ミニカップゼリーの窒息事故頻度が飴類と同程度

 こんにゃくゼリーの窒息リスク「あめ類と同程度」という報道は明らかに読者をミスリードしている。
 元になった資料を紹介する。第6回食品による窒息事故に関するワーキンググループ | 食品安全委員会 - 食の安全、を科学する内にある、資料1−1:評価書 食品による窒息事故(案)(PDF:6,353KB)(一括表示)より。


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表31(ケース2): ミニカップゼリーに代りにこんにゃく入りミニカップゼリーを用いた。他の食品の窒息事故頻度は同じ値。

  • こんにゃく入りミニカップゼリー: 一口あたり窒息事故頻度(×10-8) 0.16〜0.33)


 ケース1の推定については、救命救急症例371例に対し「ミニカップゼリー」による窒息事故症例が3例と絶対数が少ないものの、その構成比を窒息事故症例4,389例(0歳を除く。)にあてはめたこと、「ミニカップゼリー」の摂取量を国民栄養調査の半分と見積もったこと等、相応の誤差を伴う推定となっている。また、ケース2の推定については、内閣府国民生活局により把握された、こんにゃく入りミニカップゼリーによる窒息事故死亡症例の実数を基にしており、これらの症例が、窒息事故の発生から比較的短期間に死亡した症例に限定されていること等から、人口動態統計で把握される窒息事故死亡症例数よりも過小な推定を行っている可能性が考えられる。
 WGとしては、これら2つのケースに分けた算出結果から総合的に判断すると、こんにゃく入りのものを含むミニカップゼリーの一口あたり窒息事故頻度は、おそらく飴類と同程度ではないかと推測する。一方、こんにゃく入りミニカップゼリーによる窒息事故が、高齢者や小児の摂食禁止について表示を行うこととされて以降に減少しているとすれば、飴類よりも窒息事故頻度は小さくなっている可能性があると考える。しかしながら、当該表示に係る措置が講じられて以降に把握されている窒息事故症例数はあまりにも少なく、現時点において、こんにゃく入りゼリーによる窒息事故のリスクを科学的に評価することは困難といわざるを得ない。


 食品安全委員会の評価書が記載しているのは、こんにゃく入りを含むミニカップゼリー全体の窒息事故が飴類と同程度ということである。ミニカップゼリー=こんにゃく入りゼリーではない。
 各論で、ミニカップゼリー次のように記載されている。

 WGは、こんにゃく入りミニカップゼリーによる窒息事故と、上記の摂食者等の要因のほか、当該食品固有の要因との関係を次のように分析した。
1)こんにゃく入りミニカップゼリーは、一般のゼリーよりも硬いものが多く、冷やすとさらに硬さを増す。噛み切りにくく、ゼリー片が十分破砕されないまま咽頭に送り込まれ、中咽頭喉頭付近に貯留することによって気道を閉塞してしまう。
2)こんにゃく入りミニカップゼリーの形態から、上向き食べ、吸い込み食べが誘発され、喉頭閉鎖が不十分なままゼリー片を吸い込んで、気道を詰まらせてしまう。
3)破砕不十分なゼリー片を気道に詰まらせてしまうと、気道にぴったりと嵌るような大きさ・形状であり、弾力性があり、水分の少ない部位に介在すると剥がれにくく壊れにくいため、気道閉塞が解除されにくい。


 といったこと等により、窒息事故が発生しやすくなっているものと推定した。また、こんにゃく入りのもの以外のミニカップゼリーであっても、こんにゃく入りゼリーと同様の方法で摂食される可能性があり、同様の大きさであって、同様の物理的又は物理化学的特性が付与されたものについては、窒息事故の発生しやすさは、こんにゃく入りのものに準じるものであると考える。


 こんにゃくゼリーだけを悪者にしても窒息事故は減少しない。ミニカップゼリーという形態そのものが問題であるという認識が必要である。