介護老人福祉施設における成果主義、「日常生活継続支援加算」

 介護老人福祉施設関係者から、次のような話を聞いた。
 これまで、「重度化対応加算」として、1日につき10単位を所定点数に加算していた。しかし、今回の改定で「日常生活継続支援加算」に名称が変更された上、要件が変わり、算定が困難となった。施設としては大幅な減収となり経営的にダメージが大きい。
 調べてみると、従前の要件は次のとおりだった。

 特養の重度化対応加算の要件は常勤の看護師を1名以上配置、24時間オンコール体制など。

http://info.medicalplanet.co.jp/wmn/news/080408.htm


 今回の改定内容は以下のとおりである。なお、平成21年度介護報酬改定に伴う関係省令の一部改正等に関する意見募集について内にある、「改正概要」P22〜23と、「別紙(改正新旧等)」別紙1−3 P106〜123に介護老人福祉施設についての改定内容が記されている。

5 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして都道府県知事に届け出た指定介護老人福祉施設については、日常生活継続支援加算として、1日につき22単位を所定点数に加算する。

* 別に厚生労働大臣が定める施設基準の内容は以下のとおり。

  • イ 入所者の総数のうち、要介護状態区分が要介護4若しくは要介護5の占める割合が100分の65以上又は日常生活に支障をきたすおそれのある症状若しくは行動が認められることから介護を必要とする認知症(法第8条第16項に規定する認知症をいう。)の入所者の占める割合が100分の60以上であること。
  • ロ 介護福祉士を常勤換算方法で、入所者の数が6又はその端数を増すごとに1名以上配置していること。


 厚生労働省は、介護従事者の待遇改善のため介護報酬を引き上げたと宣伝している。しかし、そのほとんどが加算要件である。中でも、「重度化対応加算」→「日常生活継続支援加算」への変更の影響は甚大である。実質的に減収となった施設も少なくないと予想する。
 介護老人福祉施設成果主義が導入されたことは重大な問題である。「日常生活継続支援加算」の要件は、回復期リハビリテーション病棟入院料Iの要件「重症患者率15%以上」と発想が同じである。介護老人福祉施設の経営を考えると、要介護1〜3の方は入所を制限せざるをえない。要介護度が悪化した方が経営的にメリットがある。できれば、要介護3以下の入所者にも要介護4以上になってもらいたい。介護老人福祉施設におけるモラルハザードが懸念される。
 今回、「看取り介護加算」も大幅に引き上げられた。介護福祉施設とは、重度要介護者を集め終末期を迎えさせる場所であると厚生労働省は規定した。介護従事者の士気をくじく改定が実施されようとしている。