ほめる効果

 本日、NHKスペシャルが再放映された。UCLAのDobkin教授が、ほめることの効果に関する発言をしていたが、元論文が見つかったので紹介する。

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 International randomized clinical trial, stroke inpatient rehabilitation with reinforcement of walking speed (SIRROWS), improves outcomes. - PubMed - NCBIは、ほめること(心理的強化)が脳卒中患者の歩行速度にどのような影響を及ぼすかを調査した論文である。概要は次のとおりである。

  • 研究参加施設: コーディネート施設はUCLA。米国8施設、米国外10施設が対象者を出した。日本からは、森之宮病院(大阪)が参加。
  • 対象: 179名。
  • 方法: 対象は、 (daily reinforcement of speed, DRS) 群88名と、no reinforcement of speed (NRS)群91名とにランダム化された。毎日、理学療法の一環として、10m歩行が実施された。DRG群は、歩行速度の情報を受けた。その後、心理的強化を受けた。例えば、「良かったですよ。何秒で歩けましたね。」と述べた後、「何秒速くなりましたよ。」、「だいたい同じ速度で歩けるようになっていますね。」、「もう少ししたら、もっと早く歩けるようになることは間違いないですね。」といった励ましを受けた。一方、コントロール群は、歩行速度は毎日計測せず、歩行速度に関する情報は得なかった。
  • 結果 平均±標準偏差
    • 歩行速度: DRG群 0.45±0.37 m/s → 0.91±0.57 m/s、NRS群 0.46±0.34 m/s → 0.72±0.44m/s(P value 0.01)
    • リハビリテーション入院期間: DRG群 42.8±34.7日、NRS群 40.4±28.7日 (P value 0.62)
    • 3分間歩行距離: DRG群 131.9±75.4m、NRS群 112.2±61.0m (P value 0.09)
    • FAC(Functional Ambulation Classification)*1 ≧4(平地歩行以上自立): DRG群 4.9% → 36%、NRS群 4.8% → 24% (P value 0.12)
  • 討議より: 適度のフィードバックと心理的強化は単独で、安全、実用的、low-technology、無コストの介入でありながら、十分な歩行速度の改善と関連する機能的帰結をもたらすことが示された。


 心理的強化のメカニズム自体については、論文の中では詳しくは触れられていない。NHKスペシャルの中では、ほめるコツとして、「具体的にほめる」、「すかさずほめる」ことが重要ということが強調されていた。運動学習だけではなく、研修医の教育にも応用できる原則かもしれない。