宮城県における仮設住宅「寒さ対策」の遅れ

 応急仮設住宅のハード面にかかる改善対策の進捗状況及び自治会の設置状況について |厚生労働省にて、応急仮設住宅のハード面にかかる改善対策の進捗状況について(PDF:4,028KB)が公表された。一見して分かることは、「寒さ対策」の進捗状況が各県で大きな差があることである。12月9日時点では次のようになっている。なお、団地数はそれぞれ、岩手県334、宮城県400、福島県184となっている。

  • 断熱材追加・補強
    • 岩手県: ほぼ全団地が「対応済み」
    • 宮城県: 約7割が「対応済み」
    • 福島県: 約7割が「対応済み」
  • 窓のサッシ化、複層ガラス化
    • 岩手県: ほぼ全団地が「対応済み」
    • 宮城県: 約7割が「対応済み」
    • 福島県: 約7割が「対応済み」
  • 暖房器具追加設置
  • 水道管追加設置
    • 各県ともほぼ全団地で「対応済み」
  • 通路舗装
    • 岩手県: ほぼ全団地で「対応済み」
    • 宮城県: 約3割が「対応中」
    • 福島県: 約8割が「対応済み」


 岩手県の充実ぶりと比べ、宮城県の遅れが目立つ。この時期になって、暖房器具追加設置が約1割とは…。2011年9月30日 第2回応急仮設住宅の居住環境等に関するプロジェクトチーム議事録を見ると、次のようなやりとりが行われている。

岩手県東京事務所長 それでは、岩手県における寒さ対策についてでございます。構造面でいきますと、壁とか天井、床下への断熱材等の追加・補強につきましては、既に設置しているものもございますし、現在工事中ということもありまして、9月中にはほぼ完了する予定です。
 すきま風防止用のシート等の追加・補強につきましては、風除室で対応ということで実施予定はございません。
 窓の二重サッシ化、複層ガラス化につきましては、先ほどと同じように9月までに完了見込みでございます。
 居室への畳設置は10月まで。これは希望者でございます。
 玄関先への風除室の整備につきましては、これも10月までに完了予定でございます。
 窓の雪囲いの設置、雪降ろし時の転倒防止アングルの設置につきましては、沿岸部は雪がそれほど降らないということでございますので、現在のところ実施予定はございません。
 附帯設備につきましては、結露対策で換気扇、換気口の追加までは9月までに完了見込みです。
 水道管等の凍結防止は既に実施してございます。
 合併処理浄化槽の凍結防止も実施済みでございます。
 エアコンの室外機の高所設置化(積雪対応)につきましては、先ほどと同じ理由で予定はございません。
 電気設備拡充に伴う電気容量増強工事は実施済みでございます。
 その他、防風ネット・壁等の整備について実施予定はございません。
 通路、駐車場の舗装及び排水用側溝の整備(除雪対応)ということでございますが、通路の補強を実施中でございまして、10月までに完了予定でございます。
 雪捨て場の配置は特に予定はございませんで、団地内の空きスペースを活用するということにしております。
 以上でございます。

宮城県東京事務所長 宮城県ですが、アンケート調査の実施状況の中で、市町村の住環境改善の実施状況のように、例えば寒さ対策の状況なり二重ガラスの状況なり、これは8月段階でございますけれども、0ということであります。
 一方、ニーズを見ますと、相当高いというのもございます。この寒さ対策については、現実的にはこういう状況になっておるんですけれども、実際に市町村の方でもニーズを把握しまして、どれぐらいのところでどういうニーズがあるのか、全部の市町村ではないんですが把握し、実施計画をつくっているところなんですけれども、ただ、28日、改めて厚労省さんの方から寒さ対策の通知もきましたので、昨日29日、改めてまた市町村の方の会議をさせていただいて、再度寒さが来る前に、ニーズ調査をしっかり把握していない市町村がまだあるとすれば改めて確認していただいて、そういったところにどういったものが必要になるか、そういった調査をし、早々に実施するということでございます。

