年の2600万人から2020年には3600万人と大幅に増加する。高齢者向け住宅の割合を2020年には3〜5%にするためには、約110万〜180万人分の住宅確保が必要となる。その主体は、サービス付きの高齢者住宅となる。


 高齢者用住宅及び老人ホームなどの居住系サービスは、http://www.koujuuzai.or.jp/html/page07_01_03.html#01表紙・目次・第1部「はじめに―高齢期の住まい方、あなたはどうしますか?」第3部「知っておきたいこと―資金計画・契約・諸制度など」をみると、次のように分類される。


(1)高齢者用住宅
 高齢者向けに整備された住宅である。介護サービスが必要な場合には、介護保険居宅サービスを利用する。
1)シルバーハウジング
 バリアフリー化され、生活援助員(ライフサポートアドバイザー)が生活相談や緊急時対応などのサービスを提供する公共賃貸住宅である。運営主体は地方公共団体などである。60歳以上の自立した高齢者が対象である。収入要件があり、持ち家があれば入居できない。
2)高齢者専用賃貸住宅高専賃
 高齢者の入居を拒否しない住宅として都道府県知事に登録された賃貸住宅のうち、専ら高齢者の単身・夫婦世帯のみを入居対象とする住宅である。
3)高齢者円滑入居賃貸住宅(高円賃)
 高齢者の入居を拒まない賃貸住宅として整備された住宅である。
4)高齢者向け有料賃貸住宅(高有賃)
 バリアフリー化した構造・設備が備わっており、緊急時対応サービスが受けられる賃貸住宅として都道府県知事が認定した高齢者向け住宅である。


(2)老人ホームなどの居住系サービス
 同じ名称の施設でも、介護保険の特定施設に分類されるものとそれ以外のものとに分かれる。前者では、特定施設入居者生活介護を算定する。後者では、介護サービスが必要な場合には、介護保険居宅サービスを利用する。
1)ケアハウス
 身の回りのことは自分でできるが、独立して生活するには不安がある人を対象とした施設である。
2)軽費老人ホーム
 食事の提供その他日常生活上必要な便宜の供与(無料又は低額な料金)を目的とした施設である。食事サービスのついているA型と自炊型のB型がある。ケアハウスも軽費老人ホームの一形態である。
3)養護老人ホーム
 主に経済的な理由によって自宅での生活が困難な高齢者の自立者を入所させ、養護することを目的とする施設である。行政による措置施設である。
4)有料老人ホーム
 入浴、排せつ若しくは食事の介護、食事の提供又はその他の日常生活上必要な便宜(洗濯、掃除等の家事又は健康管理)の供与を目的とした施設である。さまざまな類型や権利形態がある。
 類型としては、介護付、住宅型、健康型、がある。なお、介護保険特定施設に認可された施設以外は、介護付と表記することができない。住宅型では外付けの介護サービスを利用する。健康型は介護が必要となったら、契約解除となる。
 権利形態としては、利用権方式、建物賃貸方式などがある。利用権方式とは、居住部分と介護や生活支援等のサービス部分の契約が一体となっているものである。有料老人ホーム特有の契約方式で、本人の退去をもって、契約が終了する。


 第22回 消費者委員会 議事録 : 消費者委員会 - 内閣府にある(資料2−1) 有料老人ホームについて (PDF形式:304KB)を見ると、有料老人ホームだけでなく、高専賃の増加も顕著であることがわかる。


 有料老人ホームの契約に関する実態調査報告 : 消費者委員会 - 内閣府有料老人ホームの契約に関する実態調査報告 1〜26ページ(PDF形式:692KB)を見ても、同様の傾向があることがわかる。特養、老健軽費老人ホームと比べ、グループホームや有料老人ホームに次ぐ増加数を高専賃は示している。



 高専賃、高円賃、高優賃の既存3施設に関しては、施設面や運営面で様々な問題点が指摘されていた。このため、国土交通省厚労省は、所管する「高齢者住まい法」を改定し、サービス付き高齢者向け住宅登録制度を創設し、2011年10月より登録が始まった。高専賃、高円賃、高優賃は廃止され、サービス付き高齢者向け住宅に一本化されることになった。複雑な制度を一本化し、補助・融資・税による支援策を充実することで民間による供給を促進することを政府は目指している。
 概要は次のとおりである。登録基準は高専賃と比し、厳格になっている。

【登録基準】 ※有料老人ホームも登録可
《住宅》
 床面積(原則25m2以上)、便所、洗面設備等の設置、バリアフリー
《サービス》
 サービスを提供すること。(少なくとも安否確認・生活相談サービスを提供)
《契約》
 高齢者の居住の安定が図られた契約であること、前払家賃等の返還ルール及び保全措置が講じられて いること
【事業者の義務】
 入居契約に係る措置(提供するサービス等の登録事項の情報開示、入居者に対する契約前の説明)
 誇大広告の禁止
【指導監督】
 住宅管理やサービスに関する行政の指導監督(報告徴収・立入検査・指示等)


 有料老人ホームも基準を満たせば登録が可能となった。しかし、前払い金に対する基準を満たすことが困難ということもあり、実際には多くの有料老人ホームはサービス付き高齢者向け住宅の登録をしないと予想されている。高齢者向け居住施設は、今後、サービス付き高齢者向け住宅と有料老人ホームの2類型を軸として展開される。


 急激な成長をにらみ、住宅業者を中心に高齢者向け住宅市場への参入が始まっている。医療・保健・福祉複合体を運営している民間医療機関も意識的に、高齢者向け住宅を手がけ始めている。病院、老健、居宅サービスに住宅分野を巻き込む動きが加速している。高齢者のなかでも比較的裕福な層の囲い込みが始まっている。
 一方、高齢者の中には無年金者など低所得層も少なくない。民間資本を頼りにサービス量の増大を図った場合、低所得層は行き場を失う。本来なら、社会的資本として高齢者向け住宅は公的に整備する必要があるが、財政面の困難さもあり政府にはその気がない。
 高齢障害者の住環境整備は、リハビリテーション関係者にとっても重要な課題である。高齢者が安心して住み慣れた地域で生活できるという目標達成のためには、地域ケア推進の重要なパートナーとなりうる事業者を見極め、意識的に連携していくことが求められる。