実績指数管理に関する留意事項

 今回は、実績指数管理について検討する。

 平成29年10月25日に行われた中央社会保険医療協議会総会審議会資料 |厚生労働省の個別事項(その5)について(PDF:2,048KB)のなかに、リハビリテーションに関する検討事項がまとめられている。なお、元になった資料は、平成30年1月25日に行われた中央社会保険医療協議会総会審議会資料 |厚生労働省内にある、(6)回復期リハビリテーション病棟におけるアウトカム評価の導入の影響、維持期リハビリテーションの介護保険への移行状況等を含むリハビリテーションの実施状況調査報告書(PDF:1,310KB)である。なお、本資料の調査用紙は、中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会審議会資料 |厚生労働省内にある、平成28年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(平成29年度調査)の調査票案について検-1(PDF:12,396KB)である。

 

 実績指数の評価については、以下の図のとおりである。

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 回復期リハビリテーション病棟に関する課題と論点(案)は、以下のようにまとめられている。

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 一番上にアウトカム評価(実績指数)の課題が記載されている。それぞれの項目について、該当する資料がある。

 

 入院料1算定病棟の約8割が一定のリハビリテーション提供実績(1日6単位以上等)があり、そのほぼ全てが実績指数27以上であったことは下図に示されている。

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 回復期リハビリテーション病棟の平均在院日数、在宅復帰率、日常生活機能評価の改善割合がいずれも平成27年より改善していたことは、以下に示されている。

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 実績指数が高いほど、平均在院日数は短く、在宅復帰率は高くなる傾向が認められたことに関しては、下図に示されている。

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 実績指数の値と患者の平均年齢、入棟時FIM(運動項目)の平均値とには相関関係が認められないとの記載に関係する図は以下のとおりである。

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 回復期リハビリテーション病棟にアウトカム評価を導入したことを検証したが、効果があったという結論となっている。ただし、中医協の調査は、多変量解析ではなく交絡因子の調整が行われていない。したがって、因果関係の有無について留保する必要がある。

  いずれにせよ、本調査をふまえ、よりアウトカム評価を推進するために、新回復期リハビリテーション病棟入院料1では、実績指数の平均値に近い37が新たな基準として、設定された。この実績指数をクリアするために、どのような管理をすべきかが問題となる。

 

 まとめでは言及されていない図が2つある。

 同一月に入院した患者でも、短期間で早く改善する者と時間をかけて良くなる者がいる。前者を多く集めている病棟だと実績指数は上がりやすいが、後者が多いと実績指数は低めに出ることが予想される。

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 疾患群ごとにも特徴がある。箱ひげ図を見ると、廃用症候群で実績指数が低値となっている。廃用症候群の患者にはもともと要介護のものが多いためではないかと推測する。疾患群内でも幅があり、患者によって差があることを認識する必要がある。

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  経験的には、実績指数管理に関しては次のような留意事項があると考えている。

  •  リハビリテーション適応が適切に判断されているか。
  •  急性期病院との連携がスムーズに行われ、リハビリテーション効果が上がりやすい早期に入棟しているか。
  •  集中的なリハビリテーションが提供されているか。
  •  退院調整がスムーズに行われ、早期退院が図られているか。
  •  在宅復帰の場合、適切な在宅サービス提供がなされているのか。

 上記が総合的に行われていれば、FIM運動項目増加が図られ、かつ、在院日数が短縮するため、実績指数は高くなる。

 一方、リハビリテーションの質がさほど高くなくても、実績指数を上げることはできる。例えば、次のような場合である。

  •  リハビリテーション適応があっても、FIM運動項目が上がりそうではない場合には選別してとらず、上がりそうな患者だけ選んでとる。
  •  退院調整を十分せず、機械的に入院期間を決め、短期間で退院させる。

 

 実績指数が高い病棟=リハビリテーションの質が高いとは一概には言えない。どう考えても、実績指数を引き下げる可能性があるが、専門的施設の矜持にかけて受け入れざるをえない患者はそれなりにいる。必要に応じて、除外規定を上手に使いながら、経営を守る視点から高めに設定し直された実績指数をクリアするために工夫をする必要がある。

回復期リハビリテーション病棟入院料の改定内容

 平成30年度診療報酬改定答申が、2018年2月7日に出された。

www.mhlw.go.jp

 