 数字を示して説明する岩手県、言い訳に終始する宮城県という構図になっている。宮城県民として、目を覆いたくなる。流石に、平野東日本大震災復興対策担当大臣も腹に据えかねたようで、次のような発言をしている。

○平野東日本大震災復興対策担当大臣 わかりました。急いでやっているから水道管の埋設が非常に浅くて、多分北の方はつらいかなと思ったんですが、そこは再度動かしながらチェックされておいた方がいいと思います。
 岩手県で一番嫌なのは、水道管が凍結したというニュースが流れることが非常につらいかなと思っていましたので。
 福島県さんの方も大体取り組んでいるということですね。
 宮城県さんは現状も把握していないということですか。
宮城県東京事務所長 把握しているところもあります。石巻とか東松島とか女川とか、団地ごとにどういった部分が不足して、どういったことが必要かという計画を既に出していただいて。
○平野東日本大震災復興対策担当大臣 つくっているのはいいんだけれども、申し訳ないけれども、岩手県宮城県の作業は随分差があるね。要するにこの間の質問が出てきている一番の現地はどこを見ているかというと、宮城県を見ているんです。これは第1回目のPTをやったときは大塚さんが座長のときだったけれども、そのときに動いていて、多分岩手と福島はそれを見て動いたはずなんです。なぜ宮城県は動かないんですか。この仮設住宅の環境とか何とかというのは国の施策ではないですからね。はっきり言っておきますけれども、市町村と県が本気でやるのだったら、それを後押しするのが国の役割だから。
宮城県東京事務所長 正直言いますと、先ほど通知にありました寒さ対策の項目ごとの具体数字を手元に今持っておりません。
○平野東日本大震災復興対策担当大臣 それもそうなんだけれども、県として動いた形跡が今の報告を聞いているとないんだ。事務所長がそういう報告を受けていないのか、宮城県全体が本当にやっていないのか。
宮城県東京事務所長 ですから、個別項目ごとに動いている分があると思います。今、私は詳細を今日持ってこなかったので。
○平野東日本大震災復興対策担当大臣 そこはちゃんと調べて報告してくれなければ。
宮城県東京事務所長 申し訳ございません。
○平野東日本大震災復興対策担当大臣 とにかく自治体が動かなかったらこの対策は進まないから。そのときに自治体が動くことに対して私たちはサポートします。自治体が自分たちの仕事だと思って主体性を持ってやらなかったら仮設住宅の環境整備などはできないということだけ繰り返し言っておきます。村井知事もまたお願いしておきますけれども、そこはちゃんとやってください。
 ちなみに寒さ対策については年内に全部やると国会で私は言ってしまっているから。これは当たり前なんです。仮設住宅を完成して大体8月か9月くらいにやって、あと状況を見ながら何が足りないかと地元で判断したら、先ほど厚労省さん、山崎局長の方から災害救助法の予算で対応できるということは知っているはずだから、それはとにかく対応してくださいということを強く言っておきますから、お願いします。
宮城県東京事務所長 改めまして再度現場の方と確認させていただいて。
○平野東日本大震災復興対策担当大臣 確認と同時にとにかくやっているという報告をもらわないとそこはだめです。
宮城県東京事務所長 はい。


 宮城県のホームページに、宮城県応急仮設住宅の全戸完成について 記者会見資料 平成23年11月4日が載っている。

○ 寒さ対策等の追加工事については、10月24日に着手しました。なお、寒さ対策の追加工事は12月中の完成を目標に取り組んでおります。

 9月30日のプロジェクト会議で指摘されて、慌てて取り組んだことがよく分かる。


 この間の経過については、http://www.toyokeizai.net/business/society/detail/AC/cd540b66d8e131a2ffe8400aa9a652f3/page/1/宮城 仮設住宅2万2000戸/防寒 ようやく着工/被災者「冬に間に合わない」で報道されているが、プレハブ建築協会への丸投げ、施工基準の見通しの甘さが原因と考えられる。明らかな行政の怠慢である。
 本格的な冬が到来しているが、未だに「寒さ対策」が完了していない。津波被災地は高齢化が進んだ医療過疎地域である。健康被害が生じないことを心から願う。