地域包括ケア病棟入院料(管理料)に係る見直し

 2020年度診療報酬改定における地域包括ケア病棟入院料(管理料)に係る見直し中、リハビリテーションに関する部分の概要を確認する。

 

 第2.改定の概要2,令和2年度診療報酬改定説明資料等について内にある、01 令和2年度診療報酬改定の概要(全体版)【7331KB】をクリックすると、PDF資料がある。

 地域包括ケア病棟入院料(管理料)に関する資料は、165〜168ページにある。 

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  1枚目の図のなかに、「疾患別リハビリテーションの提供について、患者の入棟時に測定したADLスコア等の結果を参考にリハビリテーションの必要性を判断することを要件とする。」という文章がある。

 一方、2枚目の図では、「患者の入棟時に測定したADLスコア等の結果を参考にリハビリテーションの必要性を判断・説明・記録すること」となっている。どちらが正確なのかが、これだけではわからない。

 令和2年度診療報酬改定資料、01(医科)診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について【3,081KB】 の98〜100ページと、04基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて【1,205KB】の164〜171ページに地域包括ケア病棟入院料(管理料)に関する資料がある。後者の方にリハビリテーション提供に関する記述がある。

 

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 この記載で明らかなように、単にリハビリテーションの必要性を判断するだけではなく、患者又は家族に説明し、記録に残すことが求められる。リハビリテーションを行う場合には、実施計画書のサインをいただく際にご説明等をすれば良いが、行わない場合にも説明が求められる。

 リハビリテーションを実施しないと判断した場合の説明内容は下記のようなものが考えられる。

 

 地域包括ケア病棟の運用をするうえで、リハビリテーション医療の視点は不可欠である。逆に言うと、リハビリテーション料が包括であることや療法士数が少ないといった医療機関側の都合で、適応がある患者にリハビリテーションを実施しないことは、今後問題視されるということを肝に銘じる必要がある。

 

2020年度回復期リハビリテーション病棟入院料見直しの詳細

 2020年度診療報酬改定の詳細が明らかになった。

 

 第2.改定の概要2,令和2年度診療報酬改定説明資料等について内にある、01 令和2年度診療報酬改定の概要(全体版)【7331KB】をクリックすると、PDF資料がある。

 回復期リハビリテーション病棟入院料に関する資料は、169〜172ページにある。

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 中身はともかく、かわいいフリー素材集 いらすとやの資料が多数使用されているのが気になる。基本的には無料ということでよく見かけるイラストだが、「素材を21点以上使った商用デザイン」の場合は有償となる。厚労省のような公的機関だと無料で使えるのかもしれないが、あまり多用するのはいらすとやの宣伝を政府がしているようで望ましくないと感じる。

 本題に戻る。前エントリーでも、回復期リハビリテーション病棟入院料改定についてまとめている。

 

 その時、主な改定内容は以下のとおりと紹介した。

  1. 回復期リハビリテーション病棟入院料1及び回復期リハビリテーション病棟入院料3におけるリハビリテーション実績指数の要件について、それぞれ水準を引き上げる。
  2. 回復期リハビリテーション病棟に入院した患者に対して、入院時FIM及び目標とするFIMについて、リハビリテーション実施計画書を用いて説明し、計画書を交付することとする。また、退院時FIMについても同様の取扱いとする。
  3. 入院患者に係る要件から、発症からの期間に係る事項を削除する。
  4. 回復期リハビリテーション病棟入院料における重症者の定義に、日常生活機能評価に代えてFIM総得点を用いてもよいものとする。
  5. 回復期リハビリテーション病棟入院料1の施設基準である、「当該病棟に専任の常勤管理栄養士が1名以上配置されていることが望ましい」とされているものを専任配置に変更する。
  6. 回復期リハビリテーション病棟入院料2~6について、現状、管理栄養士の配置規定はないが、施設基準に「当該病棟に専任の常勤管理栄養士が1名以上配置されていることが望ましい」旨を追加するとともに、栄養管理に係る要件を設ける。

 

