後期高齢者診療料届け出広がらず

 琉球新報後期高齢者医療制度で診療広がらず、より。

後期高齢者医療制度で診療広がらず 2008年4月25日


 後期高齢者医療制度長寿医療制度)で、診療報酬に新設された「後期高齢者診療料」の導入を届け出締め切りの14日までに県社会保険事務局に届け出た医療機関は、県内832カ所(病院93、診療所739)のうち、わずか9カ所にとどまっていることが24日、分かった。1日から始まった新制度での診療は県内ではほとんど行われていない実態が明らかになった。
 診療料に関しては全国各地の医師会で「必要な治療が制限される」として反対や慎重に対応する動きが広がっている。県医師会(宮城信雄会長)は態度を保留しているが、県内医療機関も慎重に対応している状況が浮き彫りになった。
 同診療料は定額で月6千円。心不全、脳血管疾患、糖尿病、認知症などの慢性疾患を持っている75歳以上の患者は、原則として診療所の一人の医師が患者の同意を得て担当医(主治医)となり、継続的に外来診療に当たる。担当医となるには認知症など高齢者医療の研修を受けなければならない。
 診療料には医学管理、検査、画像診断、処理が含まれるが、注射、薬代などは含まれない。高齢者の医療機関の複数受診などが医療費増につながっているとして、医療費の抑制を図るのが狙い。
 制度では高齢者の複数ある慢性疾患のうち、一つを「主たる疾患」とし、主たる疾患を診療している医療機関のみが後期高齢者診療料を算定する。一部の医師からは「複数の疾患のうち、一つを主病とすることがおかしい」「包括払いでは必要な検査ができない」などを指摘する声が上がっている。
 届け出を行わない医療機関は従来どおりの出来高での算定が可能。届け出を行った医療機関でも患者ごとに出来高での算定を選択することもできる。
 宮城会長は「診療料の低さや、ほかの医療機関との連携が取りにくくなり治療が多少制限されるなどの問題を感じて導入を控えているのだろう。担当医研修を受けていないので、導入できないという可能性もある」と推測。地区医師会の意向を聞き、県医師会としての対応を決めたいとした。(玉城江梨子)


 続いて、毎日新聞後期高齢者医療制度:「診療料」算定届け出、全医療機関の3.6%、より。

後期高齢者医療制度:「診療料」算定届け出、全医療機関の3.6% /宮城


 ◇医師組織「必要な医療できない」と反発も
 後期高齢者(長寿)医療制度の導入に伴い新設された「後期高齢者診療料」について、診療料を算定するための届け出を行った医療機関数が25日現在、県内の小児科を含む全医療機関(約1400)の3・6%に当たる約50にとどまっていることが分かった。定額でかかりつけ医の診療を受けられる仕組みで、診療費抑制を狙っているが、県内の医師組織が「必要な医療が提供できなくなる」として、算定自粛を会員に要請するなど全国で反発が広がっている。厚生労働省は「届け出をするしないは自由だが、患者の選択肢を狭める恐れもある」としている。【青木純】


 同診療料は今月行われた診療報酬改定で、75歳以上を対象に設定された。慢性疾患のある患者が月に1回、診療料(自己負担は原則600円、薬代は除く)をかかりつけ医に払うと、検査や処置を何度でも受けられる。同診療料を支払わず、1回の診療ごとに料金を払う従来の方式も選択できる。


 この制度に関し、県内の医師約3500人で組織する県医師会(伊東潤造会長)は、▽かかりつけ医を1人しか指定できず、医療機関同士の連携が損なわれる▽患者の症状が急に悪化して必要な検査・治療を行っても、同診療料以外の算定ができない場合がある‐‐など問題点を指摘。9日の理事会で「検討すべき点が多く、算定には慎重な姿勢が必要」との見解を取りまとめた。


 また約1700人を抱える県保険医協会(寺島一郎理事長代行)も25日、会員の医師に対して同診療料を算定しないよう呼び掛けると発表した。「患者負担が月600円では、医師側の持ち出しが増大しかねない。地域医療の崩壊を招き、患者が必要な医療を受けられなくなる恐れが高い」としている。


 各医療機関が同診療料を算定するためには、届け出が必要。取りまとめを行う宮城社会保険事務局によると、これまでに届け出を済ませた医療機関は約50程度。残りの医療機関では患者が望んでもかかりつけ医を指定できず、同診療料による検査や処置が受けられない状況となっている。


 厚労省保険局医療課は▽かかりつけ医に年間の診療計画を作ってもらえる▽病気の状況によって別の医師の紹介を受けられる‐‐など同診療料の利点を挙げたうえで、「よりよい制度を作ったと考えており、患者が活用できないのは残念。高齢者が安心してサポート体制を受けられるよう、できれば算定を行ってほしい」としている。


毎日新聞 2008年4月26日 地方版


 沖縄でも、宮城でも、後期高齢者診療料届け出は広がっていない。「よりよい制度を作った」と厚労省保険局医療課幹部は述べているようだが、多くの医療機関にボイコットされている現状をみる限り、厚顔無恥としかいえない。