「ミニカップ入りゼリー」の危険性

 子どもの窒息事故、菓子類、特に飴玉に注意というエントリーで、厚生労働省食品による窒息事故に関する研究結果等について研究結果 全体版(PDF:2,005KB))の中にある「窒息事故の現状把握調査」について紹介した。ここで問題となっているのは、「ミニカップ入りこんにゃくゼリー」ではない。「カップ入りゼリー」というカテゴリーで調査が行われていることに注目しなければならない。


 捨者成仁日記、[思ったこと]業界の老舗マンナンライフの見解(2007年6月18日)に、マンナンライフの見解が紹介されている。なお、下記見解は既にホームページからは削除されている。

以前こんにゃくゼリーブームの際、同様の事故が発生した経緯もあり、 弊社では「なぜ同じこんにゃく製品である板こんにゃくには事故がないか」を当時徹底的に検証いたしました。


その結果、事故の原因は硬さや大きさの問題ではなく「吸い込まなければ食べられない容器」が問題であり、 吸い込む事により事故が起こると弊社では判断しました。


この問題を改善するため、「ハート型容器の底をつまみ、押し出せば吸い込まずに食べられる」 安全性を追求した独自の容器を開発し対応してまいりました。


しかし、昨今のこんにゃくゼリーブーム再来により、過去の経緯も忘れられ、市場には何の改良もしていない、 当時のままの容器の商品が見受けられるのは残念なことです。


http://www.mannanlife.co.jp/


 既に、スーパーからは「ミニカップ入りこんにゃくゼリー」は撤去されている。一方、原材料にこんにゃくが含まれていない「ミニカップ入りゼリー」は販売されている。どのメーカーの製品を見ても、裏面に目立たないが、「吸い込むと危険です」という内容の注意書きがある。


 「ミニカップ入りゼリー」の大きさは子供にとって手頃である。皿の上に押し出して食べることなど面倒くさがり行わない。アフォーダンスの概念でいうと、「子供が手に取り、吸い込むようにして食べる」ことを思わず行ってしまう形態となっている。


 国民生活センターミニカップタイプのこんにゃく入りゼリーによる事故防止のために −消費者への警告と行政・業界への要望−の12-13ページに「日本及び海外での規制に関する情報」がある。韓国での規制を引用をする。

 韓国では、2001年10月に内外で死亡事故が起こったことに鑑み、KFDA(韓国食品医薬品安全庁)はミニカップに入ったこんにゃくゼリーの製造・輸入・流通・販売などを禁止している。しかし2004年に再び死亡事故が起こったため、これだけでは危害を根本的に取り除くことができないと判断し、2004年10月に、直径4.5cm以下の全てのミニカップゼリーの製造・輸入・流通・販売を暫定的に禁止した。ただし、2005年4月には、こんにゃくゼリーを除いた直径4.5cm以下のゼリーは、一定の物理的な試験をクリアし注意表示を徹底するなどの基準を設け、暫定措置を解除した。
 しかし、2007年5月にミニカップに入ったゼリーによる子どもの窒息事故が起こったことから、再びこれ等の製品に対する監視が厳しくなり、全てのゼリー製品について大きさによるつぶれやすさの規格を設定し、暫定的に管理することにした。今後はこんにゃくに加えて寒天などの16種のゲル化剤の使用の規制、大きさとつぶれやすさの規制の強化、消費者向け警告表示の拡大、輸入検査の強化等が検討されている。


 韓国では、物性(大きさ、つぶれやすさ)と原材料(こんにゃく、寒天などゲル化剤)だけではなく、形状(ミニカップ)にも着目して、細かく規制している。ミニカップタイプのこんにゃくゼリーは、弾性が強く崩れにくい食品がミニカップという形状で提供されている、ということが問題視されている。
 残念ながら、日本では、ミニカップタイプという形状に関する議論はほとんどない。マンナンライフの取組みは先進的ではある。しかし、ミニカップタイプという容器を捨て去ってはいない。こんにゃく入りゼリー業界の生き残り対策として、「ミニカップタイプ」製品の形状変更は避けて通れないのではないかと推測する。