都市部における低所得高齢者の実態
NHKスペシャルを見た。これまで、関連エントリーで、都市部の高齢者増問題、要介護状態比率、高齢者向け住まいの問題をとりあげてきた。今回は、低所得高齢者の実態をとりあげる。
【関連エントリー】
- 都市部の急速な高齢者増が深刻な問題に(2013年1月1日)
- 都市部の急速な高齢者増が深刻な問題に(各地方版)(2013年1月13日)
- 高齢者のうち日常生活活動に影響ある者は約2割(2013年1月16日)
- 高齢者向け住宅の数値目標と「サービス付き高齢者向け住宅」登録制度(2012年5月8日)
NHKスペシャルでは、都市部在住の低所得高齢者が要介護状態となった時、終の住処を失い、短期入所、サービス付高齢者住宅、NPO法人が運営する住まいなどを漂流する様子が描かれていた。
超高齢社会を迎え、ひとり暮らしの高齢者(単身世帯)は、今年500万人を突破。「住まい」を追われ、“死に場所”を求めて漂流する高齢者があふれ出す異常事態が、すでに起き始めている。
都市部の高齢者増は、今後深刻さを増す。第1回介護施設等の在り方委員会 H18.9.27 資料4 今後の高齢化の進展 ~2025年の超高齢社会像~に次の表がある。
関東地方の高齢者増を以下に示す。
高齢化率は、20%未満■(青)、20〜25%■(緑)、25〜30%■(黄)、30〜35%■(橙)、35〜40%■(赤)、40%以上■(黒)と色分けし、図示した。
東京都心部では、2025年になっても、まだ、高齢化率が20〜25%に抑えられている。しかし、高齢者増(2010年-2025年)の数値を見ると、都市部ほど高齢者増が顕著であることが示されている。増加数を、減少■(青)、0〜2,499人■(水色)、2,500〜9,999人■(緑)、1万〜2万4,999人■(黄)、2万5,000〜9万9,999人■(橙)、10万人以上■(赤)と色分けし、示した。
高齢者のうち日常生活活動に影響ある者は約2割、日常生活活動(ADL)に支障がある者は約1割というおおまかな比率を考えた時、東京都心部の各二次医療圏で今後数万人単位の要介護高齢者が生まれることになる。第1章 第2節 高齢者の姿と取り巻く環境の現状と動向|平成24年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府を見ると、2010年段階で、65歳以上の高齢者のいる世帯の24.2%が単独世帯、29.9%が夫婦2人暮らしと介護力に乏しい状況となっている。今後の高齢者増を考えると、介護付住まい確保の課題が一層深刻となる。
「老人漂流社会」では、確か40%以上が年金100万円以下と述べていた。第1章 第2節 2 (2)高齢者世帯は、世帯人員一人当たりの年間所得が全世帯平均と大きな差はない|平成24年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府を見ると、次のような記載がある。
高齢者世帯(65歳以上の人のみで構成するか、又はこれに18歳未満の未婚の人が加わった世帯)の年間所得(平成21(2009)年の平均所得)は307.9万円となっており、全世帯平均(549.6万円)の半分強であるが、世帯人員一人当たりでみると、高齢者世帯の平均世帯人員が少ないことから、197.9万円となり、全世帯平均(207.3万円)との間に大きな差はみられなくなる。
また、高齢者世帯の所得を種類別にみると、「公的年金・恩給」が216.2万円(総所得の70.2%)で最も多く、次いで「稼働所得」53.2万円(同17.3%)となっている。
高齢者は他の世代と比べ、所得に差がないような印象を受ける。しかし、公的年金加入者等の所得に関する実態調査の結果について |報道発表資料|厚生労働省の中にある公的年金加入者等の所得調査に関する実態調査結果の概要について(PDF:381KB)の12〜13ページにある老齢年金受給者の年収分布をみると、実態は異なることがわかる。
年収階級別老齢年金受給者数の分布をみると、「50 万円超 100 万円以下」が 25.1%、「50 万円以下」が 16.5%となっている。また、男女別にみると、男性の場合、「250 万円超 300 万円以下」が 14.9%で最も多く、次いで「200 万円超 250 万円以下」、「300 万円超 350 万 円以下」の順となっている。女性の場合、「50 万円超 100 万円以下」が 38.3%で最も多く、 次いで「50 万円以下」、「100 万円超 150 万円以下」の順となっており、150 万円以下の者が8割を超えている。
老齢年金受給者における1人当たり平均年収は 189 万円となっており、これを男女別にみると、男性の1人当たり平均年収は 290 万円、女性の1人当たり平均年収は 103 万円となっている。
就業形態別に年収階級別老齢年金受給者数の分布をみると、「非就業者」では「50 万円超100 万円以下」が最も多く、次いで「50 万円以下」、「100 万円超 150 万円以下」の順となっており、150 万円以下の者が6割を超えている。
(中略)
さらに、老齢年金受給者における1人当たり平均年収をみると、「非就業者」が 150 万円、「会社員・公務員」が 479 万円、「自営業主」が 229 万円となっている。
老齢年金受給者の41.6%が年収100万円以下、さらに、年金を主な生活の糧としている非就業者だと48.6%が年収100万円以下である。年収150万円以下まで含めると63.1%となる。性別でみると女性がより低収入である。正規分布していないデータの場合、一部の高額所得者がいるだけで、平均値は上がる。高齢社会白書の数値は平均値で示したため、低所得層の実態が分かりにくくなっている。
都市部は生活費が高い。番組で紹介された3畳一間で介護サービスがついていないNPO法人の施設でも、毎月14万円以上の費用となっていた。到底、年金だけでまかなえる水準ではない。今後10数年で加速する東京都市圏の高齢者増において、低所得者高齢者向け住宅を如何に整備していくかが重要な課題となっているが、具体化の動きはこれからのように思える。