釜石鵜住居復興スタジアムの仮設スタンド

  本日釜石鵜住居復興スタジアムで予定されていたラグビーワールドカップナミビア v カナダ」戦が、台風19号の被害を考慮し中止となりました。

 

 

 釜石鵜住居復興スタジアムは、東日本大震災で被災した釜石市鵜住居地区の中学校と小学校の跡地に建設されました。常設シートは約6千席ですが、国際試合用に約1万席分の仮設スタンドが整備されています。

 

 この仮設スタンドは、ラクビーワールドカップが終わると取り壊されますが、約6千席にダウンサイジングしても年間約4千万の運営費がかかります。人口約3万人の釜石市にとっては大きな負担であり、外部委託を含め様々な案が検討されています。

 

 本日、試合を行うはずであったカナダ代表は、釜石市で泥片付けのボランティアを行いました。

  

 一方のナミビア代表も、宮古市でファン交流会を開催しています。

 

 ワールドカップで戦いたいという両国代表の心中を察すると、いつの日か、なんとかして釜石の地で幻のカナダ対ナミビアの試合を開催して欲しいという思いはありますが、肝心の鵜住居復興スタジアムの仮設スタンドが撤去されてしまうことを考えると、叶わぬ夢ということになります。

 ただし、スタジアムは小規模となりますが、かつて日本選手権7連覇を果たした新日鉄釜石の後継チームである釜石シーウェイブスRFCの本拠地として使用されます。釜石道だけでなく、三陸自動車道もまもなく全線開通となります。陸の孤島だった地域もアクセスが良くなっていますので、いつか、シーウェイブスの試合を見に行きたいと思っています。

 

 最後に、この夏、三陸海岸を縦断した時に釜石鵜住居復興スタジアムにも寄った時に撮影した写真を何枚か置いておきます。ご覧いただければ幸いです。

 

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高齢社会における急激なキャッシュレス化推進への危惧

 国は、急激なキャッシュレス化を推し進めようとしている。

  • 検討会は、大阪・関西万博(2025年)に向けて、「支払い方改革宣言」として「未来投資戦略2017」で設定したキャッシュレス決済比率40%の目標を前倒しし、より高い決済比率の実現を宣言する。さらに将来的には、世界最高水準の80%を目指していく。
  • 「キャッシュレス推進協議会(仮称)」において、オールジャパンの取組として産官学が連携して進めていく。

 

 今年から、楽天生命パーク宮城では完全キャッシュレス化となり、コインロッカー以外は現金が全く使用できなくなった。

 

 クレジットカード以外で使用できるのは、楽天ペイ、楽天Edy、それから楽天スーパーポイントだけで、見事に自社サービスだけとなっている。それぞれの違いがよくわからず、真面目にキャッシュレス化の勉強をしないと乗り遅れると思って参考書籍を書店で物色していたところ、「キャッシュレス覇権戦争」という新書が目に止まった。

キャッシュレス覇権戦争 (NHK出版新書 574)

キャッシュレス覇権戦争 (NHK出版新書 574)

 

 

  本書では、政府がキャッシュレス化を推進する理由として、以下の3つをあげている。

  •  インバウンド消費の拡大による経済活性化: キャッシュレス決済が普通となっている外国人観光客への対応
  •  現金のハンドリングコストの削減: 貨幣の製造やATM維持管理コストなどの削減
  •  お金の流れの捕捉と徴税の徹底: 脱税やマネーロンダリングの防止

  消費者にとっても、キャッシュレス決済が当たり前になると、現金を持ち歩く必要が減る、ポイントがたまるなどの様々なメリットがあることを指摘しつつ、資産やお金の使い方が企業や国に筒抜けになるというデメリットがあることも看破している。キャッシュレス化が進む米国や中国では、「信用格差社会」が進むという問題が生じている。データ監視社会で身を守るために勝手に個人情報を使わせない仕組みづくりが必要という指摘もしている。非現金化こそが重要と宣伝する一部の論者とは一線を画しており、バランス感覚がとれた内容となっている。

 

 本書に触れられていない問題がある。キャッシュレス化弱者の課題である。キャッシュレス先進国では、高齢者や障害者が、様々な負担を強いられている。

 