 上記資料のなかで、医科にとって重要なものは、個別改定項目が記載されている総-1(PDF:1,778KB)、新たな入院料の評価体系についての図が示されている総-1参考1(PDF:555KB)、そして、変更された部分のみだが新たな診療報酬点数表が記載されている別紙1-1(医科診療報酬点数表)(PDF:2,686KB)である。

 このなかで、総-1参考1(PDF:555KB)の図を主に用い、回復期リハビリテーション病棟入院料に関する改定についてまとめてみる。

 

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 現在、3段階に分けられていた回復期リハビリテーション病棟入院料は、実績指数をもとにそれぞれ2つに分けられ、計6段階となる。一方、充実加算は廃止される。

 

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 改定前の回復期リハビリテーション病棟入院料1においては、以下の項目を満たさないといけず、定期的なモニタリングが必要となっている。

 

# 入院時評価

  • 日常生活機能評価に基づく重症患者割合: 10点以上が3割以上
  • 一般病棟用の重症度、看護・医療必要度A項目: 0.5割以上

# リハビリテーション提供体制

# 退院時評価

  • 重症患者回復病棟加算要件: 3割以上が4点以上改善
  • 在宅復帰率: 7割以上
  • 実績指数: 27以上(27未満だと1日6単位を超えるリハビリテーションは入院料に包括)

 

 今回の診療報酬改定では、上記のうち、一般病棟用の重症度、看護・医療必要度A項目と充実加算に関する規定が削除された。また、在宅復帰率も現在の入院料1に相当する新入院料1、2では7割で据え置きになり、入院料2に相当する新入院料3、4では6割から7割に引き上げられている。

 一方、実績指数は、新回復期リハビリテーション病棟入院料1において、27から37に大きく引き上げられた。同入院料3、5においても27から30となった。

 

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 在宅復帰率の要件も変更され、上図に示すとおり、分母から一般病棟への転棟・転院が全て除外されることになった。結果として、在宅復帰率は上げやすくなった。特に一般病棟を持つ医療機関にとってはメリットが多い。

 

 以上をまとめると、次のようになる。

  •  回復期リハビリテーション病棟入院料1の後継である新入院料1、2に関しては、実績指数以外、大きな変更はない。実績指数37をクリアできるかどうかが問題となる。在宅復帰率はむしろ緩和されている。
  •  新入院料3、4に関しては、在宅復帰率の7割への引き上げをクリアできるかどうかがまず課題となる。一方、重症患者割合、重症患者回復病棟加算要件をクリアできれば、新入院料2以上への転換も見据えることができる。
  •  新入院料5、6に関しても、実績指数による評価が加わった。

 

 次のエントリーにおいて、中医協が行った診療報酬改定の結果検証に係る特別調査をもとに、実績指数管理についてさらに深めることにする。

回復期リハビリテーション病棟における栄養管理の推進

 今回の診療報酬改定において、回復期リハビリテーション病棟における栄養管理の推進が図られることになった。

 

 2018年1月26日に開催された中医協総会の資料、個別改定項目(その1)総-1(PDF:1,709KB)の120〜124ページに、回復期リハビリテーション病棟入院料の評価体系の見直し、という項がある。具体的内容の3番目に、栄養管理の推進が取り上げらている。

3.回復期リハビリテーション病棟において、患者の栄養状態を踏まえたリハビリテーションリハビリテーションに応じた栄養管理の推進を図る観点から、一部の入院料について、以下の対応を行う。

(1)  回復期リハビリテーション病棟入院料1について、管理栄養士が、リハビリテーション実施計画等の作成に参画することや、管理栄養士を含む医師、看護師その他医療従事者が計画に基づく栄養状態の定期的な評価や計画の見直しを行うこと等を要件とする。

(2)  回復期リハビリテーション病棟入院料1について、当該病棟に専任の常勤管理栄養士が1名以上配置されていることが望ましいこととする。

 

[算定要件]
 (1) リハビリテーション実施計画又はリハビリテーション総合実施計画の作成に当たっては、管理栄養士も参画し、患者の栄養状態を十分に踏まえた計画を作成すること。なおその際、リハビリテーション実施計画書又はリハビリテーション総合実施計画書における栄養関連項目(※)については、必ず記載すること。

