行方不明の超高齢者はどこに
足立区で都内最高齢者だったはずの111歳男性がミイラ化した状態で見つかった。この後、100歳以上の高齢者の所在が確認されない事例が次々の確認された。日本中がこの話題で騒然としている。
発端となった事件では、家族が死亡を知りながら30年以上も年金を受給し続けたことが問題となっている。詐欺事件として立件される可能性もある。
一方、報道されている所在不明事例の多くは、本来は失踪事件として扱われるべきものが含まれている。警察庁のホームページに、平成2 1 年中における家出の概要資料がある。最近10年間のデータは次のようになっている。
家出人捜索願受理状況 | 所在確認状況 | 両者の差 | |
---|---|---|---|
平成12年 | 97,268 | 83,730 | 13,538 |
平成13年 | 102,130 | 86,633 | 15,497 |
平成14年 | 102,880 | 88,323 | 14,557 |
平成15年 | 101,855 | 89,734 | 12,121 |
平成16年 | 95,989 | 85,199 | 10,790 |
平成17年 | 90,650 | 81,297 | 9,353 |
平成18年 | 89,688 | 82,073 | 7,615 |
平成19年 | 88,489 | 82,387 | 6,102 |
平成20年 | 84,739 | 78,668 | 6,071 |
平成21年 | 81,644 | 79,936 | 1,708 |
平成21年のデータをみると、70歳以上は11,707人であり、構成比14.3%となっている。家出原因と年代別の比率の記載はないため、詳細は不明である。若年者の場合、家庭関係や異性関係が、中高年の場合には、事業・職業関係、疾病関係が多いのではないかと推測する。特に、高齢者の場合に問題となるのは、認知症による徘徊である。行方不明となり、所在が確認されない場合には、事故にあっている可能性がある。
所在がわからない事例の場合、失踪宣告を行い、法律上死亡とみなされる。残された配偶者の再婚も可能となる。しかし、高齢者の場合には、行方不明となっても法的手続きがとられないことがある。
複雑なのは、親族が失踪を放置したり、元々、親族や利害関係者のいなかったりするケースだ。失踪して生死不明の状態が長く続いていても、戸籍上の手続きがとられないことになる。このため市町村長は、明らかに死亡したとみられる高齢者について、各地の法務局の調査を経て、職権で除籍する「高齢者消除」という手続きをとることもできる。
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=28837
住民がお互いの状況を把握できる規模なら、行方不明となってもすぐに対応がとられる。しかし、プライバシー保護が前面に出て、隣が何をしているかさえわからない社会では、人間関係が希薄となる。
警察庁の統計では、家出数が減少し、所在確認者との差が減ってきている。一見改善傾向とみえるが、実際は届出でさえされていないのではないかという危惧がある。知らない間に人が次々と消えていく時代に私たちは生きている。