 スウェーデンでは、「スウィッシュ」と呼ばれるスマホを用いた支払い方法が普及しており、一般的に市民の利便性は増したと言われているが、次のような問題が指摘されている。

指摘されているのはまず、高齢者や障害をもつ人々、ITインフラが整備されていない地域の住人や移民といった、電子決済サービスの利用機会が限定される人々の問題だ。

スウェーデン全21の県からなる「県組合」がまとめた「基本的な支払い業務の観察・2017年」という資料には、経済的、身体的、技術的な理由などさまざまな事情からスマホやPCなどを持たない・持てない人々が、キャッシュレス化の波を受け、現金の入出金や生計費の支払いといった「基本的な支払い業務」に不都合を経験していることが、各地から報告されている。

現金の必要性については、年金生活者の全国組織「PRO」も声を上げている。

スウェーデン最大級の市民団体であるPROは、デジタル決済の普及を歓迎しつつも、現金の使用が難しくなったり割高になったりした場合、まず苦境に立たされるのは年配者や障害をもつ人々、中小企業や過疎地の住民等だ、と指摘。

2016年には、「現金の取り扱いに銀行はもっと責任をもつべき」と訴えるとともに、現金を残すよう求めた約14万人の署名を政府に提出した。署名は、同団体のホームページ上で今も増え続けている。

 

 日本は世界で最も高齢化が進行している国である。それにも関わらず、国策として現金を使用できないような状況を急激に作り出した場合、キャッシュレス化弱者の負担は過大となってしまう。様々なデメリットをふまえた場合、決済率だけを指標に強引な非現金化を推進することは不適当である。また、北海道胆振東部地震のように、大災害で大規模停電が生じた場合には電子決済は全く機能しない。日本は自然災害が多い国であることを考慮すると、一定程度現金決済を残す政策こそが適当である。少なくとも将来的に世界最高水準となるキャッシュレス決裁比率80%を目指すという宣言は、非現実的で危険である。

 

 なお、現金決済を残しつつ、高齢者にとってより簡便な決済手段となるならば、電子マネーを併用することは適当と私は考えている。

 

  上記記事では、nanacowaonのようなカード式のプリペイド電子マネーは、高齢者で使用が伸びていると報告している。入金の上限、紛失時の保証などもあり、キャッシュカードを持ち歩き、ATMで現金をおろすより安全と高齢者に受け止められたことが要因と分析している。高齢の両親に子どもが手渡すことが増えているとも述べている。一方、スマホを用いた決済は60歳代で1割未満との記載もある。電子マネーの共通化が図られておらず、どこの店でも使用できるわけではなく、大手流通業の囲い込みの対象ともなっている。

 今後も、スマホを用いたQRコード決済は手間がかかり高齢者には普及しないと予想する。一方、スマホに取り込まれたクレジットカードなどによる非接触型決済(Apple Pay、Google Pay、モバイルSUICAなど)は使い勝手がカード型とあまり変わらず、慣れてしまえば高齢者でも使用可能と思われる。今後は、カード型ないしスマホ型非接触型決済+現金払いが高齢者の基本的な支払い方式として定着するのではないかと推測する。

維持期・生活期の疾患別リハビリテーション料に係る経過措置終了に当たっての対応

 2019年3月8日、平成30年度診療報酬改定について |厚生労働省内に、「要介護被保険者等である患者に対する入院外の維持期・生活期の疾患別リハビリテーションに係る経過措置の終了に当たっての必要な対応について PDF」という通知が載った。

 

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 区分番号「H001」は脳血管疾患等リハビリテーション料、同「H001-2」は廃用症候群リハビリテーション料、そして、「H002」は運動器リハビリテーション料のことである。「診療報酬の算定方法の一部を改正する件(告示) 平成30年 厚生労働省告示第43号 リハビリテーション PDF 」を見ると、脳血管疾患等リハビリテーション料の注4と注5は次のとおりである。なお、廃用症候群リハビリテーション料も運動器リハビリテーション料も算定日数上限の日数以外は同じである。