 (※) リハビリテーション実施計画書及びリハビリテーション総合実施計画書に、栄養状態等の記入欄を追加。

 (2) 管理栄養士を含む医師、看護師その他医療従事者が、入棟時の患者の栄養状態の確認、当該患者の栄養状態の定期的な評価及び計画の見直しを、共同して行うこと。

 (3) 栄養障害の状態にある患者、栄養管理をしなければ栄養障害の状態になることが見込まれる患者その他の重点的な栄養管理が必要な患者については、栄養状態に関する再評価を週1回以上行うこと。

 

(3) 回復期リハビリテーション病棟入院料1について、リハビリテーションの実施に併せ、重点的な栄養管理が必要な患者に対する管理栄養士による個別の栄養管理を推進する観点から、入院栄養食事指導料を包括範囲から除外する。

 

 2017年10月25日に行われた中医協で、個別事項(その5)について(PDF:2,048KB)が提出されている。回復期リハビリテーション病棟における栄養管理に関係する資料は以下のとおりである。

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 この後、回復期リハビリテーション病棟における栄養管理の例をはさんで、次のような成果が提示されている。

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 最後に、管理栄養士(病棟専従)数が0.3人で、専従配置率が22.2%に過ぎないことが示されている。

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 今回の改定では、「専従」ではなく、「専任」配置となっており、しかも、努力規定にとどめている。明確に変わるのは、リハビリテーション総合実施計画書の書式である。また、入院栄養食事指導料も包括範囲から除外される。

 経営的なインパクトは決して大きくないが、小さく産んで大きく育てる、という厚労省の志向を考えると、数年後には管理栄養士の「専従」ないし「専任」配置は義務づけられるのではないかと推測する。

 リハビリテーション栄養の普及につながる、歓迎すべき改定である。

 

回復期リハビリテーション病棟入院料の再編・統合の概要

 平成30年診療報酬改定の概要が、徐々に明らかになってきた。

www.mhlw.go.jp

 

 2018年1月26日に開催された中医協総会の資料、「個別改定項目(その1)について」を見ると、細かな数値はまだ入っていないが、具体的な改定内容が記載されている。

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000191963.pdf

 

 今回は、回復期リハビリテーション病棟入院料の再編・統合について、まとめる。

 総-1参考(PDF:313KB)を見ると、次のようなイメージ図が提示されている。

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 スタッフ体制などを除けば、実績をもとに、回復期リハビリテーション病棟入院料は現在の3段階から6段階に細分化される。しかし、よく見てみると、これまでの入院料がそれぞれ実績指数で2つに分けられただけであることがわかる。

 

 回復期リハビリテーション病棟入院料の実績に関する指標は、これまでは以下の5つだった。

  • 日常生活機能評価に基づく重症割合
  • 一般病棟用の重症度、看護・医療必要度A項目
  • 重症患者回復病棟加算要件
  • 在宅復帰率
  • 実績指数

 このうち、一般病棟用の重症度、看護・医療必要度A項目に関しては、今回、診療報酬要件から削除となった(参考:総-1(PDF:1,709KB)96ページ)。また、日常生活機能評価に基づく重症割合と重症患者回復病棟加算要件は、手をつけられていない。したがって、変更となったのは、在宅復帰率と実績指数とになる。この2項目のうち、どちらがより重要かとなると、在宅復帰率である。他の要件とあわせ、在宅復帰率要件を満たすかどうかで、新回復期リハビリテーション病棟入院料1・2、入院料3・4、入院料5・6がまず規定される。そのうえで、実績指数をふまえ、入院料1と2、3と4、5と6に細分化される。

 

# 在宅復帰率の要件見直し

 在宅復帰率の要件に係る見直しのイメージ図は下記のとおりである(参考:総-1(PDF:1,709KB)14〜19ページ)。

<現行>

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<見直し案>

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 回復期リハビリテーション病棟に関する見直し案では、次のように変更されている。

 分子: 有床診療所(介護サービスを提供している医療機関に限る)と介護療養病床の後継として作られる介護医療院とが新たに含まれる。

 分母: 現行では、除外項目としては、死亡退院・再入院患者のほかは、急性増悪等による他医療機関への転院患者しかなかった。なお、現行の図で転棟患者(自院)が含まれるようになっているが、間違いである。一方、見直し案では一般病棟への転棟・転院が全て含まれる。

