ブログ開設6ヶ月目

 「リハ医の独白」を開設し、6ヶ月が経った。最低でも、日本リハビリテーション医学会が終わるまでは、毎日更新しようと開始時に誓ったが、なんとか目標を達成することができた。
 ブログを書くこと自体初めての経験だった。記事の引用、写真・図表の張り付けなど独特の記法が分からず、はてなヘルプをたびたび参考にしながら、一つのエントリーを仕上げるのに四苦八苦していた。現在は大分慣れ、配信記事の紹介程度なら、5分くらいで仕上げられる。自分でも上達したものだと思っている。


 一番最初の記念すべきエントリーは、自己紹介にかえて 成果主義の危険性(2007年12月9日)である。読み直すと、当時抱いていた危機感をあらためて思い出す。本ブログの趣旨をご理解していただくために、一部を引用する。

 介護保険制度創設、回復期リハビリテーション病棟導入が2000年度に行われて以降、リハビリテーションは毎年のように制度改変の嵐にさらされている。特に、2006年度診療報酬・介護報酬同時改定の影響は甚大だった。
 疾患別リハビリテーション料への再編と算定日数上限設定は社会問題ともなった。署名活動が行われ、今年4月に異例の診療報酬改定が行われた。しかし、残念なことに、メディアの報道と異なり、リハビリテーション医療は一層受けにくいものとなった。財政均衡の名の下にリハビリテーション料の逓減制が導入された。また、算定日数上限を超えてリハビリテーションを行う場合、効果に関する詳細なレセプトコメントを求められるようになった。
 リハビリテーション医療はまだ発展途上である。急性期から回復期、そして維持期にいたるまでの間、十分なリハビリテーションサービスをどこの地域に住んでいても受けることができるという状況にはなっていない。逆に、経営的に成り立たず、リハビリテーション医療から撤退する医療機関も少なからず出てきている。
 厚生労働省管轄の高齢者リハビリテーション研究会は、2004年1月に「高齢者リハビリテーションのあるべき方向」という報告書をまとめた。この中に、「長期間にわたって効果が明らかでないリハビリテーション医療が行われている場合がある」という記載がある。この研究会自体は良心的であり、リハビリテーション医療の改善を真摯に願っているという印象を持つ。しかし、効果がないリハビリテーション医療は行うべきではないという内容が一人歩きをし、さらに医療費抑制政策と結びつくと、リハビリテーション医療制限という大問題を生じる。
 そもそも、リハビリテーションにおける効果とはいったい何だろう。最も重要なものはADLの改善だろう。2006年度診療報酬改定後、Barthel Index(BI)かFIMの使用が半ば義務づけられている。BIかFIMが一定数値以上改善しないと効果がないと判定されることになるのではないか。しかし、BIやFIMに限界があることは、リハビリテーション医療関係者は皆知っている。例えば、経鼻経管栄養の患者が、介助ながら経口摂取できるようになるということは重要な成果だが、ADL指標では1点も変化しない。また、入院時既に基本的ADLが自立している患者が、屋外移動や公共交通機関利用、家事動作が自立したとしても、これらは手段的ADL項目に属するため、BIやFIMは変化しない。上肢機能や言語機能などの機能障害は、別の評価方法が適切である。
 診療報酬上の優遇を得ようとして、訓練効果が上がりそうな患者ばかりを回復期リハビリテーション病棟が集め始めると、切り捨てられる患者が当然出てくる。回復期リハビリテーション病棟への成果主義導入は、新たな医療制限をもたらすおそれがある。


 残念ながら、2008年度診療報酬改定は、リハビリテーション医療の変質を促すものとなってしまった。学会レベルで明確な反対の意思表示がされていないことも悲しい。一方、澤田石先生の行政訴訟(参照:厚労省が推進する棄民政策=「行政安楽死・大量殺人・障害固定計画」の芽を摘み取ろう)といった勇気ある取組みも始まっている。
 現在、診療報酬改定前後のドタバタも終わり、小康状態となっているところである。多くの医療機関では、回復期リハビリテーション病棟入院料I+重症患者回復病棟加算(1,740点)を算定するために、血眼になっている最中だろう。自宅退院できない患者や、回復困難な重症者の切り捨てが危惧される。
 さらに、水面下では来年度の介護報酬改定に向けた準備が進行している。通所リハビリテーションや訪問リハビリテーションに関する重大な改定が行われるという未確認情報もある。
 本格的な高齢社会を迎えリハビリテーションや介護事業に対する需要が高まっている。その一方、両者とも社会保障費抑制のターゲットになっている。リハビリテーション医療に対して行われた「成果主義」導入は、他の医療分野、社会保障分野、教育行政などに波及する可能性がある。


 地道に更新し続けてきたこともあり、Googleで「回復期リハビリ病棟」を検索すると、全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会に次いで、中医協「回復期リハビリテーション病棟に対する成果主義導入」論議が2番目にヒットするようになっている。その他、日常生活機能評価で2番目、看護必要度で16番目のGoogle検索結果となっている。厚労省の情報操作に対し、専門家として的確に反応してきた成果であると自負している。同時に、この間、多くの方に訪問していただいた結果*1であり、感謝申し上げたい。


 正直言って、ブログ初心者にも関わらず、ここまでご支持いただけるとは思わなかった。「リハ医の独白」の果たして来た役割は決して小さくはないという自信につながっている。今後も更新頻度を落とすことなく、ブログを続けていくことを誓いたい。

*1:はてなカウンターを設置したのは2月16日である。総アクセス数は約11万3,000であり、1日あたり平均980となっている。最高アクセス数は1,758(3月24日、3月31日)である。