4 注1本文の規定にかかわらず、注1本文に規定する別に厚生労働大臣が定める患者に対して、必要があってそれぞれ発症、手術若しくは急性増悪又は最初に診断された日から180日を超えてリハビリテーションを行った場合は、1月13単位に限り、算定できるものとする。この場合において、当該患者が要介護被保険者等である場合には、注1に規定する施設基準に係る区分に従い、次に掲げる点数を算定する。

イ 脳血管疾患等リハビリテーション料(I)(1単位)  147点

ロ 脳血管疾患等リハビリテーション料(II)(1単位)  120点

ハ 脳血管疾患等リハビリテーション料(III)(1単位)  60点

5 注4の場合において、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関以外の保険医療機関が、入院中の患者以外の患者(要介護被保険者等に限る。)に対して注4に規定するリハビリテーションを行った場合には、所定点数の100分の80に相当する点数により算定する。

 

 注4の後段及び注5を算定できる期間が平成30年3月31日までとなっている。逆に言うと、注4の前段「1月13単位に限り、算定できるものとする。」までの部分は、心大血管疾患リハビリテーション料、呼吸器リハビリテーション料と同様に規定は残る。したがって、要介護・要支援認定を受けた要介護被保険者等以外の患者に関しては、今までどおり「1月13単位」を上限とした運用は可能である。

 一方、要介護被保険者の場合は、算定日数上限を超えた場合には、全く医療保険リハビリテーションを受けることができないかというとそうではない。「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知) (平成30年3月5日 保医発0305第1号)別添1 (医科点数表) PDF 」の脳血管疾患等リハビリテーション料のところに次のような記載がされている。

 

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 実は、上記規定は、それぞれの疾患別リハビリテーション料の注1の規定を再確認しただけである。「特掲診療料の施設基準等の一部を改正する件(告示) 平成30年 厚生労働省告示第45号 PDF」を見ると、「別表第九の八」、「別表第九の九」は次のとおりである。下線は平成30年診療報酬改定で追加されたものである。

# 別表第九の八

第一号

第二号

  • 先天性又は進行性の神経・筋疾患の患者
  • 障害児(者)リハビリテーション料に規定する患者(加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病の者を除く。)

# 別表第九の九

  • 別表第九の八第一号に規定する患者については、治療を継続することにより状態の改善が期待できると医学的に判断される場合
  • 別表第九の八第二号に規定する患者については、患者の疾患、状態等を総合的に勘案し、治療上有効であると医学的に判断される場合

 

 「難病患者リハビリテーション料に規定する患者」、「障害児(者)リハビリテーション料に規定する患者」はそれぞれ次のとおりである。

# 難病患者リハビリテーション料に規定する患者

 

# 障害児(者)リハビリテーション料に規定する患者(別表第十の二)

  

 以上をふまえると、要介護被保険者は、「1月13単位に限り」という注4の規定は利用できないが、「リハビリテーションを継続することにより状態の改善が期待できる」場合は、注1の規定を利用して、算定日数上限を超えて医療保険リハビリテーションを実施できることになる。

 しかし、上記の場合、大きなハードルが2つある。「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知) (平成30年3月5日 保医発0305第1号)別添1 (医科点数表) PDF 」に次のような記載がある。

<通則>

4 (前略)(疾患別リハビリテーション)の実施に当たっては、医師は定期的な機能検査等をもとに、その効果判定を行い、別紙様式 21 から別紙様式 21 の5までを参考にしたリハビリテーション実施計画を作成する必要がある。また、リハビリテーションの開始時及びその後(疾患別リハビリテーション料の各規定の「注4」にそれぞれ規定する場合を含む。)3か月に1回以上(特段の定めのある場合を除く。)患者に対して当該リハビリテーション実施計画の内容を説明し、診療録にその要点を記載すること。

