救急医療とリハビリテーション医療との連携

 CBニュース、「寝たきりにさせない救急医療へ」長崎の救急調査システムより、救急医療とリハビリテーションに関係する部分を引用する。

「寝たきりにさせない救急医療へ」長崎の救急調査システム


 日本臨床救急医学会の地域救急医療体制検討委員会は9月5日、長崎市などで行われている救急隊が疑った傷病名と医療側の診断とをマッチングさせることで、地域の医療提供体制の向上につなげている「長崎救急実態調査システム」について、長崎リハビリテーション病院の栗原正紀理事長の発表を聞いた。栗原氏は「寝たきりにさせない救急医療体制にしていくため、『地域脳卒中センター構想』などを考えている。今後はリハビリテーション体制を確立し、救急医療と『協業』していくことが課題」と述べた。救急搬送の検証が、医療提供体制の構築につながっている国内でも珍しい例だ。


(中略)


 栗原氏は、長崎地域では1997年からこうした仕組みを採用しており、データを活用した「長崎救急実態調査システム」を実施しているとした。
 この調査によると、長崎地域(人口55万人)の救急搬送は98年の1万2841件から2002年には1万6206件に増加。栗原氏は「内因性疾患の増加が原因。特に70歳以上の高齢者の搬送が増えている」と説明した。
 また、1998−2002年の救急搬送で上位を占めた傷病は、脳卒中、肺炎、大腿骨頚部骨折の順だった。脳卒中については、救急搬送された患者の6割を脳梗塞が占めており、脳内出血が3割弱、クモ膜下出血が1割強だった。栗原氏は「肺炎が多かったのは意外だった。また、これらは死亡率が低く、寝たきりになりやすいので、集中的なリハビリが必要。寝たきりにさせない救急体制にしなければならない」と述べた。


 このほか、脳神経外科医でもある栗原氏は、「脳卒中の救急患者は自分が診ていると思っていたが、内科医が多くを診ていたことが分かった。内科医への教育も大事なため、大学の教官にも結果を伝えていかなければ」とも述べた。


 栗原氏は、調査結果を基に、「地域脳卒中センター構想」を考えており、▽救急システムの整備▽地域住民の啓発▽かかりつけ医や救急隊に対する教育▽脳卒中ケアユニットや専門スタッフを備えた脳卒中センターの整備▽リハビリテーションシステムの構築−などが地域の脳卒中診療の課題にあるとした。その上で、脳卒中患者を、「地域脳卒中センター」「高次脳卒中センター」「脳卒中支援病院」などから成る急性期の体制と、リハビリテーション体制や在宅医療サービスなどとのチーム医療で支えるとした。同構想の内容は、3月に策定された「長崎県保健医療計画」に盛り込まれている。
 また、「回復期リハビリテーションがしっかりしなければ、救急医療体制がつぶれてしまう」と指摘。救急医療とリハビリテーション医療を連携させ、各職種が「協業」して医療提供していくことが不可欠だとした。


■行政は地域ネットワークに支援を
 栗原氏はキャリアブレインに対し、「救急医療とリハビリテーション医療は表裏一体で、チーム医療を提供するにはコメディカルの役割も重要。行政も交えてこうしたことを議論する場が必要だ。行政はこれまでハードに対する支援をしてきたが、こうした地域医療のネットワークなどのソフトに対する支援をするべき。これによって人材が育っていくことになる」と述べた。長崎地域では年に1回、約200人の医療従事者が集まる研修会で、調査結果を基に脳卒中のデータなどについて情報交換や勉強をしていると語り、最近はPTなどのリハビリスタッフも増えてきたとした。


 以前、栗原先生の講演を聴いたことがある。救急医療とリハビリテーションとの連携、坂が多いという長崎の特徴から生まれた長崎斜面研究会などについてお話をしていただいた。
 救急の中心が内因性疾患、高齢者に移行しつつある。急性期病院と回復期リハビリテーション病棟との連携が重要である。回復期リハビリテーション病棟は、人口10万人あたり50床、全国で約6万床を目標としている。全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会のホームページをみると、現在、48,012床(2008年6月現在)が届けられている。しかし、高齢化の進行を考えると、人口10万人あたり50床という目標は最低ラインではないかと思える。
 ただし、救急患者全てが積極的なリハビリテーションにのる訳ではない。長期療養が可能な病棟も必要である。急性期・回復期・維持期のシステム整備をしていくことが求められている。