 上記要件の変更により、分母から除外される項目が増え、結果として、在宅復帰率は上げやすくなる。特に一般病棟を持つ医療機関にとってはメリットが多い。

 

 では、実際にどの程度の在宅復帰率が設定されるのかが問題となる。

 2018年1月26日に行われた中央社会保険医療協議会総会審議会資料 |厚生労働省の議事次第の中にある(6)回復期リハビリテーション病棟におけるアウトカム評価の導入の影響、維持期リハビリテーションの介護保険への移行状況等を含むリハビリテーションの実施状況調査報告書(PDF:1,310KB)を見ると、次のような数値が紹介されている。

 

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 回復期リハビリテーション病棟入院料1では、平均値・中央値とも80%を超えており、入院料2も同様である。これらのことを考慮すると、新入院料1・2は70%→80%への引き上げがほぼ確実ではないかと予想する。新入院料3・4も、60%→70%となるのではないかと推測する。

 

# 実績指数の見直し

 2017年10月25日に行われた中央社会保険医療協議会総会審議会資料 |厚生労働省の資料の中に、個別事項(その5)について(PDF:2,048KB)がある。本資料の中に、実績指数の分布図がある。

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 また、(6)回復期リハビリテーション病棟におけるアウトカム評価の導入の影響、維持期リハビリテーションの介護保険への移行状況等を含むリハビリテーションの実施状況調査報告書(PDF:1,310KB)の方を見ると、次のような数値が紹介されている。

 

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 以上を見ると、回復期リハビリテーション病棟入院料1の実績指数は、平均値。中央値とも35を超えている。これらのことを考慮すると、実績指数は現行の27より大幅に引き上げられ、35ないし36程度になるのではないかと推測する。

 

 いずれにしろ、現在、回復期リハビリテーション病棟入院料1を算定している医療機関は、新しい基準に基づき在宅復帰率を算定し直すとともに、実績指数をより高めにするために様々な工夫をすることが迫られることになる。

平成30年診療報酬改定について(諮問)

 本日行われた中医協で、平成30年診療報酬改定について(諮問)が明らかになった。資料は下記にある。

www.mhlw.go.jp

 

 諮問そのものに対してではなく、平成30年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理(案)について、意見の募集が行われる。

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000190887.pdf

 

 平成30年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理(案)を読むと、今回の改定の全体像がおぼろげながらわかる。このなかで、回復期リハビリテーション病棟を中心に、私が関心のある部分を抜き出してみた。

 

I 地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進

I-1 地域包括ケアシステム構築のための取組の強化

(1) 略

(2)  在宅復帰に係る指標について、以下のような見直しを行う。
1) 一般病棟入院基本料、回復期リハビリテーション病棟入院料及び地域包括ケア病棟入院料における在宅復帰率について、自宅等への退院支援機能を評価する観点や病棟毎の機能を踏まえつつ、名称変更も含めて見直す。

2) 療養病棟入院基本料の在宅復帰機能強化加算については、在宅復帰の機能をより推進する観点から、基準値を含め評価を見直す。

 

I-3 医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価

(1)〜(11) 略

(12) 回復期リハビリテーション病棟入院料について、入院医療の評価体系の再編・統合の方向性を踏まえ、以下のような見直しを行う。

1) リハビリテーションの提供による日常生活動作の改善(実績指数)等に応じた評価を一層推進する。
2) 実績指数の高い入院料について、栄養状態の評価や栄養管理に係る取組を要件とするとともに、入院栄養食事指導料の算定を可能とする。
3) 回復期リハビリテーション病棟専従のリハビリテーション専門職について、一定の要件の下、外来や訪問でのリハビリテーションの提供を可能とする。
(13) 10 対 1 入院基本料を算定する全ての医療機関や、一部の回復期リハビリテーション病棟入院料や療養病棟入院基本料を算定する医療機関についても、データ提出加算の算定を入院料の要件とする。そのため、現行の回復期リハビリテーション病棟入院料における重症度、医療・看護必要度に係る要件について、合理化の観点も含め整理する。また、未コード化傷病名等データの質についての評価を行う。

 

