廃用症候群レセプト審査強化

 厚生労働省より、平成20年度診療報酬改定に係る通知等についてという資料が提示された。脳血管疾患リハビリテーション料における廃用症候群レセプト審査強化について紹介する。


 診療報酬の算定方法の制定等に伴う実施上の留意事項について(保医発第03005001号)の別添1全体版PDFファイルページ201-203ページに脳血管疾患リハビリテーション料に関する記述がある。廃用症候群に関係する部分を引用する。

 廃用症候群に該当するものとして脳血管疾患等リハビリテーション料を算定する場合は、廃用をもたらすに至った要因、臥床・活動低下の期間、廃用の内容、介入による改善の可能性、改善に要する見込み期間、前回の評価からの改善や変化、廃用に陥る前のADLについて別紙様式22を用いて、月ごとに評価すること。


* 別紙様式22


 以前、レセプト審査強化のおそれというエントリーで、算定日数上限超え患者に対し、詳細なレセプトコメントを記載させたことを紹介した。医師の精神的負担を増大させるという方法でリハビリテーション打ち切りを迫るという手法に味を占めた厚労省は、今度は廃用症候群に的を絞ってきた。


 レセプトコメントの雛形作成を試みる。


(1)廃用をもたらすに至った要因
 原因疾患等について記載する。
 例)肺炎・呼吸不全


(2)臥床・活動低下の期間
 原因疾患等の発症日から、リハビリテーション介入開始までの期間、ないし、積極的なリハビリテーション(座位訓練開始等)までの期間を記載する。
 例)重症呼吸不全発症から第7病日にベッドサイドリハビリテーションを開始した。端座位訓練を始めたのは第14病日、さらに、立ち上がり訓練を行ったのは第21病日だった。この経過より、少なくとも14−21日間程度活動低下の期間があったと判断する。


(3)廃用に陥る前のADL
 当院では、リハビリテーション依頼前に、老研式活動能力指標とBarthel Indexをご家族から聴取している。厚労省の寝たきり老人日常生活自立度や認知症性老人自立度を使用する方法もある。Modified Rankin Scale(mRS)を用いている施設もある。歩行能力を使用する方法もある。いずれにせよ、廃用に陥る前のADLを評価することは、リハビリテーション目標設定をするうえで重要である。
 例)病前は、老研式活動能力指標13点、Barthel Index100点であり、社会生活能力において支障はなかった。
 例)病前は、寝たきり老人日常生活自立度A-1、認知症性老人自立度IIbだった。屋内生活は概ね自立していたが、ほとんど外出をしていなかった。服薬管理に援助を必要としていた。


(4)廃用の内容
 廃用症候群には次のものが含まれる。リハビリテーションを行ううえで重要なものを中心に記載する。
・廃用性筋萎縮
・関節拘縮
・廃用性骨萎縮
・心機能低下および体力低下
・起立性低血圧
・精神機能低下
・褥瘡
 例)廃用性筋萎縮と心肺機能低下が目立つ。両下肢筋力はMMTにて2〜3レベルである。また、平行棒内歩行訓練などの軽労作で息切れが生じる。脈拍が安静時75/分が歩行後110/分まで上昇する。少量頻回でないと訓練はできない。


(5)介入による改善の可能性
 開胸術や開腹術などの侵襲が大きい手術、臓器不全などでも、比較的若年で社会生活能力が高い方は改善の可能性が高い。一方、高齢者、要介護者、認知症がある者、併存疾患が多い者では比較的軽症の疾患でも廃用症候群をきたす。そのことを踏まえた上で、コメントを記載する。
 例)病前のADL・IADLは自立しており、リハビリテーション実施により改善する可能性がある。
 例)もともと要介護状態で、廃用症候群に陥りやすかった。しかし、今回起こした肺炎の治療は順調であり、また、早期よりリハビリテーション介入を行ったところ、少しずつ起居動作能力が向上している。改善の可能性がある。


(6)改善に要する見込み期間
 経験則では、臥床・活動低下の期間の1〜1.5倍程度のリハビリテーション期間を必要とする。
 例)積極的リハビリテーション開始まで約30日を要したため、リハビリテーション開始から改善まで30〜60日程度の入院を要すると見込む。


(7)前回の評価からの改善や変化
 どんな些細な改善も見逃さないようにする。その意味でBarthel IndexよりはFIMの方が使いやすい。ADLが低い場合には、Barthel IndexやFIMの変化が生じない。その場合、経口摂取可否や寝返り、起き上がりの評価をする。
 例)FIM合計が35点から40点に改善した。
 例)前回、経鼻経管栄養だったが、嚥下訓練を行った結果、嚥下訓練食の経口摂取が可能となった。


 リハビリテーション医療を行うことによって改善の可能性がある場合には、レセプトコメントを詳細に記載する。当院では初回コメントは医師が記載し、2回目以降は療法士が変化点を中心に記述することになるだろう。