「国内発生早期」段階における社会生活上の制限

 新型インフルエンザが「国内発生早期」段階に入ったことを受け、厚労省は矢継ぎ早に新たな対策を打ち出している。厚生労働省:「基本的対処方針」の実施についてより、「2.社会生活上の取組みについて」を紹介する。

2.社会生活上の取組みについて
以下の各項目については十分に留意し、適切な対応をとるよう、政府は関係者・国民に周知徹底するべきである。


○ マスクの着用等
→ 個人における感染防止策の徹底は極めて重要であり、引き続き手洗い、人混みでのマスク着用、咳エチケットの徹底、うがい等を行う。
※屋外等の解放空間においては、相当な人混みでない限りマスクを着用する意味はない。電車やバスの中等の換気が悪く閉鎖的な空間の中ではマスクを着用することで周囲の人の咳やくしゃみによる飛沫を防ぐ意味がある。また、他の人への咳エチケットとしてマスクを着用することが望ましい。


○ 外出
→ 現時点では一律に外出を控えなくてもよい。個人は、人混みはなるべく避けることなどに引き続き注意する。


○ 通勤・通学
→ 現時点では一律の時差通勤等をしなくてよい。個人は、通学も含め、なるべくラッシュ時を避けるなど、感染機会を減らす努力を行う。また、事業者・学校は、時差通勤・通学を容認するなど、通勤・通学に際して従業員・生徒の感染機会が減るように工夫する。


○ 集会、スポーツ大会等
→ 現時点では一律の自粛は要請しない。主催者は、当該イベントの趣旨・必要性等を勘案し、総合的に判断すること。


○ 学校・保育施設等
→ 患者が学校・保育施設等に通う生徒・児童等の場合、その地域(市町村の一部又は全域、場合によっては都道府県全域)の学校等については臨時休業することを原則とする。ただし、大学については、一律の休業を要請せず、各大学において感染が拡大しないように努める。
一方、患者が学校・保育施設等に通う生徒・児童等でない場合、2次感染患者が発生し、さらに感染拡大のおそれがある場合には、同様に臨時休業を行う。
また、臨時休業の終了時期については、新型インフルエンザの発生状況に応じ、1週間ごとに検討を行う。


保育施設の休業に際しては、保育所に子供を通わせている従業員の勤務について、事業所は配慮する。
○ 事業者
→ 現時点では一律の事業の縮小については要請しない。事業者は、事業を適切に継続できるようにするとともに、感染ができる限り拡大しない事業運営を行うこととすべきである。


 新型インフルエンザに対する社会福祉施設等の対応について(PDF:170KB)をみると、職員の時差出勤が勧められるとともに、次のような対策も求められている。

 高齢者介護施設のうち短期入所、通所施設等において、手引きでは、「新型 インフルエンザ患者及び患者と接触した者が関係する短期入所、通所施設等の 臨時休業(利用の休止)」が求められています。


 大都市圏では通勤時、乗客が全てマスクをつけることを求められる。今回の場合、神戸市をはじめ関西圏の通勤風景が一変することになる。
 学校や保育園は原則として臨時休業となる。介護事業者も職員の時差出勤を促すなどの対策を求められる。もし、職員や利用者に患者が発生した場合には、事業を休止することになる。医療機関の場合は、さすがに休業することは要請されていない。


 「国内発生早期」では社会生活上の制限がかなり強められる。現実的とは思えない項目もある。都市部では時差出勤したとしても、ラッシュは緩和できるほど甘くはない。新型インフルエンザ患者が通勤列車内にいた場合には、感染の可能性は飛行機内の比ではない。また、保育園を長期に休業した場合、子供を預けている親たちは仕事に出ることはできなくなる。
 国内発生した場合には感染拡大は避けられないと、新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委員会は考えている。本文書にも、第3段階(まん延期)の医療のことが触れられている。
 幸いなことに、北半球ではインフルエンザの流行時期は終わっている。ワクチンの製造、医療体制の整備などに使える時間は残されている。楽観視してはいけないが、悲観する状況でもない。冷静に着実に準備をしていくことが関係者に求められている。