その昔、放射線医学とリハビリテーション医学は兄弟だった

 「現代リハビリテーション医学(千野直一編)を読むと、放射線医学とリハビリテーション医学は、その黎明期には兄弟のような間柄だったことがわかる。

現代リハビリテーション医学 改訂第3版

現代リハビリテーション医学 改訂第3版


# 米国のリハビリテーション医学の歴史(本文7〜8ページ)

  • 1890年、American Electro-Thrapeutic Association (AETA)発足する。
  • 1896年、X線の発見に基づいて放射線医学への関心が高まり、AETAの会員の多くが参画し、American Roentgen Ray Sociaty (ARRS)が創設される。電気治療と放射線治療は、物理医学の主たる分野としてしばらく共存するかっこうで学術集会がもたれる。
  • 1923年、American College of Radiology and Physiotherapy (ACRPT)が結成されたが、放射線医学会はACRPTより独立、分離し、1925年、American Congress of Physical Therapyとなった。ちなみに、現在のArchives of Physical Medicine and Rehabilitationの第1巻第1号は1920年に発刊されたJournal of Radiologyである。


# 日本のリハビリテーション医学の歴史(本文8〜10ページ)

  • 1948年の医療法制定時には、「理学診療科(または放射線科)」だった。
  • 1965年の医療法改正により、放射線科は独立標榜科となった。


 ヨーロッパ諸国のリハビリテーション医学の歴史(本文10〜11ページ)を見ても、19世紀末〜20世紀初頭では電気治療と放射線医学が物理医学のカテゴリーの中に含まれている。


 現代においては、運動機能障害・認知機能障害を主体とするリハビリテーション医学と、画像診断や悪性腫瘍の治療を主な仕事とする放射線医学は遠い存在となっている。しかし、その黎明期には、物理医学という共通の土台のもとにあった。日常診療上何の役にも立たない知識だが、トリビアのひとつとして、学生さんたちの眠気覚まし用の話題としてしばしば取り上げている。