サッカーが勝ち取った自由

 FIFA反差別宣言に対し、ネルソン・マンデラ南アフリカ大統領がコメントを寄せている。

As Nelson Mandela, the former President of South Africa, said “Sport can create hope, where once there was only despair. It is more powerful than governments in breaking down racial barriers. It laughs in the face of all types of discrimination. The 2010 FIFA World Cup has renewed the spirit of unity in South Africa and across the world for people to find their common humanity.”

http://www.fifa.com/worldcup/organisation/media/newsid=1264749/index.html#quarter+finalists+united+fight+against+discrimination

 ネルソン・マンデラ南アフリカ大統領はこう述べた。「スポーツは、かつて絶望しかなかったところで、希望を生み出した。それは、人種間のバリアを打ち破るうえで政府よりも強力だった。それは、全てのタイプの差別の前で笑い声をあげた。2010年FIFAワールドカップは、南アフリカと共通の人間性を見出した世界中の人びととの結束の精神とを新たにした。


   ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 「かつて絶望しかなかった」南アフリカの中で、もっとも過酷な環境だったところは、ネルソン・マンデラ前大統領も20年以上も収監されたロベン島刑務所である。ケープタウン沖に浮かぶ孤島にあり、数千人の政治囚が閉じこめられていた。
 ロベン島では、粗末な食事と過酷な労働、そして、些細なことでおこなわれる虐待が日常化していた。外部との接触がなく、情報が途絶する中で、絶望が支配してもおかしくない状況だった。
 しかし、そのような環境の中で、受刑者たちは知恵をしぼり、抵抗運動を続けていった。当局との粘り強い交渉の中、サッカーをする権利を勝ち取った。FIFAのルールや理念を遵守し運営されるマカナサッカー協会を設立した。受刑者たちは、サッカーを通じて、組織づくりの能力や団結力を培った。
 ロベン島刑務所内にあったサッカー協会についてまとめた本が「サッカーが勝ち取った自由」である。


サッカーが勝ち取った自由―アパルトヘイトと闘った刑務所の男たち

サッカーが勝ち取った自由―アパルトヘイトと闘った刑務所の男たち


 アパルトヘイトが廃止された後、受刑者たちは各界の指導者としての道を歩む。後に国防省に任命されたレコタはこう述べている。「われわれにはサッカーが必要だった。サッカーなしにはとてもあの生活には耐えられなかったよ。自由を奪われたわれわれにを、サッカーが自由にしてくれた。」
 現南アフリカ大統領ジェイコブ・ズマは、レンジャースのキャプテンで屈強なDFだった。会場で談笑するズマ大統領にとって、ワールドカップの主催国になったことは、このうえない喜びだろう。