中医協08改定骨子まとまる

 CBニュース診療所の再診料引き下げ、また紛糾(2008年1月18日)と、中医協、08年改定の骨子案を了承(2008年1月18日)という記事に、中医協での論議の様子が描写されている。

 この日、厚労省は前回の同委員会で委員から指摘された事項を提示。
 (1)NICU(新生児特定集中治療室)の重点評価の内容、(2)診療所の再診料の引き下げ、(3)医療秘書(メディカルクラーク)の具体的な要件、(4)明細書の発行に伴う実費徴収、(5)外来管理加算の要件への時間の目安の導入、(6)4時間以上の人工透析の評価、(7)療養病棟入院基本料の全体的な引き下げ、(8)7対1入院基本料の新しい要件、(9)転換型老健施設の医師のオンコール体制、(10)歯科における医療安全体制の評価、(11)認知症患者の受け皿不足、(12)医療安全対策管理加算の専従要件、(13)デジタル映像化処理加算の廃止、(14)後発医薬品の調剤率30%以上の要件、(15)ニコチン管理料の見直し、(16)後期高齢者医療制度における診療所の初・再診料ーーの16項目について議論した。


 この16項目の中で意見がまとまらなかったのは、▽診療所の再診料の引き下げ、▽外来管理加算の要件に時間の目安を設けること、▽療養病棟入院基本料の全体的な引き下げ、▽デジタル映像化処理加算の廃止、▽後期高齢者医療制度における診療所の初・再診料ーーの5項目で、両論併記のまま骨子案を取りまとめた。


 意見がまとまらなかった5項目について、次のような議論が紹介されている。

▽ 診療所の再診料引下げ

 質疑では、前回と同様に診療所の再診料の引き下げが大きな議論となった。診療所の再診料は現在71点(710円)で、200床未満の病院の57点(570円)よりも14点(140円)高い。
 支払い側の対馬忠明委員(健康保険組合連合会専務理事)は「健保連も約750億から1千億円の負担を求められ、大量の血を流している。勤務医の負担を軽減するため、もう少し血を流してほしい。勇断、英断を」と診療側委員(日本医師会)の理解を求めた。


 しかし、竹嶋康弘委員(日本医師会副会長)の代理で出席した同会常任理事の天本宏氏が「診療所の経営も厳しい環境にある」と反発。鈴木満委員(日本医師会常任理事)は「健保連の負担に感謝しなければいけない」としながらも、「再診料の引き下げは医師の技術料をカットすることだ」と反対した。
 これに対して、支払い側の丸山誠委員(日経連医療改革部会長代理)は「病院と診療所で医師の技術料に差があるのか。勤務医の負担軽減策の1つに再診料の引き下げがある。勤務医対策の1つの原資として、再診料の引き下げを除外すべきではない」と反論し、意見はまとまらなかった。


▽ 外来管理加算の要件に時間の目安を設けること

 外来管理加算は「5分以上という意見があった一方、外来管理加算は無形の技術に対する評価であり、時間のみで算定について判断すべきではない」とした。


▽ 療養病棟入院基本料の全体的な引き下げ

 また「療養病棟入院基本料」については、点数引き下げを示唆。一方で、日本医師会が是正を強く求めていた「医療区分1・ADL区分3」の点数設定について配慮する方針も盛り込んだ。


▽ デジタル映像化処理加算の廃止

 厚労省が廃止を提案する「デジタル映像化処理加算」(1回60〜72点)でも、画像のデジタル化処理の推進という役割を終えたため「廃止するべき」という意見と、存続を求める意見を併記。


後期高齢者医療制度における診療所の初・再診料

 また後期高齢者医療についても、「初診時に既往歴などを確認する必要があるため、初診料を引き上げて再診料を下げる」「よりていねいに再診が行われているので、再診料を引き上げる」という2つの意見を並べた。


 上記5項目だけが両論併記されたとなると、他の重要案件は厚労省の目論見どおり通ったということになる。


 CBニュースはまだまともな扱いだが、新聞・TVをみると、日医は「抵抗勢力」として報道されている。完全な悪玉扱いである。厚労省の書いたシナリオにうまく乗せられたようだ。
 確かに、日医は会員の多数を占める開業医に顔を向けた行動をとっている。再重要案件である後期高齢者制度に関しても、初診料・再診料という枝葉末節の部分にこだわっている。75歳という年齢を境に医療機関へのアクセスが制限されるという制度に対し、論陣をはっていない。このままでは、いくら日医が医療崩壊を阻止すると発言したとしても、自らの利益誘導としか捉えられないだろう。