給付と負担の連動を狙った制度

 朝日新聞後期高齢者医療 8都府県、負担軽減へ追加公費、より。

後期高齢者医療 8都府県、負担軽減へ追加公費


2008年04月15日


 4月から始まった75歳以上が対象の「後期高齢者医療制度」(通称・長寿医療制度)で、8都道府県が税を財源とする公費で追加補助をしていたことが、朝日新聞の調べで分かった。このうち東京、京都、石川、三重の4都府県が、加入者が払う保険料を引き下げていた。東京では平均的な年金受給者1人当たりで約1割軽減された。


 保険料は、一部の人を除いて15日支給の年金から天引きされる。都道府県ごとに設置された広域連合が運営主体。75歳以上の医療費(窓口負担を除く)や健康診断、葬祭費など支出全体の1割を加入者の保険料で賄う仕組みだ。保険料の全国平均は年額約7万2千円。


 厚生労働省は昨年12月に、各都道府県の保険料額を公表。4都府県のうち、東京、京都、石川はこの後に保険料引き下げを決めている。約113万人が加入する東京都の広域連合は2月、都から新たに約17億円の補助金を得られることになり、年金収入208万円までの約9万1千人の保険料を引き下げた。


 この結果、平均的な年金受給者(厚生年金201万円)の保険料が、昨年時点の6万1700円から5万3800円へと8千円近く下がった。


 約27万人加入の京都でも3月に府が約7900万円の助成を決め、1人当たり230円引き下げ。約14万人加入の石川は県の補助金約6500万円で431円引き下げた。


 三重は4405万円の県費が投入され、昨年発表の保険料に織り込み済みだ。


 このほか、岐阜(7200万円)、北海道(3500万円)、福井(3100万円)、奈良(1千万円)も保険料引き下げを目指して公費投入を決定。広域連合が保険料に反映させる方向で検討中だ。


 地域ごとの医療費と負担を連動させるのが新しい制度の目的だ。東京の1人当たりの老人医療費(05年度)は、最も少ない長野より14万7千円高いが、今回の公費投入で保険料負担では全国最低となり、スタート時から制度の理念が揺らぐ事態となっている。


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 〈後期高齢者医療制度〉 75歳以上が加入する独立した医療制度。経済財政諮問会議の民間議員の医療への公的給付抑制を求める声を背景に、05年12月に政府・与党がまとめた医療制度改革案に盛り込まれた。入院期間が長いといった理由で老人医療費が高い都道府県ほど、そこに住む高齢者の保険料が高くなるのが原則。給付と負担の連動が見えやすい仕組みを利用し、地域ごとに医療費増大を抑制させるのが狙いだ。対象者は約1300万人で、保険料は2年ごとに見直す。


 朝日新聞の記事内には、都道府県別の保険料と1人あたり老人医療費という表がある。1人あたり老人医療費が高い県では、後期高齢者保険料が増えるという図式がよく分かる。1人あたり老人医療費が最も高い福岡県と逆に最も低い長野県を表にして示す。

年金201万円の保険料 1人あたり老人医療費
福岡県   85,100円   1,019,650円
長野県   59,900円    672,853円

 1人あたり老人医療費は1.52倍、年金201万円の保険料では1.42倍となっている。


 東京都の対応を再掲する。

 約113万人が加入する東京都の広域連合は2月、都から新たに約17億円の補助金を得られることになり、年金収入208万円までの約9万1千人の保険料を引き下げた。
 この結果、平均的な年金受給者(厚生年金201万円)の保険料が、昨年時点の6万1700円から5万3800円へと8千円近く下がった。


 今回、高齢者の増大に伴い、後期高齢者にかかる医療費は増える。それにつれ、保険料はうなぎ上りに上昇する。後期高齢者というリスクの高い集団を別にして、給付と負担の連動をはかると、受診抑制が生じる。後期高齢者医療制度は、このような仕組みを通じて、公的医療費を抑制しようとしている。