義手のバイオリニスト

 「24時間テレビ」で、筋電義手をつけてバイオリンを引く少女が紹介された。中日スポーツ真央ちゃん、義手の少女と”共演” 中京テレビ「24時間テレビ」より。

真央ちゃん、義手の少女と”共演” 中京テレビ「24時間テレビ」
2008年8月29日 紙面から


 フィギュアスケート浅田真央選手(17)が、先天性の四肢障害がある千葉県の小学生、大久保美来ちゃん(8)が弾くバイオリンをバックに演技をするスペシャル企画が、日本テレビ系=中京テレビの「24時間テレビ」(30日午後8時45分ごろ)で放送される。
 7月末に愛知県長久手町で行われたアイスショー「THE ICE」(モリコロパーク)の昼夜公演の合間に収録された。
 美来ちゃんは、生まれた時から右ひじの先がない障害がありながら、3歳の時に筋電義手と出合い、バイオリンを始めた。初めての大舞台に緊張を隠せない美来ちゃんだったが、番組のチャリティーパーソナリティーを務める仲間由紀恵(28)に見守られながら、演奏を始めた。
 真央選手は、美来ちゃんが弾く「オーバー・ザ・レインボー」に乗って、華麗なスケートを披露。「滑る前は緊張したけど、始まったら、美来ちゃんが一生懸命、弾いていたので、その音に後押しされました」と、貴重な体験を振り返った。
 夢をかなえた美来ちゃんは「楽しかった」と、満足そうな笑顔を見せていた。


 正直に告白する。日本リハビリテーション医学会専門医だが、筋電義手を処方したことがない。私が不勉強という意味ではない。日本で義手を積極的に処方している医療機関はごく限られている。義手が重い、非切断側上肢で代償できるなどの理由があるが、最大の問題は価格と支給制度である。
 各国の筋電義手の支援,価格,支給数などの比較をみると、筋電義手の価格は、60〜100万円程度である。支給制度も充実しているため、ヨーロッパでは、義手といえば筋電義手を指す状況まで普及している。一方、日本では下記のような状況となっている。

日本に関する内容
筋電義手はほとんど普及されていない.
原因:公的資金による給付が認められていない
身体障害者福祉法では筋電義手の交付は基準外交付という形でしか認められず,労災による交付も,両側上肢切断の片側のみ交付が認められているという状況.


日本のこの考え方を変えて欲しいです.


 筋電義手の処方に関しては、国立リハビリテーションセンター、幻肢と筋電義手の操作方法についてが詳しい。


 大久保美来ちゃんの演奏は素晴らしかった。8歳であれだけの演奏ができるのだったら、大きくなったら素晴らしいバイオリニストになるだろう。両手を協調して使うことにより、できることが増え自信がつく。バイオリンをプレゼントしたおばあちゃんや暖かく成長を見守っているご両親の姿に心打たれる。


 自戒を込めて述べる。筋電義手普及のため、支給制度の改善に向けて専門家がもっと声を上げるべきである。また、日本の工学技術からしても、義肢の分野で世界を牽引できる潜在的能力がある。医療産業を育成するという視点が国策となっていないことが残念である。