早期認知症者にも胃ろう造設という実態

 認知症患者に対する胃ろう造設に関する記事があった。

関連エントリー

 口から食べることが難しくなったお年寄りの認知症患者で、おなかにチューブを通して栄養分を入れる胃ろうをすると2割は食べる機能が改善することが厚生労働省の研究班の調査で分かった。早期の認知症の人では3割だった。こうした調査は過去に例がなく、調査の責任者、国際医療福祉大病院の鈴木裕教授(外科)は「患者や家族の判断材料の一つになれば」と話す。

http://www.asahi.com/science/update/0528/TKY201105280232.html


 胃ろうを作れば食べる機能が改善する、ということを主張したいようだが、非必要な胃ろう造設が常態化している現実を反映しているとも読み取れる記事である。早期認知症で食べる機能の改善率3割という数字は、残りの7割は経口摂取不可能にとどまっていることになる。早期認知症が正しく定義されているのか疑問がある。併存疾患も記載されておらず、胃ろう造設に至った経緯も不明である。栄養管理、摂食・嚥下リハビリテーションが適切に行われていれば、経口摂取再獲得率はもっと高くなった可能性がある。
 調べてみると、平成22年度 老人保健健康増進等事業|NEWS&TOPICS|NPO法人PDNにある、「認知症患者の胃ろうガイドラインの作成―原疾患、重症度別の適応・不適応、見直し、中止に関する調査研究―」が、元になった調査のようだ。認知症患者の胃ろうガイドラインの作成 : 原疾患、重症度別の適応・不適応、見直し、中止に関する調査研究 : 調査研究事業報告書 (PEGドクターズネットワーク): 2011|書誌詳細|国立国会図書館サーチをみると、PEGドクターズネットワークから今年の3月に出版されている。しかし、胃ろう手帳、PEGのトラブルAtoZ|PDNショップ|NPO法人PDNを見ても書籍の紹介はされていない。認知症患者の胃ろう造設問題は、重要な問題であり、関連する他分野からの検証も必要である。造設側の主張だけが一人歩きをしてはならない。ガイドライン普及を強く望みたい。


* 追記(2011年6月1日)
 本エントリーに対し、思いがけず、NPO法人PDNよりコメントをいただきました。該当報告書に関するリンクを貼らせていただきます。