 最大の焦点だった実績指数に関しては、回復期リハビリテーション病棟入院料1で37→40に、同入院料3で30→35となった。当初予想していたよりは低めの水準となった。その他に関しても予想どおりの改定内容だが、重症定義にFIM総得点を使用可能という部分に関しては詳細は不明と指摘していた。そのうえで、重症定義としてFIM総得点30点台前半が設定され、重症改善基準は25点程度ではないかと予測した。

 結論から言うと、3枚目の図の欄外に小さく記載されているように、実際に設定された重症基準は、FIM総得点55点以下となった。また、重症改善基準は、入院料1、2でFIM総得点16点以上、入院料3、4で12点以上となっている。予測よりかなり緩い基準となった。日常生活機能評価よりFIMの方が細かな変化を反映できることを考えると、重症定義にFIM総得点の方を用いる医療機関が増えるのではないかと予想する。

 なお、令和2年度診療報酬改定資料、01(医科)診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について【3,081KB】 の94〜98ページと、04基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて【1,205KB】の157〜164ページに回復期病棟に関する資料がある。改定内容が赤字で記載されており、わかりやすい。

 地域連携診療計画加算を算定する患者の場合に関しては、最初の資料の方に下記記載がある。

 

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 この文章で注目すべきは、「原則として」という文言がわざわざ付け加えられたことである。急性期病院で日常生活機能評価を用いているが、回復期リハビリテーション病棟で重症者定義としてFIMを用いる場合、両者の評価が異なることになる。この場合の対応として、「原則として」という文言が入ったのではないかと推測する。いずれにせよ、疑義解釈待ちとなる。

 

 回復期リハビリテーション病棟入院料の施設基準に係る届出に用いられる、別添7の様式9、 様式 20、様式 49 から様式 49 の7(様式 49 の4を除く。)および日常生活機能評価届出に用いられる様式 49 の4ほかの届出書類に関しては、令和2年度診療報酬改定についての【省令、告示】(それらに関連する通知、事務連絡を含む。)(3)2 基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(通知)  PDF にある。

 

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 届出書類のうち、様式49の4に関しては、重症者定義が「入院時に日常生活機能評価が10点以上又はFIM総得点が55点以下の重症患者の数」と変更されている。しかし、他の様式、例えば、様式49の2に関しては、「入院時の日常生活機能評価が10点以上であった患者数」のままとなっている。おそらく、厚労省の単純ミスであり、すぐに修正されると予想する。

 

2020年度診療報酬改定答申における回復期リハビリテーション病棟入院料の見直し

 2020年度診療報酬改定答申が出た。

 回復期リハ病棟入院料の見直しは、総-1(PDF:1,619KB)の332〜337ページにまとめられている。

 主な改定内容は以下のとおりである。

  1. 回復期リハビリテーション病棟入院料1及び回復期リハビリテーション病棟入院料3におけるリハビリテーション実績指数の要件について、それぞれ水準を引き上げる。
  2. 回復期リハビリテーション病棟に入院した患者に対して、入院時FIM及び目標とするFIMについて、リハビリテーション実施計画書を用いて説明し、計画書を交付することとする。また、退院時FIMについても同様の取扱いとする。
  3. 入院患者に係る要件から、発症からの期間に係る事項を削除する。
  4. 回復期リハビリテーション病棟入院料における重症者の定義に、日常生活機能評価に代えてFIM総得点を用いてもよいものとする。
  5. 回復期リハビリテーション病棟入院料1の施設基準である、「当該病棟に専任の常勤管理栄養士が1名以上配置されていることが望ましい」とされているものを専任配置に変更する。
  6. 回復期リハビリテーション病棟入院料2~6について、現状、管理栄養士の配置規定はないが、施設基準に「当該病棟に専任の常勤管理栄養士が1名以上配置されていることが望ましい」旨を追加するとともに、栄養管理に係る要件を設ける。

 

 1.実績指数、3.発症からの期間に係る要件に関する中医協議論については、本ブログで昨年12月時点にまとめた。

 今回の答申では、回復期リハビリテーション病棟入院料1で37→40に、同入院料3で30→35となっている。当初予想していたよりは低めの水準となった。

 発症からの要件廃止に関しては、期限切れのため回復期リハビリテーション病棟に入棟できなかった患者にとっては朗報となる。

  5.および6.の栄養士配置基準の変更は、リハビリテーション栄養の普及を目指したものであり、歓迎すべき内容である。

  ここまでは、中医協の論点より予想できたものばかりである。

 

