大崎市民病院再編問題(続報)
以前、大崎市民病院再編問題というエントリーを記載した。診療所への再編を予定されていた3病院の当面存続が決まった。河北新報記事(2008年2月5日)より引用する。
大崎市民病院 3分院、当面存続へ 市長表明
宮城県大崎市の伊藤康志市長は4日の市議会全員協議会で、大崎市民病院の改革方針を表明し、診療所化案が出ていた3分院については、民間委託も視野に経営形態を改め、当面存続する方針を示した。建て替えを延期していた本院(古川)と岩出山分院については、開院時期をそれぞれ2013年度と11年度と明言し、新年度、市長部局に医療問題を担当する新部署を設置して新2病院の建設計画づくりに着手する。
分院がある鹿島台、岩出山、鳴子の3地区で分院存続を求める署名運動が巻き起こるなど、市民の関心を集めた病院議論は、具体的な経営改善策や建て替え手法を議論する新たな段階へと移る。
市の説明によると、本院は県北の医療拠点として医師が集まりやすい「マグネットホスピタル」を目指し、病床は500床。建設場所は「現在地もしくはそれ以上の立地条件」とした。建設や運営は民間の力を活用する。
岩出山分院は、旧町時代から新分院予定地としていた「あったか村」の市有地に、市が約40床の施設を建設。運営は民間委託を検討し、隣接地に同じ民間の老人保健施設誘致を目指す。既に複数の医療法人などが名乗りを上げているという。
現状の同分院は老朽化が激しく、耐震強度は基準ギリギリのため、約50人の入院患者や新患には転院を勧めるが、「患者と家族の意向を尊重し、強制はしない」(伊藤市長)と明言した。
鹿島台、鳴子の両分院については、現状の病床利用率の違いから、鹿島台は現状維持、鳴子は縮小の方針。指定管理者の導入も視野に新年度、識者や地域代表らによる「病院改革プラン検討委員会(仮称)」を立ち上げて協議する。
協議会後、伊藤市長は分院存続を求めて活動してきた3地区の住民団体代表らと会い、方針を説明。出席者からは「分院存続の願いがかない、ありがたい」といった好意的な意見が多く出たが、岩出山の住民からは「民間が引き受けない場合、分院はどうなるのか」との不安も聞かれた。
伊藤市長は「民間の力を借りれば、分院存続を求める市民の願いをかなえつつ、同時に経営改善や医師確保などの諸課題も解決することができる」と話し理解を求めた。
2008年02月05日火曜日
住民側からすると、一安心というところだろう。しかし、本番はこれからと考えた方が良い。検討内容をみると、2007年末に定められた公立病院改革ガイドラインの影響が強く伺われる(参照: 公立病院改革ガイドラインと医療崩壊(まとめ))。
「本院は『マグネットホスピタル』を目指し、建設や運営は民間の力を活用する。」という記述をみる限り、PFI方式を利用した建設を考えているようである。しかし、ある経営コンサルタント近江八幡市PFI病院の倒産の恐れ)に詳しい状況が記載されているように、PFI方式は決して魔法の杖ではない。場合によっては、自治体自体が倒産の憂き目にあう。
岩出山分院は、「指定管理者制度」を導入し、民間医療法人に委託する方針となった。また、現状の病床利用率の違いから、鹿島台は現状維持、鳴子は縮小の方針となった。両病院は、指定管理者の導入も視野に入れ、新年度、識者や地域代表らによる『病院改革プラン検討委員会(仮称)』を立ち上げて協議する、となっている。
今回の再編騒動は、病院が自分たちにとって大事な財産であることに住民が気づくきっかけとなったのではないか。医師をはじめとした医療従事者、住民、そして自治体職員が知恵を出し合い、その地域にあった運営形態を確立して欲しいと心から願う。