階段昇降機の利用による物理的バリアの克服

 引き続き、物理的バリアの克服に関して。
 垂直方向の移動が困難な場合、汎用性の問題を考えるとエレベーターが第一選択となる。しかし、既存の建物のエレベーター設置には、関係する様々な法令の遵守、価格などの問題がある。
 次の選択肢として浮かび上がるのが、階段昇降器である。専用の椅子に乗り換えるタイプ(椅子)式と車椅子のまま昇降できる車椅子式がある。
 椅子式については、http://www.jaspa.gr.jp/kaidan/index.htmlが詳しい。階段昇降機 - Wikipediaには次のような記載がある。

いす式階段昇降機の価格


直線階段用   60万円〜75万円(工事費込み)
曲がり階段用  80万円〜120万円(1F〜2F、工事費込み、屋外仕様:直線、曲り共に屋内仕様の約1.3〜1.5倍)


 調べている最中に、http://www.okinawatimes.co.jp/news/2009-01-18-M_1-027-1_001.html?PSID=5d7ebeb8caa8ef0a9ea7a7aee5361201という記事が見つかった。リンク先にある笑顔の写真をぜひとも見ていただきたい。

離島の中学 階段に希望/伊平屋村 車いすの生徒に昇降機


 【伊平屋】「一番変わったのはわたしの気持ち」―。伊平屋村は伊平屋中学校(松元憲雄校長)に通う障害のある生徒のために「いす式階段昇降機」を設置した。重度身体障害者の仲地由衣さん(一年生)は「自分の好きなときに階段を利用できるようになった。もう友達に気兼ねしなくてもいい」と環境の変化を喜んでいる。財政状況はかなり厳しい同村だが、「必要なところに予算を回すのは行政の義務」としている。(具志大八郎)


 由衣さんは昇降機の乗り降りには、支援員仲田美香さん(27)の補助を必要とするが、操縦は自らレバーを操作する。


 由衣さんは出生時、心肺停止の仮死状態で生まれたため、重度の身体障害がある。就学期を迎え、車いすで地元の小学校に通うのは難しいと思われた。家族と離れて名護市の特別支援学校へ入れるかどうかの選択の時、父・功幸さん(45)は「島が受け入れてくれるのなら、伊平屋で育てたい」と切望。村は小学校にエレベーターを設置した。


 昨春の中学校進学を前に由衣さんは「島外の療育施設へ通うことを真剣に考えた」という。功幸さんは「せめて義務教育までは」と村教委に実情を訴えた。


 村教委は二〇〇七年十一月の障害児就学指導委員会で、中学校に昇降機の設置と支援員の配置を決めた。〇八年四月、由衣さんは同中学校に入学した。


 同年十一月に昇降機が設置されるまで、階段を利用する際、周囲の生徒四、五人に呼びかけ、車いすごと運んでもらっていた。


 生徒らの慣れない運び方に由衣さんは「間違って落ちたらどうしよう」と不安もあったが、それ以上に「友達に迷惑をかけているのではないか」という精神的な負担が重かったという。


 担任の具志彩乃教諭(27)は「由衣さんはすべてを素直に受け入れ表現する正直な子。昇降機が設置されてから笑顔が増えた」と喜ぶ。 「歌を歌う音楽の時間が一番好き」と話す由衣さん。幼なじみとともに笑顔で地元の中学校に通っている。


 西銘真助村長は「中卒後に地元を離れるという島特有の事情を抱え、せめて義務教育までは一緒に暮らしたい、と願う親の気持ちに応えるのが行政の義務だ」と話した。障害者自立を支援しているNPO法人沖縄県自立生活センターの長位鈴子副代表は、「財政難でも必死に取り組む村があることは、障害児とその家族にとって大きな励みになる」と高く評価した。


 財政難に悩む過疎地域の公立学校にとって、階段昇降機は決して安い買い物ではない。しかし、障害を持った子どもの就学問題解決に機械力が有効であることを、自治体関係者には理解して欲しい。
 なお、実際に階段昇降機が設置できるかどうかは、建築関係の専門家の判断が必要である。見積もり依頼時に階段昇降機の業者と相談することになる。