MCI(Mild Cognitive Impairment)スクリーニングテスト

 日本リハビリテーション医学会東北地方会で、岩手医科大学神経内科・老年内科准教授高橋智先生の講演「認知症の早期発見とBPSDへの対応」を聞いた。臨床ですぐにでも利用できる内容で有意義な講演だった。
 特に興味深かったのは、MCI(Mild Cognitive Impairment、軽度認知障害と訳される)に対する早期介入を目指したスクリーニングテストの話だった。ネット上で調べてみたところ、岩手医科大学報 2006・10 vol382が見つかった。15ページに高橋智先生の「MCIと介護予防」という文章が載っている。

『最近のニュースではどんなことがありましたか?』では、介護予防の対象となるMCIや軽症認知症のお年寄りの多くをスクリーニングすることができます。おじいちゃん、おばあちゃん、ご両親にお聞きして、あるいはご自身が「最近のニュース」が何も出てこないとき、神経内科を受診してみませんか?


 正常の認知機能の場合、『最近のニュースではどんなことがありましたか?』では、皆が話題にするようなニュースを同じように回答する。例えば、仙台のお年寄りなら、「楽天イーグルスは残念でしたね。野村監督ごくろうさまでした。」というふうに答える。また、時間が経つと、回答内容も変わってくる。1〜2ヶ月前なら、「総選挙で政権交代が起きました。」とか、「のりピーはどうしちゃったんですかね。」という返事が返ってくる。
 一方、認知症では、ほぼ100%が異常となる。具体的には、「わからない。」とか、不正確ないし古い内容を答える。「あまりニュースを見ませんから。」といった取り繕い反応も問題となる。その上で、見当識などについてチェックをしていくという流れになる。


 本講演を聞いた後の新幹線内でのリハビリテーション医同士の会話は次のようなものだった。
 「最近のニュースで何か興味あるものありましたか?」
 「忙しくて、ニュースをほとんど見ませんから、特に…。」


 認知症の勉強をしたばかりのリハビリテーション医に対しては、最近のニュースに関する質問は役に立たないことが分かった。