専門医制度、精神科はこれから確立

 NHKスペシャルを見た。前半部分は、日本の精神科医療批判のオンパレードだった。その中で、精神科専門医制度が未確立だということが気になった。一般社団法人 日本専門医機構をみると、平成20年3月現在で、日本精神神経学会が認定する精神科専門医は0名となっている。
 日本精神神経学会のホームページをみると、次のように記載されている。

 1)専門医制度の定着
 まず専門医制度をしっかり定着させます。過渡的措置に引き続き研修終了者の筆記試験、面接試験を施行し、生涯教育のための地方組織の充実、学会総会の充実を図り、会員の皆様と一緒になり、われわれ精神科医の態度・技術・知識を向上させ、国民の信頼を獲得します。

http://www.jspn.or.jp/03jspn/jspn01.html


 調べてみると、平成21年度に一斉に認定することになっているようだ。

 ここ数年来、ほとんどの精神科医の所属する学会である日本精神神経学会で、認定精神科専門医という制度が進められてます。進められていますというのは、現在は新制度への移行時期にあたり、口答試験の合格者であっても正式認定はまだ(平成21年ごろ一斉認定証発行)で現在は精神科専門医試験合格者ということになります。でも認定更新制度に使用するために専門医のカード形合格証が発行されています。私もその専門医の指導医の一人ですが、正式認定までは肩書きとしては使用できません。

http://profile.allabout.co.jp/ask/column_detail.php/20365


 専門家集団が社会の中で信頼されるためには、質の担保が必要である。日本では、自由標榜制の問題もあり、標榜科と専門性が一致せず、患者が医療機関を選ぶ妨げとなっている。日本専門医制評価・認定機構が中心となって、専門医制度整備が進められてきている。しかし、専門医だからと言って必ずしも安心できる訳ではない。難易度も学会で異なる。医療事故報道の中で、専門医なのに手術の技量が低かった、ということが問題にされたこともある。
 他の基本的診療科と比べ、精神科専門医制度発足が遅れた理由は、私には分からない。うつ病だけでなく、統合失調症解離性障害認知症など精神科疾患の対象は多く、需要は今後も増大する。職場のメンタルヘルスも問題となっている。信頼できる精神科診療の確立を望みたい。


 番組の後半では、診療報酬問題が取り上げられていた。英国では、認知行動療法うつ病治療の柱の一つとして、予算もつけ推進している。一方、日本では、同様の治療を行うことが実質的に不可能であり、短時間で薬のみを処方するスタイルをとらざるをえなくなっている。ただし、前半部分と比べ、トーンがかなり弱めだった。司会も、精神科医批判は歯に衣着せぬやり方で行う一方、政府批判はオブラートに包んでいた。これが、政府に財政や人事権を握られているNHKの限界かもしれない。