 一方、2.リハビリテーション実施計画書を用いたFIM説明の強化と4.重症者定義にFIM総得点を使用可能という改定内容は予想外だった。あらためて、中医協資料を調べてみると、中央社会保険医療協議会 (中央社会保険医療協議会診療報酬調査専門組織(入院医療等の調査・評価分科会))|厚生労働省 第11回(同年10月30日)の入-1(PDF:322KB)に次のようにまとめられていた。

  • 入棟時と退棟時のFIMの推移をみると、入棟時の値は平成28年度以降やや低下傾向にあり、退棟時の値はほぼ横ばいから微増傾向であった。また、FIM 得点の変化の推移をみると、平成 28 年度以降増加傾向となっていた。この関係性は、入院料ごとにみても、同様の傾向であった。
  • 入棟時FIMと発症から入棟までの日数の関係を経年的にみると、発症から入棟までの日数によらず、入棟時 FIM が低下傾向であり、他方、入棟時 FIM と FIM 得点の変化の関係を経年的にみると、入棟時 FIM の値によらず、FIM 得点の変化が増加傾向であった。これらの関係性は、疾患区分ごと又は入院料ごとにみても、同様の傾向であった。
  • 入棟時・退棟時FIM及びFIM得点の変化と、入棟時・退棟時日常生活機能評価及び日常生活機能評価の変化との関係については、平均値及び中央値に着目した場合、一定程度、相関関係が見られた。
  • これらの結果を踏まえ、FIM得点の経年的な変化については、FIM測定の精度の担保等を含め、適切な運用を促す仕組みが必要ではないかという意見があった。

 

 入-1参考(PDF:14973KB)の157〜187ページに回復期リハビリテーション病棟に関する資料がまとまっている。

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 本図は、回復期リハビリテーション病棟協会の調査に基づいている。実績指数導入に伴って入棟時FIMが明らかに低下しているが、発症から入棟までの日数の低下が原因の一つと判断されている。ただし、「適切な運用を促す仕組みが必要」となり、退院時にもリハビリテーション実施計画書を用い、FIMの説明をすることになったのだろうと推測する。

 

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 FIMと日常生活機能評価との関係に関しても、回復期リハビリテーション病棟協会の調査が使用されている。確かに、入棟時・退棟時FIM及びFIM得点の変化と、入棟時・退棟時日常生活機能評価及び日常生活機能評価の変化との関係については、平均値及び中央値に着目すると、一定程度の相関関係があるように見える。ただし、FIM運動項目を用いた散布図の方を見るとバラつきが多いこともわかる。さすがに入棟時日常生活機能評価19点にも関わらず、FIM運動項目90点というのはありえないだろうとツッコミを入れたくなる。入棟時日常生活機能評価の度数分布を見ても、重症と判断される10点が突出して多く、9点が極端に少ない。何らかの操作がされていると疑われても仕方がない。

 中医協答申資料を見ても、FIM総得点を用いた場合、何点が重症の基準となるかはわからない。重症者改善の基準も不明である。グラフから読みとる限りでは、日常生活機能評価での重症基準10点に相当するのは、FIMでは30点台前半となる。また、日常生活機能評価10点のFIM利得はおおよそ25点となっている。おそらく、このあたりで基準が設定されるのではないかと予想する。


<追記> 2020年3月7日

 FIM総得点を用いた重症定義の予測がはずれた。紹介した資料をよく見ると縦軸にFIMと記載されているが、目盛の上限が90点となっており、FIM総得点ではなく運動項目だったことに気づいた。FIM運動項目で30点台前半なら、認知項目とあわせて総得点55点以下を基準としても矛盾しない。

認知症が脳血管障害を抜いて要介護原因の第1位に

 厚労省が行っている主要統計調査のひとつに、国民生活基礎調査|厚生労働省がある。国民生活基礎調査では3年に1回大規模調査が行なわれるが、その中で介護の状況についての調査が必ず実施されている。

