外来管理加算5分ルール

 厚生労働省より、平成20年度診療報酬改定に係る通知等についてという資料が提示された。今回は、外来管理加算5分ルールについて紹介する。


 診療報酬の算定方法の制定等に伴う実施上の留意事項について(保医発第03005001号)の別添1全体版PDFファイルページ8-9ページに外来管理加算に関する記述がある。5分ルールに関係する部分を中心に引用する。

(4)外来管理加算
ア 外来管理加算は、処置、リハビリテーション等を行わずに計画的な医学管理を行った場合に算定できるものである。


イ 外来管理加算を算定するに当たっては、医師は丁寧な問診と詳細な身体診察(視診、聴診、打診及び触診等)を行い、それらの結果を踏まえて、患者に対して症状の再確認を行いつつ、病状や療養上の注意点等を懇切丁寧に説明するとともに、患者の療養上の疑問や不安を解消するため次の取組を行う。
[提供される診察内容の事例]
1 問診し、患者の訴えを総括する。
 「今日伺ったお話では、『前回処方した薬を飲んで、熱は下がったけれど、咳が続き、痰の切れが悪い。』ということですね。」
2 身体診察によって得られた所見及びその所見に基づく医学的判断の説明を行う。
 「診察した結果、顎のリンパ節やのどの腫れは良くなっていますし、胸の音も問題ありません。前回に比べて、ずいぶん良くなっていますね。」
3 これまでの治療経過を踏まえた、療養上の注意等の説明・指導を行う。
 「先日の発熱と咳や痰は、ウイルスによる風邪の症状だと考えられますが、◯◯さんはタバコを吸っているために、のどの粘膜が過敏で、ちょっとした刺激で咳が出やすく、痰がなかなか切れなくなっているようです。症状が落ち着くまで、しばらくの間はタバコを控えて、部屋を十分に加湿し、外出するときにはマスクをした方が良いですよ。」
4 患者の潜在的な疑問や不安等を汲み取る取組を行う。
 「他に分からないことや、気になること、ご心配なことはありませんか。」


ウ イに規定する診察に要する時間として、医師が実際に概ね5分を超えて直接診察を行っている場合に算定できる。この場合において、診察を行っている時間とは、患者が診察室に入室した時点を診察開始時間、退室した時点を診察終了時間とし、その間一貫して医師が患者に対して問診、身体診察、療養上の指導を行っている時間に限る。また、患者からの聴取事項や診察所見の要点を診療録に記載する。併せて、外来管理加算の時間要件に該当する旨の記載をする。
(以下 略)


 実に懇切丁寧に、診察の仕方が指導されている。レセプト審査強化のおそれというエントリーで、算定日数上限超え患者に対し、詳細なレセプトコメントを記載させたことを紹介した。医師の精神的負担を増大させるという方法でリハビリテーション打ち切りを迫るという手法に味を占めた厚労省は、外来管理加算にも的を絞ってきた。


 m3com「医療維新」2008年2月28日の記事より、外来管理加算に関する厚労省保険局医療課長・原徳壽氏の発言を引用する。インタビュアーは橋本佳子(m3.com編集長)である。

 −−外来管理加算に「丁寧な診察」の要件を入れた狙いは。


  外来診察には、基本的な診察と「丁寧な診察」があると思います。基本診察は再診料で評価します。一方、「丁寧な診察」は外来管理加算で、別途評価するという考え方です。「技術料」に相当する本当の意味での診察の評価は、外来管理加算の形で取り出すことができたことになります。


  「外来管理加算は技術料」という考えなので、病院と診療所の点数は同一です。一般と老人の点数もそろえました。一方、再診料にはイニシャルコストも入るわけですから、病院と診療所は異なります。


 −−つまり、外来管理加算の考え方が変わったと。


  はい。前述のように、診察の中から、「丁寧な診察」部分を取り出したわけです。その意義は大きいと思います。したがって、処置などを行った場合でも「丁寧な診察」を行えば、外来管理加算が算定できるという見方も成り立ちます。ただ、まずは今までの体系(外来管理加算と処置などは併算定できず)はあまり大きく崩さないという考えで改定しました。次のステップとして、処置を実施した場合などでも外来管理加算が算定できるようにすれば、本当の意味で「技術料」として独立した点数となるでしょう。


