安全設計に問題? オーチス社製エスカレーター事故多発
安全設計の問題について考えさせられる事故があった。朝日新聞、名古屋事故機と同じオーチス社製 エスカレーター事故より。
名古屋事故機と同じオーチス社製 エスカレーター事故
2008年8月4日3時2分
名古屋市で5月に起きたエスカレーター事故が、同じ製造元のエスカレーターでまた起きた。3日、10人が負傷した東京・有明の東京国際展示場(東京ビッグサイト)。お目当ての展示に向かって先を争うように乗った来場者が次々に、下へ下へと滑り落ちた。エスカレーターは緊急点検を終えたばかり。大惨事につながりかねない事故がなぜ続くのか。
(中略)
事故が起きたエスカレーターは、5月の名古屋市営地下鉄駅での事故と同じオーチス社製の同じタイプで、停止後に下がった点も似ている。警視庁はこうした共通点を踏まえ、エスカレーターの構造や保守点検に問題がなかったか調べる方針だ。
名古屋の事故では、ブレーキをかける制御装置がのった鉄製台座を固定するボルトが折れ、台座がずれていた。このためブレーキが十分に利かず停止後に人の重みで下に落ちていったとみられている。
国土交通省によると、この事故と同タイプのエスカレーターは全国に66基。内訳は、今回現場となった展示場に8基、東京都営地下鉄大江戸線の3駅に計29基、新交通「ゆりかもめ」の2駅に計4基、東京国際フォーラムに6基、名古屋市営地下鉄の3駅に計19基。いずれも、名古屋の事故を受けて、緊急点検を実施した。
その際、東京都営地下鉄駅の4基でも同じ場所でボルトが折れているのが見つかり、オーチス社は、6本ある固定ボルトの直径を16ミリから20ミリにする補強作業をすべての同タイプ機で行った。
しかし、同社によると、今回の事故機は名古屋の事故前の昨年12月に補強作業を終えていた。3日の事故後も、ボルト部分の欠損がないことを確認したという。
「失敗学」の提唱で知られる畑村洋太郎工学院大教授は、メーカーは1日に何百回も大人数を乗せる想定で設計しているはずだと指摘。「エスカレーターのメカニズムとして、逆走が起こることは通常はあり得ない。名古屋の事故と同様、想定外のことが連鎖して逆走に至ったと考えられる」と話す。
エスカレーターの保守点検業者でつくる業界団体の役員の一人も「96年製のエスカレーターは決して古い部類ではない。事故防止のためにメーカーは二重、三重に安全設計しており、今回のような下降は普通は考えられない」と述べ、徹底的な原因の解明が必要だとしている。
同じメーカーのエスカレーターが、短期間に同じ事故を繰り返している。しかも、同機種は全国で66基しかない。事故率はきわめて高い。重量オーバーが原因との報道がある。しかし、その場合、エスカレーターが停止したとしても逆送するなどありえない。フェイルセーフの思想にたった設計がされたのかどうかが問題となる。
医療事故予防においても、フェイルセーフ機能が注目されている。代表的なものとして、誤接続予防対策がある。経管栄養剤を静脈内に誤って注入する事故が相次いだ時期がある。経管栄養チューブと点滴チューブが混在していても、誤接続が起こらないような設計が考え出された後、この種の事故は激減した。*1
「人は誰でも間違える」という思想に立ち、安全設計はなされる。エスカレーターは足腰が弱いものも使用する。今回の事故に関する原因究明を安全設計の立場から徹底的に行い、再発予防対策を立てて欲しいと強く願う。
*1:参考:ニプロ株式会社、消化管投与系器具の血管系への誤接続防止