 また、疾患別リハビリテーションを実施している患者であって、急性期又は回復期におけるリハビリテーション料を算定する日数として、疾患別リハビリテーション料の各規定の「注1」本文に規定する日数(以下「標準的算定日数」という。)を超えて継続して疾患別リハビリテーションを行う患者(疾患別リハビリテーション料の各規定の「注4」にそれぞれ規定する場合を除く。)のうち、治療を継続することにより状態の改善が期待できると医学的に判断される場合(特掲診療料の施設基準等別表第九の八第一号に掲げる患者であって、別表第九の九第一号に掲げる場合)は、継続することとなった日を診療録に記載することと併せ、継続することとなった日及びその後1か月に1回以上リハビリテーション実施計画書を作成し、患者又は家族に説明の上交付するとともにその写しを診療録に添付すること。(後略)

 

9  疾患別リハビリテーションを実施する場合は、診療報酬明細書の摘要欄に、(中略)を記載すること。また、標準的算定日数を超えて継続して疾患別リハビリテーションを行う患者(疾患別リハビリテーション料の各規定の「注4」にそれぞれ規定する場合を除く。)のうち、治療を継続することにより状態の改善が期待できると医学的に判断される場合(特掲診療料の施設基準等別表第九の八第一号に掲げる患者であって、別表第九の九第一号に掲げる場合)は、1)これまでのリハビリテーションの実施状況(期間及び内容)、2)前月の状態との比較をした当月の患者の状態、3)将来的な状態の到達目標を示した今後のリハビリテーション計画と改善に要する見込み期間、4)FIM、BI、関節の可動域、歩行速度及び運動耐用能などの指標を用いた具体的な改善の状態等を示した継続の理由を摘要欄に記載すること。ただし、リハビリテーション実施計画書を作成した月にあっては、改善に要する見込み期間とリハビリテーション継続の理由を摘要欄に記載した上で、当該計画書の写しを添付することでも差し支えない。なお、継続の理由については、具体的には次の例を参考にして記載すること。

 

 まず、リハビリテーション実施計画書の記載義務が「3か月に1回以上」から「1か月に1回以上」と増える。さらに、改善の見込み等細かな内容を含む診療報酬明細書(レセプト)コメントを記載する必要が生じる。改善の可能性が低く、維持目的である場合には、減点・返戻の対象となる。したがって、要介護被保険者に関していうと、実質的に維持的リハビリテーション介護保険を選ばざるをえないことになる。別表第九の八で除外対象となっているかに思える失語症患者、難病等リハビリテーション料に規定されているパーキンソン病や関節リウマチ患者でも、要支援・要介護認定を受けている場合には同様である。医療保険リハビリテーションを続けようと思うならば、最初から介護保険認定を受けないように指導せざるをえない。

 

 疾患別リハビリテーション料算定日数上限を超えてリハビリテーションを提供する場合には、次のような対応が必要となる。

 上記のような面倒な対応をしたくない医療機関は、疾患別リハビリテーション料の算定日数上限を超えた段階で、機械的リハビリテーションを打ち切りを行う。患者にとって、不幸な状況が蔓延しないことを祈るしかない。

承久の乱 日本史のターニングポイント

 日本史に関する国民の関心は昔から高く、テレビ、映画、小説などで繰り返し取り上げられている。ただし、戦国や幕末物に人気が集中することへの反省からか、新しい素材や新鮮な切り口を求める傾向が強まってきているように思える。例えば、応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書)がベストセラーになったことが象徴的だが、これまであまり注目を浴びることのなかった中世日本史を題材とし、最近の研究成果をふまえわかりやすく解説した新書が脚光を浴びるようになってきている。今回紹介する承久の乱 日本史のターニングポイント (文春新書)もそのひとつであり、先月に発売されたばかりである。

 

  

 眼光鋭い怪しげな著者近影と、「陰謀、暗殺、裏切り 第一級の歴史ドラマが始まる!」という扇情的なフレーズを前面に押し出している帯を見るだけで、出版社が売り気満々であることがわかる。読みやすい軽妙な語り口もあり、難解な時代背景と複雑な人間関係があるにも関わらず、内容がスムーズに頭の中に入ってくる。

 

 本書は九章立てとなっている。内容的には、第一、二、四、六章が鎌倉幕府という武士政権の実態を明らかにしたものであり、第三、五章が対抗する後鳥羽上皇の資質とその政策に触れたものである。そして、残りの三章で、承久の乱そのものの経過、後鳥羽上皇の敗因、そして、戦後処理と日本史における歴史的位置づけが述べられている。