I-7 リハビリテーションにおける医療と介護の連携の推進

(1)  疾患別リハビリテーションについて、末梢神経損傷等の患者や回復期リハビリテーション病棟から退棟後3ヶ月以内の患者等を算定日数上限の除外対象に追加する。

(2)  回復期リハビリテーション病棟専従のリハビリテーション専門職について、一定の要件の下、外来や訪問でのリハビリテーションの提供を可能とする。(I-3 (12) 3) 再掲)
(3) 要介護被保険者等に対する維持期・生活期のリハビリテーションに係る疾患別リハビリテーション料を見直すとともに、算定が可能な期間を平成30年度末までとする。
(4)  維持期・生活期のリハビリテーションについて、介護のリハビリテーションとの併用に係る施設や人員の要件を緩和する。
(5)  医療機関介護保険リハビリテーション事業所で、リハビリテーション実施計画書を共有化できるよう、様式を見直すとともに、介護保険リハビリテーションに移行する患者について、医療機関介護保険リハビリテーション事業所にリハビリテーション実施計画書を提供した場合の評価を新設する。

 

II 新しいニーズにも対応でき、安心・安全で納得できる質の高い医療の実現・ 充実

 II-1-7 口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応、生活の質に配慮した歯科医療の推進

(1)〜(4) 略

(5) 脳血管疾患等リハビリテーション料の対象患者について、舌悪性腫瘍による舌切除等の後天的な器質変化に起因する音声・構音障害を有する患者を追加する。

 

II-3 データの収集・利活用及びアウトカムに着目した評価の推進

(1)  回復期リハビリテーション病棟入院料について、リハビリテーションの提供による日常生活動作の改善(実績指数)等に応じた評価を一層推進する。 (I-3 (12) 1)再掲)

 

III 医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進

III-1 チーム医療等の推進(業務の共同化、移管等)等の勤務環境の改善

(1)〜(5) 略

(6) 1) 略

2) 回復期リハビリテーション病棟専従のリハビリテーション専門職について、一定の要件の下、外来や訪問でのリハビリテーションの提供を可能とする。(I-3 (12) 3) 再掲)

 

III-2 業務の効率化・合理化

(1) 業務の効率化・合理化の観点から、以下のような見直しを行う。

1) 略

2) 医療機関介護保険リハビリテーション事業所で、リハビリテーション実施計画書を共有化できるよう、様式を見直す。(I-7 (5) 再掲)

 

IV 効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の強化

IV-3 医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価(再掲)

(1)〜(11) 略

(12) 回復期リハビリテーション病棟入院料について、入院医療の評価体系の 再編・統合の方向性を踏まえ、以下のような見直しを行う。
1) リハビリテーションの提供による日常生活動作の改善(実績指数)等に応 じた評価を一層推進する。
2) 実績指数の高い入院料について、栄養状態の評価や栄養管理に係る取組 を要件とするとともに、入院栄養食事指導料の算定を可能とする。
3) 回復期リハビリテーション 病棟専従のリハビリテーション専門職について、一定の要件の下、外来や訪問でのリハビリテーションの提供を可能とする。

 

 再掲という形で、同じ内容が繰り返し出されている。重複を避け、回復期リハビリテーション病棟などに関わる改定をごく簡単にまとめると、次のようになる。なお、見直すと記載されている場合には通常要件が厳しくなるので、( )内に言い換えた内容を記す。

 具体的内容を見ないとなんとも言えないが、回復期リハビリテーション病棟入院料1の要件は、間違いなく厳しくなる。また、維持期・生活期リハビリテーション医療保険で続けることは困難となり、介護保険リハビリテーションを行うように誘導される。
 一方、専従療法士が外来で退棟患者のフォローができるようになるなどの要件が緩和されたものもある。
 いずれにせよ、入院基本料の大規模な再編やDPC要件変更が計画されていることを考えると、まだ、リハビリテーション医療に関する診療報酬改定は対応可能なレベルではないかと推測する。今後、どのような情報が出てくるか注意して見ていきたい。

伊達政宗騎馬像の数奇な運命

 前エントリーについで、銅像の話をする。

 

 

 日本の銅像探偵団のTwitterでは、有名どころの銅像上記のように紹介している。青葉城址にある仙台の伊達政宗像は、その凛々しい姿で人を魅了し続けている。

 しかし、この伊達政宗騎馬像が2代目であることは、あまり知られていない。

 

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 上記書籍には、伊達政宗騎馬像について、次のような記述がある。

