社会保障費「10年間で11兆円の減に」

 CBニュース、社会保障費「10年間で11兆円の減に」より。

社会保障費「10年間で11兆円の減に」


 自民党の「療養病床問題を考える国会議員の会」(会長・中山太郎衆院議員)は5月23日、衆院第一議員会館で開いた会合で、「介護療養型医療施設の存続を求める会」からヒアリングし、厚生労働省側と意見交換した。この中で、けんなん病院の藤元秀一郎理事長は、「骨太の方針2006」で決まった、社会保障費を毎年2200億円削減することにより5年間で総額1兆1000億円を削減する方針について、「実際は総額3兆3000億円の削減になり、10年間で11兆円の削減になる」との試算を示した。その上で、「われわれには数字以上のダメージが出ている。これが続くと医療機関だけでなく介護保険施設も持たない」と述べ、医療・介護の現場は壊滅的なダメージを受けると訴えた。


 宮崎県で介護療養病床などを運営するけんなん病院の藤元理事長は、「骨太の方針2006」で決定した、社会保障費を2007年度から5年間、毎年2200億円ずつ削減することで総額1兆1000億円を削減しようとする方針について、実質の削減額は単純な2200億円ずつの累積ではないとした。「(削減した2200億円を)翌年に元に戻せば5年間で1兆1000億円ということになる。しかし、下げた分を翌年は上げないため、その効果が翌年も続く」と述べ、2200億円削減された分は翌年もそのままになっており、さらにほかの分野で2200億円が削減されるため、これまでの削減額にさらに2200億円が上積みされる計算になると指摘した(図参照)。その上で、「5年間で1兆1000億円の削減ではなく、実は5年間で3兆3000億円の抑制だ。5年目からは毎年1兆1000億円下げられることになる。これは永久に続くため、10年間続くと11兆円の抑制効果になる」と述べた。
 さらに、この削減を続ければ、日本の社会保障制度は「制度残って国民滅ぶという状態になる」と指摘した。


 厚労省老健局の鈴木康裕老人保健課長はこれに対し、「大臣もこれ(毎年の2200億円削減)への対応は難しいと言っている。現場の医師や利用者の方々との議論を踏まえ、申すところは申していきたい」と述べるにとどめ、具体的な返答を避けた。


 議員からもマイナスシーリングを見直すべきとの意見が多く出た。関芳弘衆院議員は「プライマリーバランス黒字化の話も含めてどういう制度にするか、国民の健康と生活を正常にするため、根元の方針の在り方を考えるべき」と述べ、骨太の方針の見直しを求めた。


 簡単な算数の問題である。
 2007年度に2,200億円削減した。翌年には、さらに2,200億円削減されるので、合計4,400億円となる。5年間では、2,200億円×(1+2+3+4+5)=2,200億円×15=3兆3,000億円となる。2,200億円×5年間=総額1兆1000億円とはならない。その3倍の3兆3,000億円が本当の削減額である。
 2007年度から2018年度までの12年間では、2,200億円×(1+2+3+4+5+5×7)=2,200億円×50=11兆円となる。1年あたり1兆円弱である。
 国は「持続可能」な制度という言葉をたびたび使用する。国の財政が厳しいから、これ以上お金は出せないぞと恫喝する時に使用する魔法の言葉である。確かに制度自体は残るかもしれない。しかし、利用するものが誰もいない制度だけが残っても意味はない。