ADL維持向上等体制加算に関する厚労省の迷走

 ADL維持向上等体制加算に関する厚労省の見解が迷走し、現場を混乱におとしいれている。

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 上記関連エントリーで、ADL維持向上等体制加算の療法士専従要件に関し、私は次のような解釈をした。

 必要があって、疾患別リハビリテーション料等を行なった場合には、ADL 維持向上等体制加算を算定しなければよいということになる。専従療法士は、疾患別リハビリテーション料等を担当する専従者との兼務はできないとなっているが、これは回復期リハビリテーション病棟の専従要件と同一である。したがって、ADL 維持向上等体制加算専従療法士は、その病棟内であれば疾患別リハビリテーション料等を算定することは可能と私は判断する。最終的には、疑義解釈で確認することになると推測する。関連エントリーでは「期待はずれ」と表現したが、上記解釈に従うならば、高度急性期・急性期医療機関で本加算が一気に普及する可能性がある。


 しかし、私の希望的観測に反し、FAQ |医療保険(平成26年度診療報酬改定:リハビリテーション関連)「PT-OT-STネット」をみると、3月15日開催日本理学療法士連盟研修会でADL 維持向上等体制加算について厚労省官僚は次のように述べている。

Q.1) ADL維持向上等体制加算における病棟専従常勤療法士が病棟内でリハビリテーションを行った場合、疾患別リハビリテーション料の算定は可能か?
A.1) 算定は出来ない

 上記情報を元に、本ブログコメント欄でも、疾患別リハビリテーション料算定は不可ではないか、という意見が寄せられた。


 ところが、上記見解は覆されてしまった。平成26年度診療報酬改定についてに、4月10日付でアップされた疑義解釈資料の送付について(その3)には、以下のように質疑応答が記載されている。

(問2) ADL維持向上等体制加算において、病棟専従の常勤理学療法士等は疾患別リハビリテーション等を担当する専従者との兼務はできないのか。


(答) できない。
 ただし、ADL維持向上等体制加算の算定を終了した当該病棟の患者に対し、引き続き疾患別リハビリテーション等を提供する場合については差し支えない。なお、理学療法士等が提供できる疾患別リハビリテーション等は1日6単位(2時間)までとする。
 また、当該病棟専従の常勤理学療法士等は、疾患別リハビリテーション料等の専従の理学療法士等として届け出ることはできない。


 注目すべきは、赤字で記載した「なお、理学療法士等が提供できる疾患別リハビリテーション等は1日6単位(2時間)までとする。」という文言である。日本理学療法士協会における見解が大幅に修正されている。しかも、具体的数値を含めた規制は通常は通知で示されるが、この規制は今回の疑義解釈が初出である。


 思うに、ADL維持向上等体制加算の点数設定があまりにも低く、かつ、疾患別リハビリテーション料を算定できないとなれば、本加算が普及しないだろうということに気づいた厚労省官僚が急遽ひねりだした規制案が「疾患別リハビリテーション料は6単位まで」という数値なのだろう。
 単純計算すると、ADL維持向上等体制加算対象者が1病棟30名おり、かつ、呼吸器リハビリテーション料を初期加算・早期加算付で1日6単位稼働日数20日算定したなら、1月あたり25×30×30+(175+75)×6×20=52,500点となる。決して高くはないが、在院日数短縮などの付加価値を考え導入を検討する病院がないとはいえない。
 それでは、地域包括ケア入院医療管理料の専従を兼ねている療法士の場合、地域包括ケア病床で行う1日2単位以上必要な疾患別リハビリテーションはどのような扱いになるのだろう。まさか、そちらも1日6単位までと制限されるのだろうか。疑問はつきない。
 私は、ADL維持向上等体制加算は普及しないと予測する。少なくとも、急性期病棟の場合、病棟専従療法士は配置するにしても疾患別リハビリテーション料をとった方がはるかに簡便で報酬も高い。療法士配置とか研修会参加とかで頭を悩ませたくはない。正直、迷走をきわめる厚労省にこれ以上お付き合いするのはご免という気分になっている。