「改革」のための医療経済学


「改革」のための医療経済学

「改革」のための医療経済学

  兪炳匡(ゆうへいきょう)氏著、「改革」のための医療経済学を読んだ。


 序に、青木昌彦氏の推薦文がある。

 私は、この書物が日本の制度改革を考える上で、文字通りブレークスルーといって良いほどの影響力を与えうるだろうと思う。


 「医療崩壊」、「医療制度改革」を論じる時に、本書は欠かすことができない。例えば、日本での通説に反し、高齢化、医療保険の普及、医師数、国民所得増大などの要因はいずれも小物であり、医療費高騰に軽微な影響しか持っていないことは、医療経済学では既に決着済みの問題であることを示している。


 本書を通読するには、やや苦労がいる。筆者が学問的に中立的な立場で論じているため、「医療崩壊」を論じている他書と比し、感情移入がしにくい。特定な立場・組織の利益にとって都合の悪い指標のみを「つまみ喰い」されることを、本書は忌避している。経済学的専門用語にも悩まされる。


 本書は深く理解するまで繰り返す読み直す価値がある。豊富な引用文権にもアクセスしてみたい。いずれにせよ、長くお付き合いすることになる本になりそうである。