「名ばかり管理職」指導強化とは、名ばかり
「名ばかり管理職」指導強化において紹介した厚労省の通達に対し、労働者側から強い批判が出された。労働相談センター・スタッフ日記、厚生労働省「名ばかり管理職」9・9通達についてより。
2008年9月10日
全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合
執行委員長 岸本 町雄
同コナカ支部
執行委員長 渡辺 輝
厚生労働省は9月9日、「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」と題する通達を全国の労働局あてに出しました。
私たちは昨年来、紳士服のコナカで労働組合を結成し、店長に対する「名ばかり管理職」扱いの是正を経営陣に求めてきました。厚労省に対しても企業の違法行為に厳しく対応するよう要請してきました。ところが、今回の通達は私たちの思いとは大きくかけ離れたものと言わざるをえません。「指導強化」とは名ばかりで、これまでの法的要件を緩和する役割を果たすものとして批判します。
コナカの「名ばかり管理職」をめぐっては、昨年6月には横浜西労働基準監督署が私たちの申告に基づき会社に是正指導を出し、今年8月には横浜地裁が労働審判で組合員の現役店長2人は「管理監督者には該当しない」との判断を下しました。出退勤の自由も職務権限もふさわしい待遇もないコナカの店長にとっては当然の結果です。
しかし、今回の通達は「管理監督者性を否定する重要な要素」として「アルバイト・パート等の採用(人選のみを行う場合も含む。)について責任と権限がない」「部下の人事考課について職務内容に含まれず、実質的にも関与せず」「遅刻、早退等により減給の制裁、人事考課での負の評価など不利益な取扱いがされる」「時間単価換算した場合にアルバイト・パート等の賃金額に満たない」「時間単価換算した場合に最低賃金額に満たない」ーーなどをあげています。管理監督者の判断は、従来の判例や行政解釈では、出退勤の自由があるかどうか、経営者と一体的な立場で仕事をしているかどうか、一般社員と比較してふさわしい待遇(賃金)が与えられているかどうか、で判断してきました。
通達では「これらの否定要素が認められない場合であっても、直ちに管理監督者性が肯定されることになるものではない」としながらも、判断要素さえクリアーしていれば管理監督者だと言い張る経営者が続出するのではないでしょうか。そうした意味で通達は事実上、法的要件のハードルを下げる内容です。
私たちは、コナカ経営陣とは「名ばかり管理職」について労働審判から移行した本裁判を今後たたかっていきます。この裁判に勝利することに全力をあげるとともに、厚労省には今回の通達を撤回し、「名ばかり管理職」を一掃するための実効性ある通達をあらためて出すよう強く求めます。
以 上
厚労省の通達原文は、多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について ー具体的な判断要素を整理した通達を発出ー内にある。
「名ばかり管理職」指導強化とは、名ばかりだった。日雇い派遣の規制問題も福田首相の退陣表明とともに、法案成立が怪しくなっている。厚労省を評価したのは、早とちりだった。