東日本大震災被災者窓口負担免除、実質的に打ち切りへ

 東日本大震災被災者に対する、市町村国保後期高齢者医療、介護保険の窓口負担の免除が、実質的に平成24年9月末で打ち切られる見込みとなった。

 厚生労働省から発出した通知(平成24年7月24日)内にある、平成24年10月1日以降の東日本大震災により被災した被保険者に係る一部負担金の免除及び保険料(税)の減免に対する財政支援について(PDF:118KB)をみると、次のような記述がある。

1 平成 24 年 10 月1日以降は、両事務連絡のとおり、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う国による避難指示等の対象となっている地域(以下「避難指示等対象地域」という。)の被災被保険者等の一部負担金の免除措置及び保険料(税)の減免措置についてのみ、減免に要した費用を全額補填する特別の財政支援を継続する措置を講ずることとしているところ。


 東電第一原発事故避難指示等対象地域に関しては、平成25年2月28日までとなっているが、この部分は同じである。次項からが変更点だが非常にわかりにくい。

2 避難指示等対象地域以外の被災地域において、平成 24 年 10 月1日から同年 12 月 31 日までの間も引き続き、一部負担金の免除並びに国民健康保険及び後期高齢者医療の保険料(税)の減免を行った場合には、国民健康保険の調整交付金の交付額の算定に関する省令(昭和 38 年厚生省令第 10 号。以下「国保調整交付金算定省令」という。)第6条第1号及び第4号並びに後期高齢者医療の調整交付金の交付額の算定に関する省令(平成19 年厚生労働省令第 141 号。以下「後期高齢者医療調整交付金算定省令」という。)第6条第1号及び第3号の規定による特別調整交付金の交付対象となること。その際、これら各号の規定に基づき、平成 24 年1月1日から同年 12 月 31 日までの減免額を基準として交付対象を判断することとなること。
 また、これら各号に該当する市町村が、引き続き、平成 25 年1月1日から同年3月 31日までの間の一部負担金の免除及び平成 25 年1月1日から同年4月1日までの間に普通徴収の納期限(特別徴収の場合にあっては特別徴収対象年金給付の支払日)が到来する保険料(税)の減免を行った場合には、その減免に要した費用の 10 分の8を、平成 25年度の国保調整交付金算定省令第6条第 12 号及び後期高齢者医療調整交付金算定省令第6条第9号の規定による調整交付金の交付対象とする予定であること。


3 2の財政支援の対象となる一部負担金の免除措置は、国保調整交付金算定省令第6条第4号及び後期高齢者医療調整交付金算定省令第6条第3号に係る交付基準に従い行うこととなるが、「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律等における医療保険関係の特例措置について」(平成 23 年5月2日付け保発第 0502 第3号) と同様の基準とする予定であること。
 2の財政支援の対象となる保険料(税)の減免措置は、国保調整交付金算定省令第6条第1号及び後期高齢者医療調整交付金算定省令第6条第1号に係る交付基準に従い、同一の事由によって市町村民税の減免を行っていることが要件となること。ただし、その 他の要件については、平成 24 年度に限り、住宅の損害に係る被保険者の所得要件は適用しないなど「東日本大震災により被災した被保険者に係る国民健康保険料(税)の減免に対する財政支援の基準について」(平成 24 年6月 26 日保国発 0626 第1号)及び「平成 24 年度後期高齢者医療災害臨時特例補助金の交付申請及び後期高齢者医療の特別調整交付金の交付について」(平成 24 年6月 25 日保高発 0625 第1号)と同様の基準とする予定であること。
 関係通知及び具体的な基準については、追って通知する予定であること。


4 避難指示等対象地域以外の被災地域の被災被保険者等に対して、保険者の判断で平成24 年 10 月1日以降も一部負担金の免除及び保険料(税)の減免を行う場合には、あらかじめ、市町村と後期高齢者医療広域連合との間で連携し、その対象者や要件について、十分に調整を行うこと。


 これまでは、国の財政負担で行っていた免除措置が、10月1日以降は、保険者である市町村や後期高齢者医療広域連合に委ねられる。その際、財源として特別調整交付金を当てていたが、国の負担割合を8割までとする。さらに市町村民税の減免を行っているなどの要件を付け加えている。


 この問題に対し、東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センターは、被災者の医療・介護の減免継続に向けた対応を緊急に要望いたします(2012年7月30日)という要望書を宮城県知事に提出している。

 また、この通常時の枠組みを活用した免除措置をとる場合は、まず保険者が決断しなければなりません。その際に、調整交付金の対象にならない市町村には躊躇が生まれやすく、国が手当しない残り2割の費用をどう捻出するかについてはどの市町村も頭の痛い問題です。被災の大きな市町ほど費用が増大するので、財源確保の支援がなされなければ免除を9月末で打ち切る市町村が広がる危険性があり、市町村間で対応に差異が生じることも危惧されます。
 後期高齢者医療については、保険者の広域連合が市町村と違って独自の税財源をもっていないため、事務連絡でも「減免を行う場合には、あらかじめ市町村と後期高齢者医療広域連合との間で連携し、その対象者や要件について、十分に調整を行うこと」を求めています。免除を継続するためには市町村からの拠出や県の支援などの何らかの財源対策が必要であり、県が調整や支援に乗り出すことが求められています。


 国は、財政支援の必要性を認めながらも、被災した自治体自身に応分の負担を求めている。自治体にとって、財源確保と住民ニーズとの板ばさみにあうという事態になっている。非情な通知としか言いようがない。
 被災地住民は、それでなくても経済的に困難を抱えている。この上に、医療費窓口負担や介護サービス利用料負担が加わった場合、受診抑制や介護サービス利用抑制の動きが強まる。うつ病PTSDアルコール依存症、自殺などの精神疾患、ストレスが原因として起こる脳心血管事故、閉じこもりが原因となる運動不活発病などの震災関連疾患が増加し、健康状態が悪化するおそれがある。きわめて重大な問題である。
 東日本大震災復興が不十分な現状を考えると、市町村国保後期高齢者医療、介護保険の窓口負担の免除は、震災後最低3年間、平成26年3月末頃までは続けるべきだと私は考えている。