新予防施策、現段階で効果の有無は決められず

 昨日の記事の詳報。ケアマネジメントオンラインーニュース(2008-5-29)、新予防施策、現段階で効果の有無は決められずーー厚労省会議より。

 厚労省は5月28日、第4回介護予防継続的評価分析等検討会を開催した。議題は介護予防サービスの効果分析、利用回数の変化と介護度の変化の関連など。


 介護予防施策導入の成果を検証するため、2007年1月からこれを評価・分析する事業が始まった。今年5月現在で83市町村の介護予防に係るデータが収集されており、同検討会がこれまで3回の検討を行ってきた。最終的な評価は来年3月末を予定している。


 分析に用いる対象者は、新予防給付導入前は83市町村、17,612人。導入後は83市町村、5,087人。施策導入前に要支援だった人々について要介護度が悪化した率をみると、男性が65〜74歳で3.0%、75〜84歳で3.4%、85歳以上で4.5%。女性では65〜74歳で2.4%、75〜84歳で2.8%、85歳以上で4.0%となった。同様に施策導入後に要支援1だった人々について悪化率をみると、男性が65〜74歳で2.1%、75〜84歳で2.0%、85歳以上で2.5%、女性では65〜74歳で1.3%、75〜84歳で1.7%、85歳以上で2.3%となった。


 上記の結果から、1,000人の要支援1に相当する人を1年間追跡した場合、悪化する人数は導入前の389人に対して導入後は234人となり、統計学的有意に155人の減少という介護予防効果があったとした。


 次に特定高齢者施策についての検証では、2006年4月の制度導入前には特定高齢者がおらず、厳密な意味では比較すべき対象がないことになる。しかし2006年度にパイロット調査に参加していた市町村のうち基本チェックリストや要介護認定上のデータが完全だったものを比較対象のデータとして用いることとした。その上での分析結果は、1,000人の対象者を1年間追跡した場合の悪化率は施策導入前の101人に対し導入後は82人となり、19人の減少となるが、統計学的な有意差は認められないとした。


 このように、要支援1については統計学的に有意な介護予防効果があるが、特定高齢者では有意な結果は出なかったとしたが、委員の間からは「観察期間が短く、特定高齢者施策が効果がないと決めることはできない」「母集団の数を増やしたら違う結果が出るのでは」「1年、2年のデータでは足りない」など、対象者の数や観察の期間の少なさを指摘する声が多く、現時点で効果の有無を判断するのは時期尚早という意見が大方だった。


 また、評価そのものについても、「要介護度だけで効果をみることも疑問」という意見も出、生活機能や活動の自立度などの観点も必要と指摘された。


 次回会議は8〜9月の予定。


 データをみて気づくのは、男性・女性とも85歳以上群の悪化率が著明に低下していることである。制度導入前後で比較すると、男性が4.5%→2.5%、女性が4.0%→2.3%と1%以上も下がっている。本当に、要介護度が変わらなかったのか、それとも介護認定という数字のマジックなのか検証が必要である。「要介護度だけで効果をみることも疑問」という意見は正論である。他の指標もあわせて比較しないと意味がない。