「もしドラ」を読んで

 明けましておめでとうございます。私はいつになく平穏無事な新年を過ごしていますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
 年末年始の時間を使って、本の乱読をしています。本日は、岩崎夏海氏の処女作、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」という本をご紹介します。非情に長い題名ですので、タイトルでは「もしドラ」と略させていただきました。


 著者の岩崎夏海氏は、http://d.hatena.ne.jp/aureliano/というブログをはてなで運営しており、ブックマークを多数集める人気ブロガーです。本書も、http://d.hatena.ne.jp/aureliano/20080711/1215741244というエントリーが元になっています。


 本書は、高校野球部を舞台に、ドラッカーの「マネジメント」論を分かりやすく解説したものです。同種の著作としては、「さおだけ屋はなぜ潰れないのか」で有名な山田真哉氏が連作として出している「女子大生会計士の事件簿」があります。
 両者の著作とも、登場人物は著しく類型化されています。より文学的な表現も可能だったはずですが、「マネジメント」や「会計」といったとっつきにくい食材を一般人用に加工するという本来の目的のため、あえてパターン化した人物造形を行ったと推測します。
 カバーイラストは「萌え系」のものが使用されています。あらすじはソフトタッチの野球マンガに似ています。主人公の女子マネージャーの名前が「みなみ」となっているところをみると、岩崎夏海氏はあだち充の大ファンではないかと考えてしまいます。そんな物語のあちこちに、ドラッカーの「マネジメント」論のエッセンスが散りばめられています。筋立てにかなりの違和感を感じますが、目的がドラッカーの紹介ですので、著者は全く気にせず突き進みます。監督、キャプテン、女子マネージャーたちが野球部の運営を改革するために、毎週集まってドラッカーの「マネジメント」を読むというシュールな設定も用意されています。


 医療はすべからくチームで行うものです。特に、多職種が共同作業を行うリハビリテーション医療においては、組織マネジメントを如何に行うかが問われます。昨年10月に行われた専門医会学術集会で、藤田保健衛生大学の才藤栄一先生は、ドラッカーリハビリテーション医にとって必読書であると講演していました。膨大な著作を前にして二の足を踏んでいた私にとって、「もしドラ」はドラッカーの敷居を低くしてくれました。本書で野球部の女子マネージャーも読んだという下記書籍を購入してみたいと思います。


マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則