 グラフでみる世帯の状況の平成25年調査結果平成28年調査結果 を比べてみると、要介護別にみた介護が必要となった主な原因の構成割合順位に変動があったことがわかる。

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 平成25年(2013年)調査では、第1位脳血管疾患18.5%、第2位認知症15.8%となっている。

 

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 一方、平成28年(2016年)調査では、第1位認知症18.0%、第2位脳血管疾患16.6%と逆転している。

 平成13年(2001年)以降の大規模調査をもとに、介護が必要となった主な原因の構成割合推移をグラフにまとめた。

 

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 脳血管疾患割合が一貫して低下している一方、認知症は調査ごとに比率を増していることがわかる。高齢による衰弱、骨折・転倒、関節疾患は調査ごとに順位の変動はあるもののほぼ同じような比率となっている。

 

 平成13年(2001年)以降、国民生活基礎調査における介護が必要となった者とは、要介護認定を受けている者という定義となっている。

 平成29年度 介護保険事業状況報告(年報) | 厚生労働省をみると、要介護(要支援)認定者数は年度を経ることに増加している。

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 要介護(要支援)認定者数に、要介護別にみた介護が必要となった主な原因の構成割合を乗じ、以下のようなグラフを作成した。

 

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 脳血管疾患がほぼ横ばいとなっているのに対し、認知症は 3.6倍と右肩上がりになっていることがわかる。高齢による衰弱、骨折・転倒、関節疾患も認知症ほどではないが確実に増加している。

 

 2019年度に行われた国民生活基礎調査大規模調査の結果は、2020年6月頃に公表される予定である。脳血管疾患治療の進歩、および、高齢化社会の進行をふまえると、介護が必要となった主な原因の構成割合の順位には大きな変化がないと予想する。

 私が行っているリハビリテーション専門職の講義では、毎年、要介護の原因に関する試験問題を出している。日本では、要介護の原因の第1位は認知症であり、その次が脳血管疾患である、という事実は理解してもらっているものと思っている。

 

回復期リハビリテーション病棟の実績評価が診療報酬改定論議の焦点に

 2020年度診療報酬改定に向けて、中医協の議論が佳境を迎えている。中央社会保険医療協議会総会(第439回)議事次第では、入院医療(その4)について総ー2(PDF:5,215KB)を用い回復期リハビリテーション病棟の議論が行われた。

 2019年11月29日の中医協総会における主な論点は、以下にまとめられている。

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 12月6日の中医協総会では、実績指数に関して集中的議論が行われた。各種配信ニュースを見ると、診療側が入院料1、3、5についてリハビリの実績指数の基準値引き上げに反対、支払側は引き上げに賛成した上で入院料2、4、6へ新たに基準値を導入することを要求、厚労省は2、4、6への導入には消極的という図式になっている。

 厚労省の資料を見ると、回復期リハ病棟入院料施設数、病床数は順調に増加している。その中でも、実績指数の要件が加わる入院料1、3の方が、要件のない2、4と比べて多くなっている。

 

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 リハビリテーション実績指数は、2017年10月と2018年10月とを比較すると大きく上昇している。中央値で見ると、入院料1で45、入院料3で40となっており、基準を大きく上回っている。

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 リハビリテーション実績指数を増やすためには、分子であるFIM運動項目増加を増やすか、分母である実入院期間/上限入院期間比を減らすしかない。なお、発症から入棟までの期間が短くなるとFIM増加が大きくなる傾向があることがわかっており、早期入棟患者が増えたことがリハビリテーション実績指数の向上と関係しているのではないかと厚労省は考えているようだ。入院期間短縮に関する資料も探せばあるかもしれないが、今回の資料には含まれていなかった。その他にも、入棟日数の短縮や除外規定の利用、改善度が高くなると見込まれる患者の選別なども影響を及ぼしていると予想する。

 

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 厚労省の提案は、下記2枚の図にまとめられている。入院料3と5では同じ実績指数30が基準となっているが、この2類型に差をつける。また、それぞれの実績指数の数値を実態を踏まえて変更するという提案である。