 

 特筆すべきは鎌倉幕府の実態を明らかにした部分であり、概略は次のとおりとなる。

  •  幕府の本質は「頼朝とその仲間たち」だった。鎌倉幕府は、江戸幕府のようなピラミッド型組織ではない。頼朝による土地の安堵という「御恩」に報いるために頼朝の命令のもと戦う「奉公」をする主従契約に結んだ仲間たちが、駿河、伊豆、相模、武蔵の4カ国を中心とした東国に築き上げた安全保障体制であり、東国限定の在地領主の政権だった。
  •  中世武士は、弱肉強食の世界で自分の土地を守るためにすすんで殺生に手を染める荒々しい感覚を持っていた。このため鎌倉幕府では血なまぐさい権力抗争が起きた。そのなかで、最終的な勝者になったのは、父時政を失脚させ、敵対する御家人を滅ぼした北条義時だった。最終勝者となった義時を頼朝の真の後継者と鎌倉武士は認めた。この時、鎌倉幕府は、「頼朝とその仲間たち」による政権から「義時とその仲間たち」による政権となった。
  •  一方、三代将軍実朝の時代には、御家人統制の綻びが出ていた。有力御家人が平然と後鳥羽上皇に仕えるようになっていた。さらに、後鳥羽上皇は、実朝の官位を右大臣まで上げ、天皇を中心とした権門体制に組み込もうとしていた。義時らにとって実朝は、「在地領主による、在地領主のための幕府」を否定しかねない危険な将軍だった。実朝暗殺事件後に源氏直系が根絶やしにされたことも考えると、実朝暗殺事件の黒幕は義時以外には考えられない。

 

 「頼朝とその仲間たち」というとどこかの政党のようであるが、別のところで『ヤクザ映画の名作「仁義なき戦い」に勝るとも劣らない凄まじさ』とか、『頼朝の直属の子分(仲間たち)』という表現を用いていることから類推すると、目的のためには手段を選ばない集団との類似を耳ざわりの良い表現に置き換えただけのようである。権力をめぐって繰り広げられる激しい武力抗争は、確かに似ている。

 承久の乱自体の経過は、あっさりと描かれている。後鳥羽上皇の義時追討命令から敗北までわずか1ヶ月で決着しており、見せ場となる戦闘も瀬田・宇治川の戦いくらいしかない。北条政子の大演説も実は代読であり、最初から東国武士は生き残りをかけた戦いという気持ちで参戦したことが示されている。

 後鳥羽上皇の敗因としては、西国の守護を味方にはつけたが末端の武士までは浸透せず、東国の動員力と比べて大きな差があったことが示されている。さらに、「権威のピラミッド」という身分制に基づく朝廷型リーダーシップが、「御恩」と「奉公」による一対一の関係に基づいた幕府型リーダーシップに劣ったということも示唆されている。

  後鳥羽上皇隠岐配流など三上皇を配流し、官軍に加わった御家人や貴族たちを斬罪に処するなど戦後処理は過酷だったことが示された後、承久の乱の影響がまとめられている。何よりも、朝廷を中心に展開してきた日本の政治が、この乱以後明治維新に至るまでの間、武士が支配する政治へと移り変わったターニングポイントになったことが重要である。さらに、幕府も、自力救済オンリーの「万人の万人に対する闘争」状態を脱し、法による統治と民を慈しむ「撫民」を志向するようになり、「トップとその仲間たち」という体制から成熟していったことも示されている。

 以前は頼朝が征夷大将軍となった1192年をもって鎌倉時代の始まりとしていたが、最近は守護・地頭設置権を認められた1185年が適切という説が有力となっている。しかし、本書が示すように、発足当初は東国政権に過ぎず、全国に支配権が及ぶようになったのが承久の乱以降ということを考慮すると、1221年を時代区分の節目としてもっと重要視して良いのではないかと思う。

バリアフリー・ユニバーサルデザインに配慮したホテル又は旅館の事例

 この間開催されてきたバリアフリー法に基づく建築設計標準の改正に関する検討会で、バリアフリーユニバーサルデザインに配慮したホテル又は旅館の事例が紹介されている。メモ代わりに、紹介されたホテル・旅館のHPを貼っていく。

