「無料低額診療制度」の悪用

 雇用不安が広がり、セーフティネットの不備が露呈している。国民健康保険料が払えず、無保険となる者が増加している。そのような生活困窮者援助のために作られた「無料低額診療制度」を悪用している事例が明らかになった。

 大阪府済生会中津病院(大阪市北区)と同会野江病院(同市城東区)が07年度、生活保護受給者や低所得者向けの「無料低額診療制度」を悪用し、診療を受けた病院職員の家族や退職者を生活困窮者と偽り、延べ4万5千人分の医療費を減免していたことが分かった。国の省令で医療費は自由に減免することはできないが、両病院は「福利厚生」と称して数千万円規模にのぼる医療費を減免していた。大阪市は今年2月、社会福祉法に違反するとして、両病院に改善するよう指導した。厚生労働省は「極めて悪質」としている。(島脇健史)


(中略)


 同制度の指定病院の認可を受けるには全患者数のうち、生活保護受給者などの利用率が10%以上であることが条件。だが、両病院の利用率は実際には5.1%、7.5%だったにもかかわらず、10%余りと市に報告していた。


(中略)


 市によると、病院側は市の調査に対し、「労使交渉で決まった」「福利厚生の一環」などと説明したという。市では「ほかの患者や認可を受けた民間病院と比べて不公平。違反行為が長年行われていた可能性もある」(担当者)として、引き続き、病院側に詳細な報告を求めている。

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200903050122.html


 そもそも「恩賜財団」の名の示すとおり、済生会病院は臣民があまねく医療を受けることができるように明治天皇の命で作られた医療機関である。格差が広がる中で、本当に生活が大変な方は受診すらできなくなっている。済生会が「無料低額診療制度」を行っていることを積極的に宣伝していれば、利用者も増えたはずである。当院でも「無料低額診療制度」の申請を検討している。このような悪質な事例を理由として対象医療機関の制限が進められることがないことを祈る。