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 入院患者に関する要件として、発症後2ヶ月ないし1ヶ月以内に入棟することが必要という規定があるが、早期受入が進んでいる反面、様々な事情で期限内に入棟できない患者のことも考慮し、期限を見直すことが提案されている。困難患者を抱えている急性期病院にとっては朗報と言える。

 以上2点に関する提案が下記スライドにまとめられている。

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 リハビリテーション実績指数が最終的にどのような水準になるのかは、現時点では全く予想できない。厚労省が落としどころを探っているところである。いずれにせよ、前回に引き続き実績指数のハードルは上がることになる。これまで以上に、早期受入、入院期間短縮が迫られることは間違いない。経営を優先させ、中途半端な状態で退院させることになってしまっては本末転倒となる。今後、どのように回復期リハビリテーション病棟を運営していくのか、難しい舵取りが求められている。

 

釜石鵜住居復興スタジアムの仮設スタンド

  本日釜石鵜住居復興スタジアムで予定されていたラグビーワールドカップナミビア v カナダ」戦が、台風19号の被害を考慮し中止となりました。

 

 

 釜石鵜住居復興スタジアムは、東日本大震災で被災した釜石市鵜住居地区の中学校と小学校の跡地に建設されました。常設シートは約6千席ですが、国際試合用に約1万席分の仮設スタンドが整備されています。

 

 この仮設スタンドは、ラクビーワールドカップが終わると取り壊されますが、約6千席にダウンサイジングしても年間約4千万の運営費がかかります。人口約3万人の釜石市にとっては大きな負担であり、外部委託を含め様々な案が検討されています。

 

 本日、試合を行うはずであったカナダ代表は、釜石市で泥片付けのボランティアを行いました。

  

 一方のナミビア代表も、宮古市でファン交流会を開催しています。

 

 ワールドカップで戦いたいという両国代表の心中を察すると、いつの日か、なんとかして釜石の地で幻のカナダ対ナミビアの試合を開催して欲しいという思いはありますが、肝心の鵜住居復興スタジアムの仮設スタンドが撤去されてしまうことを考えると、叶わぬ夢ということになります。

 ただし、スタジアムは小規模となりますが、かつて日本選手権7連覇を果たした新日鉄釜石の後継チームである釜石シーウェイブスRFCの本拠地として使用されます。釜石道だけでなく、三陸自動車道もまもなく全線開通となります。陸の孤島だった地域もアクセスが良くなっていますので、いつか、シーウェイブスの試合を見に行きたいと思っています。

 

 最後に、この夏、三陸海岸を縦断した時に釜石鵜住居復興スタジアムにも寄った時に撮影した写真を何枚か置いておきます。ご覧いただければ幸いです。

 

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高齢社会における急激なキャッシュレス化推進への危惧

 国は、急激なキャッシュレス化を推し進めようとしている。

  • 検討会は、大阪・関西万博(2025年)に向けて、「支払い方改革宣言」として「未来投資戦略2017」で設定したキャッシュレス決済比率40%の目標を前倒しし、より高い決済比率の実現を宣言する。さらに将来的には、世界最高水準の80%を目指していく。
  • 「キャッシュレス推進協議会(仮称)」において、オールジャパンの取組として産官学が連携して進めていく。

 

 今年から、楽天生命パーク宮城では完全キャッシュレス化となり、コインロッカー以外は現金が全く使用できなくなった。

 

 クレジットカード以外で使用できるのは、楽天ペイ、楽天Edy、それから楽天スーパーポイントだけで、見事に自社サービスだけとなっている。それぞれの違いがよくわからず、真面目にキャッシュレス化の勉強をしないと乗り遅れると思って参考書籍を書店で物色していたところ、「キャッシュレス覇権戦争」という新書が目に止まった。

キャッシュレス覇権戦争 (NHK出版新書 574)

キャッシュレス覇権戦争 (NHK出版新書 574)

 

 

