なぜ、芭蕉の銅像はあちこちにあるのか?

 デジカメの恩恵で気軽に写真が撮れるようになったのは嬉しいが、反面、膨大な量の写真の保存が必要となりコンピュータの容量を食うようになった。残す価値のない写真を削除するためライブラリをぼんやりと眺めていたところ、ある疑問が浮かびあがってきた。

 

 なぜ、芭蕉銅像はあちこちにあるのか?

 

 気になって仕方がなくなったので、調べてみることにした。

 

■ 私の芭蕉像コレクションより

 まず、私のライブラリにある芭蕉像を貼ってみる。

 

【山寺(山形)】

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 奥にあるのが芭蕉像(1972年建立)で、その横に山寺で作られた句を刻んだ副碑が建てられている。さらに手前が曾良像であり、おくのほそ道紀行300年を記念して1989年に建立されたものである。 

 閑さや 岩にしみ入る 蝉の声

 

飯坂温泉(福島)】

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 飯坂温泉駅前、十綱橋のたもとにある芭蕉像(1982年建立)である。近くに佐藤継信、忠信兄弟の墓がある医王寺があり、有名な次の句が詠まれている。

 笈も太刀も五月にかざれ帋幟(はたのぼり)

 

 【中尊寺岩手県)】

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 中尊寺金色堂旧覆堂脇にある芭蕉像である。この像もおくのほそ道紀行300年を記念して、1989年に建立されたものである。

 五月雨の降残してや光堂

 

 

■ 全国1、2位を争う銅像

 調べてみると、松尾芭蕉銅像数は、全国1、2位を争うものであることがわかった。

 

matome.naver.jp

 

 このサイトをみると、第1位松尾芭蕉33体、第2位坂本龍馬32体となっている。銅像 - Wikipediaにも同様の数が記載されており、参考資料として下記書籍が紹介されている。先のサイトは2014年2月25日に記事がアップされており、時期的に見て本書が種本と思われる。

日本の銅像 完全名鑑 (廣済堂ベストムック)

日本の銅像 完全名鑑 (廣済堂ベストムック)

 

 

 一方、日本の銅像探偵団〜銅像数ランキングでは、ダントツの1位である二宮金次郎1,000体以上、第2位坂本龍馬39体についで、第3位松尾芭蕉36体となっている(2015年11月10日再集計)。坂本龍馬像、松尾芭蕉像、いずれも数を伸ばしていることが注目される。なお、二宮金次郎像は石像が多いのとあくまでも推計数であることを考慮しなければならない。したがって、銅像数に限って言うと、龍馬、芭蕉は不動のツートップである。

 なお、先の書籍もこのサイトが監修協力したものであり、日本の銅像に関しては、最も信頼が置けるものである。

 

■ 街おこしの流れのなかで

 松尾芭蕉像がいつ頃から建立されるようになったかについて、はっきりと言及しているサイトを見つけることはできなかった。推測として言えるのは、次の点である。

 

(1)松尾芭蕉の顕彰は江戸時代より続く句碑建立の流れのなかにある

 江戸時代より、松尾芭蕉を顕彰する句碑は数多く建てられていた。芭蕉句碑 全国総覧を見ると、全国で芭蕉句碑は2,442基あり、100回忌である1793年までに331基作られたとある。

 さらに、下記書籍の紹介文をみると、全国の芭蕉句碑は3,230基と膨大な数になる。

石に刻まれた芭蕉―全国の芭蕉句碑・塚碑・文学碑・大全集

石に刻まれた芭蕉―全国の芭蕉句碑・塚碑・文学碑・大全集

 

 俳聖として芭蕉の名声は広く知れ渡っており、没後早い時期から全国津々浦々の俳諧愛好者から顕彰されるようになっていたことが伺われる。

 

(2)紀行文の傑作おくのほそ道は街おこしの格好の題材である

 第2次世界大戦前までは、近代銅像建立の主体は、政治家・武人が中心だった。一方、敗戦後は、ゆかりの人物を顕彰する銅像建立がブームとなり、対象も幅広くなった。

 松尾芭蕉の場合、紀行文の傑作、おくのほそ道が圧倒的影響力を持っている。特定の地域の代表だと広がりは生じないが、芭蕉の場合、旅をするなかで印象的な俳句を残したこともあり、どの地域からも郷土代表のように愛されるという稀有な存在となっている。ゆかりの地で行われた「おくのほそ道紀行300年記念事業」を見ると、対象となった1989年前後に、あちこちで銅像設立などの記念事業が行われている。「奥の細道サミット」という催しがゆかりの地で毎年行われており、最近でも、2015年に第27回サミットを開催した荒川区が、南千住駅前に松尾芭蕉像を建立しました 荒川区公式ホームページと報告している。

 

(3)銅像費用は意外に安価

 銅像を作っている会社のサイトを見ると、立像の価格は約500万円である。有名彫刻家に頼むともっとかかるとは思うが、寄付金を集めればなんとかまかなえる金額である。最近では、漫画・アニメ由来のキャラクター像があちこちに設置されるようになっている。街おこしの手段としては、費用対効果は高いようである。

 

 芭蕉像写真展示室を見ると、関東・東北中心に芭蕉像が多数ある。芭蕉像コレクターになるつもりはないが、こんなエントリーを書いてしまったからには、旅行先に芭蕉像があったら、立ち寄らずにはいられなくなりそうである。