アンケート結果からみる人材派遣業界の危機感

 人材派遣の業界誌、「月刊人材ビジネス」、日雇い派遣禁止 6割が「部分的にやむなし」より。

日雇い派遣禁止 6割が「部分的にやむなし」
2007年度人材ビジネス業績アンケート調査
2008年7月8日


 人材ビジネス業界唯一の専門誌「月刊人材ビジネス」を発行するオピニオン社はこのほど、全国の人材ビジネス企業を対象に、2007年度業績と人材派遣の規制問題に関するアンケート調査を実施しました。本調査の詳細については、「月刊人材ビジネス」7月号(7月1日発売)で掲載の予定です。


【規制強化及び、派遣料金・派遣スタッフの募集コストについて】
 「日雇い派遣の禁止」問題について聞いたところ、「部分的にやむをえない」が最も多く63%、「やむをえない」が21%、「絶対反対」が16%となりました。
 「もっぱら派遣の禁止」についても、「部分的にやむをえない」が最も多く48%、「やむをえない」が28%、「絶対反対」が24%でした。 しかし、「登録型派遣の禁止」については、「絶対反対」が82%と大多数を占め、「部分的にやむをえない」は15%、「やむをえない」は3%にとどまりました。
登録型派遣の禁止には「絶対反対」が多かったものの、コンプライアンスが問題となった日雇い派遣やもっぱら派遣については、厳しい世論を反映して「部分的な規制も仕方がない」との考えが多数派を占める結果となりました(グラフ1参照)。
 自由回答では、「規制よりも、禁止業務への派遣やもっぱら派遣を行っている会社の取り締まりが先」「登録型派遣を禁止したら、多数の就業機会喪失につながる」「世間一般に、派遣事業が正しく理解されていない。業界を挙げてアピールすべきだ」などの声が寄せられました。


 また、アンケートでは、1年前と比較した派遣スタッフの募集コスト(募集、登録、成約までに派遣スタッフ1人にかかった単価)や派遣請求料金の推移についても聞きました(グラフ2、3参照)。
募集コストでは「増加した」が56%、「横ばい」が29%、「減少した」は15%。派遣請求料金では「増加した」が39%、「横ばい」が59%、「減少した」は2%となりました。
 昨年の調査結果と比べると、募集コストが増加した会社は4・3ポイント増。派遣請求料金が「横ばい」と答えた会社は14・2ポイントの大幅増となり、派遣料金はそのままで、コストだけが増えていく傾向が浮かび上がりました。人手不足が募集コストの増加に拍車をかけ、派遣会社の負担は今後ますます増えると予想されます。


【業績について】
 2007年度は人手不足の本格化に伴い、事務系派遣会社では売上高の伸びの鈍化が目立ちました。08年度は活発なM&Aの成果が業績に反映される見通しで、急成長を続けてきた業界は成熟期を迎え、整理淘汰の波がさらに高まると予想されます。
 トップは昨年に続きグッドウィル・グループ(GWG)の5800億円で、2位のスタッフサービス・ホールディングス(SS)を大きく引き離しました。
 しかし07年12月、リクルートグループがSSを買収した結果、傘下のリクルートスタッフィングとの合計売上高はGWGを上回る5812億円となり、人材ビジネス業界の巨大トップに躍り出ました。
 また、今年10月に経営統合するテンプスタッフとピープルスタッフの合計売上高は2679億円となり、パソナ(5月期見通し)の2381億円を抜いて事務系第2位となりました。


【調査概要】
質問内容 全12項目。07年度売上高、営業利益率、派遣料金の推移、規制強化への考えなどを聞いた。
実施期間 2008年5月7日〜5月23日。
調査対象 全国の人材ビジネス企業400社。
有効回答数 136社(有効回答率34%)


 日雇い派遣全面禁止に向け立法化が進んでいる中、人材派遣会社へのアンケート調査が行われた。結果は予想どおりである。「日雇い派遣の禁止」、「もっぱら派遣の禁止」は、8割前後がやむをえないとの回答になった。一方、「登録型派遣の禁止」については、「絶対反対」が82%となった。確かに登録型派遣まで禁止となると、業界は壊滅的打撃を受ける。
 「規制よりも、禁止業務への派遣やもっぱら派遣を行っている会社の取り締まりが先」という自由回答があったことは興味深い。大企業が子会社の派遣会社を経由して間接雇用するもっぱら派遣は、同業者にとっても違法性が際立つ。コンプライアンスを遵守しなければ、生き残ることはできないという認識が広がってきている。世間の目は厳しく、今後規制強化の流れは変わらないだろう。
 人材派遣業界の経営は、コスト上昇と売り上げ鈍化により、先行きが不透明となっている。濡れ手で粟と我が世の春を謳歌したのも今は昔である。生き残りをかけた合従連衡が進む。