長寿医療制度の診療報酬について(厚労省トピックスより)

 厚労省トピックス、長寿医療制度の診療報酬についてより。

平成20年4月9日


長寿医療制度の診療報酬について


 平成20年4月より、長寿医療制度が施行されましたが、当制度において提供される医療の内容や診療報酬について、御心配の声が寄せられており、その解消のために別添資料を作成しました。


 本制度においても、必要な医療が受けられなくなることはなく、むしろこれまでよりもより良い医療を選択することができると考えております。


 御質問等がございましたら、お住まいの都道府県の地方社会保険事務局又は厚生労働省保険局医療課までお問い合わせ下さい。


別添資料はこちら → 長寿医療制度の診療報酬について(PDF:98KB)


照会先:保険局医療課企画法令第一係
03−5253−1111(内線3288)


 「第一線で御尽力されている医療関係者の御心配に向けて」というサブタイトルがついていることから分かるように、医療関係者向けの資料である。わずか6ページのPDFファイルであり、3つの御心配に対し、回答する形となっている。

(御心配1) 患者が75歳以上になると、それまで受けていた医療が受けられなくなるのですか?

  • 75歳以上と74歳以下で受けられる医療に違いはありません。これまで受けてきた医療は変わりません。
  • それに加え、長寿を迎えられた方が、できるだけ自立した生活を送ることができるよう、「生活を支える医療」を提供します。

(御心配2) 「後期高齢者診療料」では、必要な医療や「フリーアクセス」が制限されるのですか?

  • 患者が選んだ「高齢者担当医」が病気だけでなく、心と体の全体を診て、外来から入院先の紹介、在宅医療まで継続して関わる仕組みです。
  • 後期高齢者診療料」の算定に係る届出を行った医療機関において、その医療機関を選んだ患者個々の同意があった場合に、適用されます。
  • 届出を行わない医療機関は、従来どおりの出来高等での算定が可能であり、届出を行った医療機関でも、「後期高齢者診療料」の対象患者であっても、これによらず、患者ごとに従来どおりの出来高等での算定を選択することも可能です。
  • 患者は「高齢者担当医」や医療機関を変更することができます。
  • また、紹介なくとも、複数の医療機関や他の専門医療機関等にかかることもできます。
  • この「診療料」を算定している場合でも、投薬の費用は別途算定可能であり、また、急性増悪時には550点以上の検査等(CT等)も別途算定可能です。


 後期高齢者医療制度に関する国会での質疑が引用されている。山田正彦議員が、慢性肝炎の例を出して追及している。がんになっていないかどうか調べるために行う血液検査や腹部エコーが、後期高齢者診療料では算定できないことを具体的に示している。
 それに対する水田厚労省保険局長の回答は次のとおりである。

 まず事実関係からお答えしたいと思いますけれども、後期高齢者に対する外来診療につきましては患者の希望によりまして、いわゆる出来高による診療報酬が算定できる形で、従来と同じ治療を受けることも選択することもできます。可能であります。更に、仮にこの後期高齢者診療料を選択された場合でも、病状が急に悪化したときに実施した検査あるいは処置、一定額以上のものにつきましては、別に算定することができるということとしてございまして、必要な医療が受けられなくなるということは考えておりません。
 さらに、高齢者にとりまして、いずれの場合でも希望すれば他の医療機関に変更することもできますし、専門的な診療が必要となった場合も、他の医療機関を受診することも制限されていないわけでございまして、患者と医師の間で信頼関係ができ、安定したときにおそらくこういった後期高齢者診療料が選択されるものであると考えます。これは、追加して、設けられたものでございます


 水田厚労省保険局長の意見は正しい。安定した後期高齢者のために「後期高齢者診療料」は追加して設けられた。複数の疾患を持ち、日常生活活動が低下している後期高齢者には、「後期高齢者診療料」は算定してはいけないのである。これまでどおり、出来高で診療して欲しいということである。

(御心配3) 長寿医療制度では、入院中の患者をそのまま「追い出し」ていくのですか?

  • 入院中の患者の多くが、可能であれば、住み慣れた在宅での療養を希望されているものと考えています。
  • 今回の長寿医療制度の診療報酬においては、このような患者の在宅復帰に向けた退院前からの計画的支援とともに、訪問看護等の在宅医療の充実を図っています。


在宅療養を支援するための診療報酬改定の主な例
1)訪問看護の評価の充実
(例)訪問看護基本療養費の引上げ(週3日まで 5300円→5500円)、24時間対応体制(5400円)の創設
2)在宅復帰の支援
(例)後期高齢者退院調整加算の創設(100点)、退院時共同指導料の創設(600点など)、退院時計画作成加算(100点)、退院加算(100点)


 「入院中の患者の多くが、可能であれば、住み慣れた在宅での療養を希望されている」という前提で、自宅に退院することを高く評価している。しかし、重度要介護者や家族介護力がない場合には、自宅退院は困難となる。長期療養可能な環境整備もあわせて行わないと、在宅に「追い出された」という思いはなくならない。


 後期高齢者医療制度、特に「後期高齢者診療料」に対する医療団体の拒絶に対し、厚労省は神経質になっている。しかし、厚労省が出した説明資料を読む限り、「後期高齢者診療料」は安定している場合以外には算定しないで欲しいと読みとれる。軽度の方のみを対象とする「後期高齢者診療料」など無用の長物である。