腰痛症は国民病
http://www.asahi.com/tech_science/update/0323/TKY201303230226.htmlという記事が、本日の一面トップを飾っていた。本記事の内容は大きく2つに部分に分かれている。
1.腰痛患者の推定値
厚労省研究班(主任研究員=吉村典子・東大病院特任准教授)の調査
- 東京や新潟、広島など全国8ヶ所の住民1万2千人分のデータを分析した。
- 腰痛の人は全国に推定で2800万人いる。
- 40〜60代の約4割が悩んでいる。60代にピークがあり、70代以上は下がる。
- 男女比は4対6。
2.腰痛に関する治療指針
- 日本整形外科学会と日本腰痛学会は、一般的な治療法の信頼度を治療指針にまとめた。
- 腰痛は、背骨のがんや、腰椎骨折、ヘルニア、脊柱管狭窄症などでも起こる。こうした病気が疑われれば、すぐに画像検査をして、もとの病気を治す必要がある。
- 原因不明の腰痛は全体の8割以上を占める。こうした腰痛には、抗炎症薬や鎮痛薬などの「薬物療法」が強く勧められた。3ヶ月以上続く慢性腰痛では、ストレッチやウォーキングなどの運動もお勧めだった。
- 腰痛にはストレスがよくないと判断された。このため、抗不安薬や、抗うつ薬も有効な治療に挙げられた。
- 一方、安静は必ずしもよくない。日常生活を続けるほうが、痛みが軽くなり、仕事を休む期間が短くなる。
- マッサージや腰の牽引の効果ははっきりとした根拠がなかった。
厚労省研究班の資料をネット上で探したが見つからなかった。平成24年度、長寿科学総合研究経費|厚生労働省の18、「膝痛・腰痛・骨折に関する高齢者介護予防のための地域代表性を有する大規模住民コホート追跡研究」が該当するものではないかと推測する。膝痛・腰痛・骨折に関する高齢者介護予防のための地域代表性を有する大規模住民コホート追跡研究 : 平成22年度総括研究報告書 : 厚生労働科学研究費補助金長寿科学総合研究事業という書籍も出ている。
22世紀医療センター 平成22年度活動報告書 講座名 関節疾患総合研究講座に吉村典子准教授の研究内容が紹介されている。大規模なコーホート研究を行っていることがわかる。
腰痛に関する治療指針は、以前、関連エントリーでとりあげたことがある。
【関連エントリー】
- 作者: 日本整形外科学会
- 出版社/メーカー: 南江堂
- 発売日: 2012/11
- メディア: 単行本
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出版社のHP、腰痛診療ガイドライン2012に、書評、主要目次、序文が載っているので、そちらも参考になる。
ガイドラインの内容は、腰痛症の診療に従事するものにとっては常識的なものである。ただし、記事の内容は薬物療法に偏りすぎている感がある。リンク先の図をみると、腰痛症が1ヶ月以上続く場合には、考え方の偏りを直し、行動の仕方を変える認知行動療法が「強く推奨」となっており、腰椎コルセット、3ヶ月未満の痛みの場合の温熱療法は「推奨」となっている。マッサージも、1ヶ月以上痛む場合、という前提付きで「根拠なし」となっている。安静は根拠なしとなっているが、急性腰痛の極期には寝返りさえ打てない。あくまでも、この指摘は過度の安静を戒めるものとしてとらえるべきである。無理すると、私の場合のように長引かせることになる。
腰痛症でいつも悩まされている者として、「ストレス」が悪影響を及ぼすという指摘には実感がある。腰痛の急性増悪は、無理をするなという身体の悲鳴と考え、病休をとるようにしている。