  本書では、政府がキャッシュレス化を推進する理由として、以下の3つをあげている。

  •  インバウンド消費の拡大による経済活性化: キャッシュレス決済が普通となっている外国人観光客への対応
  •  現金のハンドリングコストの削減: 貨幣の製造やATM維持管理コストなどの削減
  •  お金の流れの捕捉と徴税の徹底: 脱税やマネーロンダリングの防止

  消費者にとっても、キャッシュレス決済が当たり前になると、現金を持ち歩く必要が減る、ポイントがたまるなどの様々なメリットがあることを指摘しつつ、資産やお金の使い方が企業や国に筒抜けになるというデメリットがあることも看破している。キャッシュレス化が進む米国や中国では、「信用格差社会」が進むという問題が生じている。データ監視社会で身を守るために勝手に個人情報を使わせない仕組みづくりが必要という指摘もしている。非現金化こそが重要と宣伝する一部の論者とは一線を画しており、バランス感覚がとれた内容となっている。

 

 本書に触れられていない問題がある。キャッシュレス化弱者の課題である。キャッシュレス先進国では、高齢者や障害者が、様々な負担を強いられている。

 

 スウェーデンでは、「スウィッシュ」と呼ばれるスマホを用いた支払い方法が普及しており、一般的に市民の利便性は増したと言われているが、次のような問題が指摘されている。

指摘されているのはまず、高齢者や障害をもつ人々、ITインフラが整備されていない地域の住人や移民といった、電子決済サービスの利用機会が限定される人々の問題だ。

スウェーデン全21の県からなる「県組合」がまとめた「基本的な支払い業務の観察・2017年」という資料には、経済的、身体的、技術的な理由などさまざまな事情からスマホやPCなどを持たない・持てない人々が、キャッシュレス化の波を受け、現金の入出金や生計費の支払いといった「基本的な支払い業務」に不都合を経験していることが、各地から報告されている。

現金の必要性については、年金生活者の全国組織「PRO」も声を上げている。

スウェーデン最大級の市民団体であるPROは、デジタル決済の普及を歓迎しつつも、現金の使用が難しくなったり割高になったりした場合、まず苦境に立たされるのは年配者や障害をもつ人々、中小企業や過疎地の住民等だ、と指摘。

2016年には、「現金の取り扱いに銀行はもっと責任をもつべき」と訴えるとともに、現金を残すよう求めた約14万人の署名を政府に提出した。署名は、同団体のホームページ上で今も増え続けている。

 

 日本は世界で最も高齢化が進行している国である。それにも関わらず、国策として現金を使用できないような状況を急激に作り出した場合、キャッシュレス化弱者の負担は過大となってしまう。様々なデメリットをふまえた場合、決済率だけを指標に強引な非現金化を推進することは不適当である。また、北海道胆振東部地震のように、大災害で大規模停電が生じた場合には電子決済は全く機能しない。日本は自然災害が多い国であることを考慮すると、一定程度現金決済を残す政策こそが適当である。少なくとも将来的に世界最高水準となるキャッシュレス決裁比率80%を目指すという宣言は、非現実的で危険である。

 

 なお、現金決済を残しつつ、高齢者にとってより簡便な決済手段となるならば、電子マネーを併用することは適当と私は考えている。

 

  上記記事では、nanacowaonのようなカード式のプリペイド電子マネーは、高齢者で使用が伸びていると報告している。入金の上限、紛失時の保証などもあり、キャッシュカードを持ち歩き、ATMで現金をおろすより安全と高齢者に受け止められたことが要因と分析している。高齢の両親に子どもが手渡すことが増えているとも述べている。一方、スマホを用いた決済は60歳代で1割未満との記載もある。電子マネーの共通化が図られておらず、どこの店でも使用できるわけではなく、大手流通業の囲い込みの対象ともなっている。

 今後も、スマホを用いたQRコード決済は手間がかかり高齢者には普及しないと予想する。一方、スマホに取り込まれたクレジットカードなどによる非接触型決済(Apple Pay、Google Pay、モバイルSUICAなど)は使い勝手がカード型とあまり変わらず、慣れてしまえば高齢者でも使用可能と思われる。今後は、カード型ないしスマホ型非接触型決済+現金払いが高齢者の基本的な支払い方式として定着するのではないかと推測する。