  •  初代の伊達政宗騎馬像が造られたのは、1935年(昭和10年)である。政宗没後300年を記念し、柴田町出身の彫刻家、小室達の手により製作され、天守台に設置された。
  •  しかし、第二次世界大戦の戦局悪化に伴い、金属類回収令が公布され、1944年(昭和19年)に、伊達政宗騎馬像も供出されてしまった。
  •  ところが、戦後、塩竃港の辺りに、胸から上の部分が放置されているところを見つけられた。下半身と馬の部分は失われていた。おそらく、政宗像を溶解しようとしたものの、さすがに顔の部分はおそれ多くて溶かすに忍びず、かといって目につくところには置けないため、人目につかないところに隠したのではないかと思われた。
  •  図らずも胸像となった政宗像は、最初は青葉神社に奉納されたが、1961年(昭和36年)より、仙台城三の丸跡に造られた仙台市博物館が所用することになった。現在は、博物館の庭に展示されている。
  •  1953年(昭和28年)、真っ白なセメント製の政宗像が造られ、天守の台座に飾られた。
  •  1962年(昭和37年)、保存されていた初代の鋳型を使い、再び、小室の手により伊達政宗騎馬像が復元され、現在の地に飾られるようになった。これに伴い、セメント像は、仙台に移る前に居城としていた岩出山城跡に移設された。

 

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 銅像を供出しないと弾薬もつくれないような状態でも戦争を続けようとした軍部の愚かさを、この伊達政宗胸像は示している。

 なお、今年の日本リハビリテーション医学会秋季学術集会は、11月2〜4日、仙台国際センターで行われるが、道路をはさんで向かい側に仙台市博物館がある。館内の展示物だけでなく、庭に飾られた伊達政宗胸像も拝観してほしい。さらにいうと、三の丸より本丸までの登城路は、山道だが、徒歩で天守台の伊達政宗騎馬像まで行くことができる近道である。学会で疲れた頭を休めるには、ちょうど良い散策コースとなっている。

 

 宮城「地理・地名・地図」の謎には、次のような記載もある。

  •  岩沼市竹駒神社の境内にある馬事博物館には、小室が1938年(昭和13年)に奉納した原寸の四分の三サイズの伊達政宗騎馬像の原型試作品が展示されている。宮城県には、合計4体の騎馬像がある。

 

 残念ながら、著者は間違っている。実は、もう1体、有名な伊達政宗騎馬像がある。

  

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 陸羽東線有備館駅前に、真っ白な伊達政宗騎馬像がある。これは、1989年(平成元年)から仙台駅ステンドグラス前に置かれていたものであり、2008年(平成20年)に現在地に移設された。

 仙台市民の待ち合わせ場所として非常に有名だった像である。渋谷のハチ公前と同じような意味で、伊達前で待ち合わせをするのが仙台市民の流儀だった。なお、仙台に不案内な人間に伊達政宗騎馬像で待ち合わせと伝えると、間違って青葉城址に行ってしまうこともあるので、当時は注意が必要だった。

 今となっては忘れさられたような存在だが、当時、仙台市で暮らしたことがある者にとっては、郷愁を感じる騎馬像である。岩出山城や旧有備館に寄るときには、この騎馬像も忘れずに見てほしい。

 

なぜ、芭蕉の銅像はあちこちにあるのか?

 デジカメの恩恵で気軽に写真が撮れるようになったのは嬉しいが、反面、膨大な量の写真の保存が必要となりコンピュータの容量を食うようになった。残す価値のない写真を削除するためライブラリをぼんやりと眺めていたところ、ある疑問が浮かびあがってきた。

 

 なぜ、芭蕉銅像はあちこちにあるのか?

 

 気になって仕方がなくなったので、調べてみることにした。

 

■ 私の芭蕉像コレクションより

 まず、私のライブラリにある芭蕉像を貼ってみる。

 

【山寺(山形)】

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 奥にあるのが芭蕉像(1972年建立)で、その横に山寺で作られた句を刻んだ副碑が建てられている。さらに手前が曾良像であり、おくのほそ道紀行300年を記念して1989年に建立されたものである。 

 閑さや 岩にしみ入る 蝉の声

 

飯坂温泉(福島)】

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 飯坂温泉駅前、十綱橋のたもとにある芭蕉像(1982年建立)である。近くに佐藤継信、忠信兄弟の墓がある医王寺があり、有名な次の句が詠まれている。

