「重症度・看護必要度に係る評価票」調査結果と7対1入院基本料

 中医協診療報酬基本問題小委員会(第99回)平成19年10月3日、7対1入院基本料について資料(診-1-2)内に、「重症度・看護必要度に係る評価票」を用いた調査結果のまとめがある。


 一般病棟入院患者、7対1(n=473,136)、10対1(n=169,278)、13対1(n=31,123)のデータである。ちなみに、75歳以上の患者構成比は7対1が34.4%、10対1が39.7%なのに対し、13対1は55.7%と半数と超えている。


 まず、病棟ごとの分布を図に示す。黒が7対1、ピンクが10対1、そして緑が13対1である。



 次にB得点の結果のみ、表にまとめる。

7対1 10対1 13対1 一般病棟用
床上安静の指示:あり  12.9  13.5  13.8   ×
どちらかの手を胸元まで持ち上げられる:できない  7.8  8.5  12.6   ×
寝返り:できない  17.0  18.7  25.3   ○
起き上がり:できない  25.7  28.1  36.8   ○
座位保持:できない  14.0  15.8  18.5   ○
移乗:できない  22.2  25.1  33.0   ○
移動:移動なし  16.5  19.6  24.7   ×
口腔清潔:できない  32.6  34.9  43.4   ○
食事摂取:全介助  13.2  14.5  20.1   ○
衣服の着脱:全介助  21.5  24.3  32.0   ○
他者への意思の伝達:できない  11.0  12.5  18.7   ×
診療・療養上の指示が通じる:いいえ  19.7  21.7  31.8   ×
危険行動への対応:ある  17.1  18.3  16.9   ×


 結果は一目瞭然である。
 「重症度・看護必要度に係る評価票」のA得点は7対1入院基本料病棟の方が高得点である。しかし、10対1入院基本料病棟との差はない。
 一方、B得点に関しては、どの項目をとってみても7対1入院基本料病棟より13対1入院基本料病棟の方が看護必要度が高くなっている。


 以上の結果より、次のような推論が可能である。
(1) ハイケアユニット用「重症度・看護必要度に係る評価票」が一般病棟の看護必要度にも通用する。実際に看護師配置数を増やすべきなのは、現時点で7対1入院基本料を算定している比較的規模の大きい病院ではなく、高齢者で要介護者が多い13対1入院基本料算定中小規模病院である。
(2) ハイケアユニット用「重症度・看護必要度に係る評価票」は一般病棟の看護必要度適用に際し不適切である。7対1入院基本料を算定病棟の看護必要度は本当は高い。別の評価票を用いる必要がある。


 おそらく、前者が正しいのだろう。いずれにせよ、どのように加工しようとも、「重症度・看護必要度に係る評価票」の項目を用いて、7対1入院基本料算定病棟を絞り込むことは不適切である。「モニタリング及び処置等に係る得点(A得点)が2点以上、かつ、患者の状況等に係る得点(B得点)が3点以上の基準を満たす患者を1割以上入院させている場合に算定できる。」という基準はきわめて低く、多くの病院はそのまま7対1入院基本料を算定することができる。そこで持ち出されたのが「医師数が当該病棟の入院患者数に対して10分の1以上であり、かつ医療法標準を満たしている病院以外の病院については、7対1入院基本料の減算措置を講ずる。」という要件であると推測する。


 医師不足、看護師不足問題を放置し、看護必要度で優先順位をつけようとする政策自体に問題がある。科学的装いだけは整えるが、論理的に破綻をきたし、最後に強引に辻褄合わせをする。厚労省の行うことは、要介護認定にせよ、療養病床の医療区分・ADL区分導入にせよ、このような類が多い。