「何もしない加算」と「患者の自覚に基づくアクセスのセーブ」

 本日の会議で気にかかった言葉があった。ちょっと古いニュースだが、京都府保険医協会 週刊医療情報インデックス 2008年3月第2週 (2008.03.11-2008.03.17)の中に、その言葉を見つけた。

■「技術料としての外来管理加算」へ見直し/10年度改定に向け原医療課長


 厚生労働省保険局医療課の原徳壽課長は3月16日、じほう主催のセミナー「2008年度診療報酬改定と医業経営の将来像」で講演し、中医協での議論で焦点となった再診料の見直しについて、「外来管理加算を見直し、懇切丁寧な診療を評価することを明確化したことによって、再診料は丁寧でない診療として残っている。再診料の見直しは今後の中医協で議論したい」と述べ、4月以降の中医協で「技術料としての外来管理加算」の明確化とともに、再診料の見直しの議論を進めていく考えを示した。


 外来管理加算は、処置やリハビリテーションを行わずに計画的な医学管理を行った場合に算定できることになっているが、同加算によって提供される医療サービスの内容が患者にとって実感しにくいとの指摘があったため、08年度改定では意義付けを見直し、診療時間の目安として「概ね5分を超えた場合に算定」と通知にも明記した。


 原課長は「外来管理加算は元は内科再診料。眼科や耳鼻科などと比べて、処置や検査が少ない内科の再診料をかさ上げするため、しっかりとした診察を評価する点数としてできた。しかし、いつの間にか『何もしない加算』となってしまった」と同加算の歴史を振り返った。


 その上で、「今回、外来管理加算の意義付けを見直し丁寧な診察を評価することとしたが、処置やリハビリをして加算を算定できない場合の丁寧な診察はどう評価するのかという問題がある。外来管理加算は純粋な技術料としての丁寧な診療に着目した形に変えていくべき。その後に、初再診料を含めて見直しの議論を進めるべき」と述べ、「丁寧な診察」は医師の技術料として外来管理加算で評価し、基本コスト部分を再診料で評価する体系への転換が必要との考えを示した。


 また、原課長は今回の改定で意図した結果とならなかった点数として「後期高齢者診療料」を挙げ、「患者の自覚に基づいてアクセスを自らセーブしてもらうことを考えていたが、そこへは行き着けなかった」と述べた。


 入院時医学管理加算、医師事務作業補助体制加算、ハイリスク分娩管理加算の算定要件となっている勤務医の負担軽減に向けた計画について原課長は、「計画は職員に周知してもらう。実行が伴わない場合、勤務医は立ち去っていくことになるため、病院は誠実に対応する必要が出てくる」と述べ、勤務医負担軽減計画の重要性を指摘した。


 原医療課長は、本音で語ってくれることが多く、実に分かりやすい。エントリーに取り上げやすく、私のブログでもたびたび紹介している。


 プロフィールは以下のとおりである。
* 原徳壽氏のプロフィール
 昭和56年に自治医科大卒。同年京都府衛生部に入り、平成2年に厚生省健政局計画課、同6年に医療課の課長補佐、富山県厚生部長、環境庁特殊疾病対策室長、文科省がん研究調整官、防衛庁運用局衛生官をつとめ、18年7月から現職。


 臨床経験ほぼゼロ。したがって、臨床医の心情が全く理解できていない。だからこそ、『何もしない加算』という神経を逆なでする言葉が平気で出てくる。実力ある臨床医は、診断が的確で、管理方針が明確、その上で看護師を含めてチームでアプローチをしている。だから、短時間で外来患者をこなしても、病状が安定し、問題を生じていないということが分かっていない。医師が診察に5分以上時間をかければ「丁寧な診察」になる訳ではない。「一つには、財源の問題があります。改定時には、外来管理加算がどのくらい算定されるかを計算していますから、「5分」は崩せません 。」と医療機関を平気で脅していることから分かるように、外来管理加算5分ルールは医療費削減の手段でしかない。


 また、患者の痛みを全く理解できない。「後期高齢者診療料」の本当の目的が、「患者の自覚に基づいてアクセスを自らセーブ」してもらうということを露骨に表明している。「医師と患者の信頼関係を後押しするための点数」という表現よりずっと分かりやすい。