 笈も太刀も五月にかざれ帋幟(はたのぼり)

 

 【中尊寺岩手県)】

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 中尊寺金色堂旧覆堂脇にある芭蕉像である。この像もおくのほそ道紀行300年を記念して、1989年に建立されたものである。

 五月雨の降残してや光堂

 

 

■ 全国1、2位を争う銅像

 調べてみると、松尾芭蕉銅像数は、全国1、2位を争うものであることがわかった。

 

matome.naver.jp

 

 このサイトをみると、第1位松尾芭蕉33体、第2位坂本龍馬32体となっている。銅像 - Wikipediaにも同様の数が記載されており、参考資料として下記書籍が紹介されている。先のサイトは2014年2月25日に記事がアップされており、時期的に見て本書が種本と思われる。

日本の銅像 完全名鑑 (廣済堂ベストムック)

日本の銅像 完全名鑑 (廣済堂ベストムック)

 

 

 一方、日本の銅像探偵団〜銅像数ランキングでは、ダントツの1位である二宮金次郎1,000体以上、第2位坂本龍馬39体についで、第3位松尾芭蕉36体となっている(2015年11月10日再集計)。坂本龍馬像、松尾芭蕉像、いずれも数を伸ばしていることが注目される。なお、二宮金次郎像は石像が多いのとあくまでも推計数であることを考慮しなければならない。したがって、銅像数に限って言うと、龍馬、芭蕉は不動のツートップである。

 なお、先の書籍もこのサイトが監修協力したものであり、日本の銅像に関しては、最も信頼が置けるものである。

 

■ 街おこしの流れのなかで

 松尾芭蕉像がいつ頃から建立されるようになったかについて、はっきりと言及しているサイトを見つけることはできなかった。推測として言えるのは、次の点である。

 

(1)松尾芭蕉の顕彰は江戸時代より続く句碑建立の流れのなかにある

 江戸時代より、松尾芭蕉を顕彰する句碑は数多く建てられていた。芭蕉句碑 全国総覧を見ると、全国で芭蕉句碑は2,442基あり、100回忌である1793年までに331基作られたとある。

 さらに、下記書籍の紹介文をみると、全国の芭蕉句碑は3,230基と膨大な数になる。

石に刻まれた芭蕉―全国の芭蕉句碑・塚碑・文学碑・大全集

石に刻まれた芭蕉―全国の芭蕉句碑・塚碑・文学碑・大全集

 

 俳聖として芭蕉の名声は広く知れ渡っており、没後早い時期から全国津々浦々の俳諧愛好者から顕彰されるようになっていたことが伺われる。

 

(2)紀行文の傑作おくのほそ道は街おこしの格好の題材である

 第2次世界大戦前までは、近代銅像建立の主体は、政治家・武人が中心だった。一方、敗戦後は、ゆかりの人物を顕彰する銅像建立がブームとなり、対象も幅広くなった。

 松尾芭蕉の場合、紀行文の傑作、おくのほそ道が圧倒的影響力を持っている。特定の地域の代表だと広がりは生じないが、芭蕉の場合、旅をするなかで印象的な俳句を残したこともあり、どの地域からも郷土代表のように愛されるという稀有な存在となっている。ゆかりの地で行われた「おくのほそ道紀行300年記念事業」を見ると、対象となった1989年前後に、あちこちで銅像設立などの記念事業が行われている。「奥の細道サミット」という催しがゆかりの地で毎年行われており、最近でも、2015年に第27回サミットを開催した荒川区が、南千住駅前に松尾芭蕉像を建立しました 荒川区公式ホームページと報告している。

 

(3)銅像費用は意外に安価

 銅像を作っている会社のサイトを見ると、立像の価格は約500万円である。有名彫刻家に頼むともっとかかるとは思うが、寄付金を集めればなんとかまかなえる金額である。最近では、漫画・アニメ由来のキャラクター像があちこちに設置されるようになっている。街おこしの手段としては、費用対効果は高いようである。

 

 芭蕉像写真展示室を見ると、関東・東北中心に芭蕉像が多数ある。芭蕉像コレクターになるつもりはないが、こんなエントリーを書いてしまったからには、旅行先に芭蕉像があったら、立ち寄らずにはいられなくなりそうである。