 

<第1回>

 資料5 事例紹介には、以下の3事例が紹介されている。

事例1 日本青年館ホテル(新築)

・ワンフロア全てを車椅子使用者の利用にも配慮した客室とした都心型シティホテル

・車椅子使用者のニーズ対応に配慮した、複数タイプ(広さ、水廻り)の客室の提供

・ブラウンを基調とした、シンプルで洗練されたデザインのユニバーサルルーム

10階はユニバーサルフロア(車椅子使用者の利 用にも配慮した客室階、客室数:29室)として計画されている。

 

事例2 ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町(新築)

・総客室数 250 室のうち、ユニバーサルルーム(車椅子使用者用客室)5 室、高齢者、障害者等の利用にも配慮した一般客室 223 室を備えたラグジュアリーホテル

・インテリアの一部となるガラス張りの水廻り、白を基調とし洗練された室内デザインのユニバーサルルーム

・すっきりとした印象の片持ち天板のデスク、洗練された手すりや金物等、デザイン性と利用者への配慮の両立

 

 事例3 ホテル はつはな(改修)

・複数回にわたる改修により、客室および共用部のバリアフリー化を図った和風ホテル

・「ビューバス付き」と「ひのき風呂付き」、あたたかみのあるデザインのユ ニバーサルスタイルの客室(車椅子使用者用客室)の提供

 

<第2回>

 資料3 事例紹介には、以下の4事例が紹介されている。

事例4 レム 秋葉原(新築)

・快適な眠りをテーマとした駅直結型の都心型ホテル

・コンパクトな客室空間の中にロールインシャワー室を配置した車椅子使用者用客室を提供 ・ガラス張り

ワイドビューのシャワー室を設けることにより、開放的な水まわり空間を実現

 

事例5 ホテルグランヴィア京都(新築+改修)

・京都駅に直結した観光・ビジネスの拠点となるシティホテル

・竣工時より車椅子使用者の利用に配慮した、ゆとりある共用部空間、車椅使用者用客室(6 室)を提供 ・ハード面とソフト面(貸し出し、有資格者の配置等)を兼ね備えた「ユニバーサルサービス」の充実

 

事例6 RAKURO 京都 -THE SHARE HOTELS-(用途変更+全面改修)

・既存事務所ビルからの用途変更に伴い、全面改修が行われたホテル

・車椅子使用者用客室前の廊下に傾斜路を設けることにより、客室内の床をフラット化

・車椅子使用者用客室の水廻りは、洗い場と浴槽のある浴室タイプ(浴室と、トイレ・洗面が分離)

 

事例7 LYURO 東京清澄 -THE SHARE HOTELS-(用途変更+全面改修)

・既存事務所ビルからの用途変更に伴い、全面改修が行われた、ドミトリータイプの客室があるホテル

・客室フロアの共用部に、車椅子使用者対応の共用シャワールーム(1 室)を 設置

 

<第3回>

 資料2 事例紹介には、以下の4事例が紹介されている。

事例8 ダイワロイネットホテル銀座(新築)

・都心でのビジネス・観光の拠点として、間口 13m×奥行 100m の敷地を 活かしたビジネスホテル

・洗練され、落ち着きのあるデザインのアクセシブルルーム(車椅子使用者用客室)を提供

点字や英語によるサイン表示等の情報提供の充実

 

事例9 後楽ガーデンホテル(後楽賓館)(改修)

小石川後楽園庭園に隣接した、日中友好会館の本館にあるホテル

・公益財団法人東京観光財団の補助金を活用した改修により、複数年度

に施設全体のバリアフリー化を行うとともに、5 室の車椅子使用者客室を提供

・車椅子使用者用客室内に傾斜路を設けることにより、客室内の床をフラット化

 

事例 10 京王プラザホテル(改修)

・1988 年にユニバーサルルーム 15 室(現在は一般客室として使用)を改修により設置、その後、2002 年に設置したユニバーサルルーム 10 室を 2018 年に全面リニューアルするとともに新たに 3 室提供

