ホームレスの自立の支援等に関する基本方針と無料低額診療

 無料低額診療制度について調べていたところ、ホームレスの自立の支援等に関する基本方針 (平成二十年七月三十一日)(PDF)という資料に行き着いた。無料低額診療制度に関する部分を中心に紹介する。

第1 はじめに
 ホームレスの自立の支援等に関する施策の総合的な推進は、平成14年8月に成立したホームレスの自立の支援等に関する特別措置法(平成14年法律第105号。以下「法」という。)により開始された。

 こうした中、平成19年1月に実施された(以下「平成19年調査」という。)*1において、全国で18,564人のホームレスが確認され、平成15年調査時点から6,732人減少している一方、依然として、多数のホームレスが存在していることやホームレスの数が増加している地域があることが判明した。また、ホームレスの生活実態については、食事の確保や健康面での問題を抱える等、健康で文化的な生活を送ることができない状況が見られたほか、ホームレスの高齢化、野宿生活の長期化、就労自立する意欲が低い者の割合の増加等の傾向が見られた。

エ 健康状態
 現在の健康状態については、身体の不調を訴えている者が50.2%(平成15年調査においては47.4%)であり、このうち治療等を受けていない者が65.7%(平成15年調査においては68.4%)となっている。

第3 ホームレス対策の推進方策
1 基本的な考え方
 ホームレスとなるに至った要因としては、主として就労する意欲はあるが仕事がなく失業状態にあること、医療や福祉等の援護が必要なこと、社会生活から逃避していることの三つがあり、これらが複雑に重なりあってホームレス問題が発生していると考えられる。

 特に、ホームレス対策は、ホームレスが自らの意思で安定した生活を営めるように支援することが基本である。このためには、就業の機会が確保されることが最も重要であり、併せて、安定した居住の場所が確保されることが必要である。その他、保健及び医療の確保、生活に関する相談及び指導等の総合的な自立支援策を講ずる必要がある。

(3)保健及び医療の確保について
 ホームレスに対する保健及び医療の確保については、ホームレス個々のニーズに応じた健康相談、保健指導等による健康対策や結核検診等の医療対策を推進していくとともに、ホームレスの衛生状況を改善していく必要がある。

エ ホームレスに対する医療の確保を図るため、医師法(昭和23年法律第201号)第19条第1項又は歯科医師法(昭和23年法律第202号)第19条第1項に規定する医師又は歯科医師の診療に応ずる義務について改めて周知に努め、また、無料低額診療事業(社会福祉法(昭和26年法律第45号)第2条第3項第9号の無料低額診療事業をいう。以下同じ。)を行う施設の積極的な活用を図るとともに、病気等により急迫した状態にある者及び要保護者が医療機関に緊急搬送された場合については生活保護の適用を行う。

(イ)医療や福祉等の援助が必要な者については、保健所における巡回検診や福祉事務所における各種相談事業等を積極的に行うとともに、無料低額診療事業を行う施設の積極的な活用等対応の強化を図る。このうち、疾病、高齢等により自立能力に乏しい者に対しては、医療機関や社会福祉施設等への入所等既存の施策の中での対応を図る。

(ア)病気等により急迫した状態にある者及び要保護者が医療機関に緊急搬送された場合について、生活保護による適切な保護に努める。
 福祉事務所は、治療後、再び野宿生活に戻ることのないよう、関係機関と連携して、自立を総合的に支援する。

(12)その他、ホームレスの自立の支援等に関する基本的な事項について
 近年の福祉行政をめぐる様々な課題の背景として、核家族化の定着や地域住民の相互のつながりの希薄化が指摘されている。ホームレス問題についても、失業等に直面した場合に、こうした家族の扶養機能や地域の支援機能等の低下の中で、家族や地域のセーフティネットが十分に機能しなくなっているという背景があり、問題をホームレスに特化したものとして考えるだけでなく、社会全体の問題としてとらえる必要がある。


 家族や地域のセーフティネットという表現には、政府としての責任感を感じない。雇用、医療、福祉など行政が責任を持って対策を立てるべきセーフティネットが綻びているために、失業即ホームレスとなってしまう者がいることに目を背けている。「社会生活から逃避していること」を除けば、雇い止めによって発生した大量の住居喪失者とホームレスは大差がない。雇用情勢の悪化に伴う生活不安に対して、本基本方針に掲げられている様々な対策を国及び地方自治体が行うことが必要となっている。
 無料低額診療事業の利用が繰り返し出てきている。医療保険がないために健康状態が悪化し、悪循環に陥っている失業者もいることを考えると、本事業の積極的な拡大が求められていると考える。