 −−従来、外来管理加算の意味が曖昧だったというわけですか。


  はい。もともとは、「内科再診料」という考え方から始まった点数です。内科では、検査や処置などが少ない一方、「丁寧な診察」を行うことから、それを評価するために設けた点数ですが、今、実態としては、「丁寧な診察」が実施されているとは言えません。


 −−「5分を診療時間の目安とする」という要件を問題視する声が多いのですが、通知に要件として明記するのでしょうか。


  そこは、なかなか難しいところですが、やはり「5分」ですね。なぜ「5分」にこだわっているか。一つには、財源の問題があります。改定時には、外来管理加算がどのくらい算定されるかを計算していますから、「5分」は崩せません


 −−「5分」の根拠は何ですか。


  丁寧な診察をして、患者さんが納得する診療をしてもらいたいということです。「3時間待ちで3分診療」がよく問題視されています。だから「3分診療」ではだめなのです。


 −−レセプトなどに診察時間を記載するのでしょうか。


  外来管理加算を算定しているということは、「5分の診察」が前提なので、レセプトに書く必要はありません。しかし、どんな診察を行ったかについては、カルテに記載してください。

 
 −−医師による診察の前に、看護師さんなどが問診する場合もありますが、診察時間に含めていいのでしょうか。


  いえ、あくまで医師の診察時間です。ただ、点数は患者1人当たり52点、1時間で12人診察した場合、6000円強です。点数的に十分かどうかは議論があるところですが、「医師の時間を占有する」、その対価という考え方になります。


  もちろん、「薬のみ」の診察では算定できません。それとは分けましょうという考え方です。外来管理加算については、名称を変更する話もありましたが、今回はやめました。ただ、いずれは再診料への加算ではなく技術料として独立させて、名称を変えてもいいでしょう。


 原徳壽氏は実に正直である。理由は財源問題であるとはっきり述べている。「丁寧な診察」を広めたいわけではない。公的医療費を抑制したいので、「丁寧な診察」ができないところは外来管理加算算定ができないようにする。そのためには、診療報酬に関する通知を使って、具体的な診察方法まで指導する。事務的作業量を増やすことで医師に精神的に圧力をかける。
 疾患別リハビリテーション料レセプトコメント強化と同じ手段がここでも使用されている。


 CBニュース、”5分ルール”で「医療崩壊」加速!?(2008年2月21日)より、青森保険医協会調査を引用する。

2千万円超の減収予想も


 このような問題点は、診療所(開業医)に加えて200床以下の公立病院に与える影響が大きいとして、青森県保険医協会が緊急アンケートを実施。県内の200床以下の公的病院18病院のうち11病院が回答した。
 5分ルールについては、11病院のすべてが「反対」と回答。5病院が時間要件の導入後も外来管理加算を算定できる割合は10%未満に過ぎないと答えた。医療崩壊に関しては、「加速する」が7病院に上り、「加速しない」はゼロだった(残りの4病院は「分からない」と回答)。
 また、8病院が1千万円を超える減収を予想し、年間2千万円を超えると答えた病院もあった。
 さらに、現時点では外来管理加算の算定可能割合を10%以上と見込んでいるものの、その割合が10%程度に止まった場合には、減収予測が年間約4千万円になる病院もある。


 このほか、算定人数の上限(1日当たり・1週間当たり)が設けられることになり、毎日の算定患者の氏名・算定開始・終了時刻を記入した記録簿(日報)なども必要になると考えられ、事務的作業量が増えて医師の負担が増加すると予想。同協会は「5分ルールの導入で減収・負担増となり、地域の医療崩壊は加速する。診療報酬改定は、地域医療の現場の声を聞きながら進めるべき」と訴えている。


 姑息な医療費抑制策が、地域医療を崩壊させようとしている。医師不足の中、必死に頑張っている公的医療機関に、厚労省はとどめを刺そうとしている。