外来棟取り壊し中

 外来棟が中破と認定され、取り壊し作業が始まっている。
 鹿島:小破・中破・大破とはをみると、建物の被害は、軽微、小破、中破、大破、崩壊に分類されている。中破とは、「柱に典型的なせん断ひびわれ・曲げひび割れ、耐力壁にひび割れが見られ、RC二次壁・非構造体に大きな損傷が見られるもの。」となっている。RC壁とは、鉄筋コンクリート壁のことである。言うならば、中破とは、建物自体は崩壊せず人命は保護できるが、その後の使用に耐えられなくなった状態といえる。


 外来棟で行っていた事業のうち、外来機能は病棟側に集約した。診療スペース、待合室とも狭いところに押し込められ、環境が悪化している。職員の休憩場所も外来に転用するなどの工夫を行い、なんとか一息ついた。検査、放射線も、2つの施設で行っていたことを優先分野を決めて集約している。脳波室は、電子カルテのサーバー室になってしまった。骨密度測定もまだできない。物療は休止中である。通院リハビリテーションは、対象患者を絞らざるをえなくなった。事務系、医局は、近隣のスペースも借りて、配置を調整中である。健診センターと附属歯科は、同一法人内の他病院に移動した。訪問看護・介護も近隣のアパートに移転した。訪問リハビリテーションはもともと病院側にあったので、そのまま継続している。居宅介護支援事業所は病院側に集約した。


 残っている最大の課題は、通所事業である。今までは、通所リハビリテーション通所介護あわせて毎日50名あまりの利用者がいた。介護予防事業も行っていた。建物の配管が老朽化しているため、入浴サービスは提供できなかったが、その分、生活機能維持の取組みに力を入れ、地域の中で独特の存在感を持っていた。パワーリハビリテーションも行っていた。


 2006年介護報酬改定で、介護予防が強化されるという情報があった。少々高価だったが、宣伝の意味も含めて、マシーンを購入した。運動療法士も採用した。定期的な評価をリハビリテーションスタッフも協力して行った。10m歩行速度、TUG、MMSEなどの評価を確認しながら、実施していた。利用者の満足度も高かった。



 震災後、パワーリハビリテーションの機械が最後まで残っていた。壁を破壊し、機器を救出し、関連事業所に譲った。ガランとしたスペースを見ながら、随分と贅沢な空間の使い方をしていたなと感慨がわいてきた。
 5月になって、病院リハビリテーション室の一角を利用し、通所事業を再開した。しかし、如何せんスペースが全く足りず、今までと同じようなサービスを提供できない。自慢の通所事業をなんとか再建したいと思い、議論を重ねているところである。病院にこだわらず、地域に打って出るべきだ。どうせなら、津波の被害が甚大だった地域に作ってはどうかという意見もある。
 問題は採算性である。外来棟が資産価値を失った。取り壊し費用や修繕費の負担ものしかかる。さすがに大幅な赤字を覚悟して新規事業を行う訳にはいかない。公益法人制度改革の期限も迫っている。民間医療機関として、震災の傷跡が重くのしかかっている。