貧困と新型インフルエンザとの関係

 貧困と新型インフルエンザとの関係について、興味深い記事が載った。

サンパウロ=平山亜理】新型の豚インフルエンザが最初に発生したメキシコで、治療の最前線にいる国立呼吸器系疾患研究所付属病院(メキシコ市)の専門医、アンハラ・イゲラ感染症部長が3日、朝日新聞の電話インタビューに答え、発症後7日以内に治療を受けた人のほとんどは回復していると明らかにした。

http://www.asahi.com/international/update/0505/TKY200905040214.html


 インタビューの内容は次のとおり。なお、この記事はネット上にアップされていない。

 今からみれば新型インフルエンザにかかった最初の患者がきたのは3月24日だった。腎臓など複数の臓器がやられ手遅れの状態だった。発症してから、治療をしないまま15日間を過ぎた人の96%が死亡している。
 いずれも持病のある人たちではなかったので、ただの風邪と放っておいたのだろう。
 貧しい生活をしているから病院に行かず働き続けた人が多く、それで病状が悪化したと考えられる。
 発症後、7日以内にタミフルなどで治療すれば99%の人が治っている。インフルエンザが悪化し、併発した肺炎も初期の段階なら、炎症を抑えるステロイド剤を使うなどして治療可能だ。
 皆が警戒してわずかな症状でも来訪するようになったので、発症初期からこうした治療ができるようになり、死者は減った。多い時で来院者は1日約300人だったが、今は1日約70人まで減った。感染疑いが濃い人は1日5人ほど。感染はコントロールされていると思う。


 新型インフルエンザのパンデミック対策において貧困対策が重要であることが、メキシコと日本、共通する貧困と医師不足 - 新型インフルのパンデミック対策に求められるもの | すくらむというブログで強調されている。このブログでは、2009-04-30 - BUNTENのヘタレ日記の内容を次のように紹介している。

 そのエントリーでBUNTENさんは、新型インフルエンザによる死者が多数にのぼっているメキシコでは、医療機関の態勢も不十分な上に、「貧困層が、医療機関にかかれない状況にあることが推測される」とのマスコミ報道を紹介しながら、「貧富の差が大きく、既にかなりの数に上っていると思われる貧困層医療機関にかかれないのは、日本でも同じである。が、発熱外来などの医療費が免除されるという話は聞かない」、「ホームレスだったりする場合、加えて、パンデミックに関係した情報がうまく伝わらない可能性もあるだろう。しかも、貧乏人には食糧の備蓄などする余裕はない。買い物は日々(少なくとも数日おきに)行わなければならない。もしキャリアになってしまっても、出歩かざるを得ないのだ」と指摘しています。


 そして、BUNTENさんは「医療費の抑制策によって、医療機関はギリギリの経営を強いられている。言い換えれば、感染爆発が起きて患者数が激増しても対応できないのではないかと思われる。医療機関の体制を短期間で整えるのは無理なので、爆発の危険要因を減らしておくことが肝心」だとして、国に対し、次の2つの緊急施策を求めています。


(1)保険証取り上げ政策を少なくとも一時的に停止すること。低所得者への医療費補助を行うこと。
(2)ホームレス者を把握の上緊急に保護を行うこと。


 さらに、すくらむでは、相対貧困率、患者負担、国民健康保険証取り上げ、医師不足などの資料を追加した上で、次のような結論に達している。

 以上のことから、BUNTENさんが求める新型インフルエンザのパンデミック緊急対策とともに、根本的な対策として、貧困をなくすこと、医療費を無料にすること、医師・看護師を増やすことなどが必要だと思います。


 これまでの経過から、メキシコでの致死率が飛び抜けて高かったことに疑問が出されていた。WHOの情報でも、現時点では弱毒型ウィルスと判断されている。貧困による受診抑制が重症化の原因だとなれば、日本でも同様の事態が生じるおそれがある。