・ユニバーサルルームは洗練された内装と、機能的な家具・システム環境、利用者のニーズに応じて取り付け可能な手すりやアラートシステム等により、高齢者・障害者・健常者も快適に過ごすことのできる仕様

・屋外の補助犬専用トイレの設置等、共用部分の充実したバリアフリー化、動画を含むホームページでの事前の情報提供も実施

 

事例11さぎの湯荘(用途変更+移築改修) 2月上旬

  訪問調査は2月上旬とのことで、具体的内容は紹介されていない。HPのよくあるご質問には、次のような記載がされている。

Q.バリアフリーですか?

A.当館は玄関や部屋又は大浴場入り口などには段差があるので全面バリアフリーではございません。貸切の内風呂には段差なく入れるようになっております。部屋は1階と2階しかありませんが、エレベーターがございません。足などが不自由の方は1階の部屋をご用意しますので、ご予約頂く時にその旨をお伝え下さい。館内用車イスと簡易ベットもご用意は可能ですので希望されるお客様は事前にお知らせください。 

 

 ひととおり、それぞれのHPをざっと見た印象だが、バリアフリーないしユニバーサルデザインに対応していることはあまり強調されていない。車椅子対応客室を探している立場で見ると、「見える化」は不十分と言える。全国バリアフリー旅行情報/日本バリアフリー観光推進機構のようなサイトもあるが、情報収集はなかなか大変である。

 ホテル又は旅館における高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(追補版)が実際に運用され数年経ったあかつきには、新築を中心にバリアフリー対応の宿泊施設は増えると予想するが、それまでの間は口コミに頼るしかない。その意味で、今回検討委員会で紹介された事例は優良事例として保障付きのところと言えそうである。

 

ユニバーサルデザインを推進するホテルチェーン東横イン

 ユニバーサルデザインを推進するビジネスホテルチェーンとして、東横インの評判が高い。

 

 上記記事にも紹介されているが、東横インのホームページをみると、ハートフルルームという車椅子利用者にも対応する部屋の紹介がされ、バリアフリールームの「見える化」が進んでいる。

www.toyoko-inn.com

 

 10年以上前、東横インが起こしたハートビル法違反問題を受け、エントリーを書いたことがある。

 失態を糧に東横イン経営陣の意識改革が行われ、車椅子利用者から高く評価されてきているということを知り、他のホテルチェーンと比べてどの程度ユニバーサルデザインの意識が高くなっているのか実際に見学してみたいという思いが強くなっている。さすがにハートフルルームを利用する必然性はまだないので宿泊するとしたら一般客室になるが、その機会にもし空いていればユニバーサルデザインの概念で設計された部屋を覗かせてもらえないかと密かに企んでいるところである。

 

日本におけるバリアフリー政策の推移

 バリアフリーに関する法律等の歴史をまとめる。

 

 2016年年9月9日に行われた建築:高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計のあり方に関する検討委員会 - 国土交通省の第1回配布資料内にある参考資料2「建築設計標準の改訂経緯の整理」に、これまでの建築設計標準の改定経緯が整理されている。 

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  まず、1994年のハートビル法(高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律)施行が、建築設計におけるバリアフリー普及の契機となったことは間違いない。

 上記表には記載されていないが、2000年に交通バリアフリー法(高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律)(参照:http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrier/mokuji_.html)が制定されたことも画期的なことである。

  2003年にハートビル法が改正され、さらに、2006年に交通バリアフリー法と統合し発展させる形で、バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)が定められた。このバリアフリー法施行以後、様々な分野でバリアフリーユニバーサルデザインが推進されていった。以後、2007年度、2012年度と5年ごとに建築設計標準改定が行われてきた。

 今回、2020年東京オリンピックパラリンピックの開催を踏まえ、1年前倒しをして、2018年に建築設計標準改定が行われた。

 さらに、2019年9月には、ホテル・旅館などの宿泊施設にしぼった建築設計標準(追補版)の改定が実施される。

  ゆっくりだが着実にバリアフリーユニバーサルデザインが日本に定着してきている。国土交通省の取組みに敬意を表したい。