看護協会総会、「後期高齢者医療制度に反対の意思表示を!」との発言

 日本看護協会ニュースリリース(4月14日)、【長寿医療制度(後期高齢者医療制度)に対する日本看護協会の声明】─健やかに老い、安らかに眠るために[PDF 254KB] が出た。内容は次のとおり。

社団法人 日本看護協会 広報部
 2008年4月14日


長寿医療制度後期高齢者医療制度)に対する日本看護協会の声明


 平成20年4月より長寿医療制度後期高齢者医療制度)が実施されました。社団法人日本看護協会(以下本会という。)は、高齢者の尊厳を守り、暮らしの中での総合的療養支援を強力に推進する立場から、以下のことを表明します。


1.この制度の創設は、慢性疾患やターミナル等の高齢者が必要な医療を、外来・入院、そして退院から在宅での看取りまで、切れ目なく安心して受けられるようになるための基盤整備の第一歩であると考えます。


2.特に、在宅療養の支援については、住み慣れた地域で身近な人に囲まれて最期を迎えたいという希望を実現できる24時間365日のスムーズな多職種連携による支援体制が求められています。


3.このたびの診療報酬改定においては、生活の場へ出向いて療養を支援し、安らかで尊厳のある死を支える訪問看護の技術が評価され、「訪問看護基本療養費」や「ターミナル療養費」が拡充されるとともに、「24時間対応体制加算」、「長時間訪問看護加算」、「後期高齢者終末期相談支援療養費」等が新設されました。
 このような見直しは、全国の各地域における医師、薬剤師等多職種との連携強化と、訪問看護機能の一層の充実を後押しするものであります。
 本会は、この期待に応え、訪問看護のさらなる発展のために訪問看護推進事業を強力に進めて参ります。


4.訪問看護の拡充策を確実に進めることによって、介護保険制度との連携を含めた長寿医療制度後期高齢者医療制度)の更なる整備に参画し、国民が願う「健やかに老い、安らかに眠る」ことが実現できる社会づくりに貢献します。


以上


 この声明に関し、5月20日に行われた日本看護協会通常総会で次のような論議がなされた。CBニュース、「後期高齢者医療制度に反対の意思表示を!」より。

後期高齢者医療制度に反対の意思表示を!」


 5月20日に開かれた日本看護協会の2008年度通常総会。一般参加者や代議員から、後期高齢者医療制度に対する批判と、執行部に対する「反対の意思表示を!」という声が次々に上がった。


 口火を切ったのは、東京の代議員。
 「4月の看護協会声明を読ませていただいたが、残念ながら悲しいし、腹が立つし、情けないという思いがあった。訪問看護の評価についてはたくさん書かれていて、それはそれで納得はできるが、後期高齢者医療制度の全体像については、ほとんどと言っていいほど触れられていない。命を年齢で区切るなど許されないことであり、多くの医師会でも反対を表明している」
 一般参加者からも、強硬な意見が出された。
 「4月14日の声明は、世論と少しずれていると思います。国民の健康と福祉を守る職能団体として、制度の問題点をきちんととらえ、国民の声を聞き、国に対しても許せないことについてはしっかりと意見が言えるようにしてもらいたい」


 こうした意見に対し古橋美智子副会長は、「現在、迷走しているのは保険制度そのもの、負担や保険料について。看護協会としては、後期高齢者と呼ばれる人たちの暮らしを重視して、その中で介護を考え、そして必要な医療を考える、というスタンスに立っている。その上での訪問看護。制度については、改めて議論が行われるということなので、その議論を待ちたい」と述べた。


 さらに、それを受けた代議員の発言には大きな拍手がわき起こった。
「そもそも、国民はこの制度そのものに反対している。医師会も多くが反対。75歳以上の人たちはじめ、多くの国民は、怒っている。それなのに、看護協会は制度の是非を問うこともなく、『制度が通ったからこうしよう』と言っている。そのことは非常に残念。ぜひ、看護協会も医師会のように反対の声明を出せないものか、期待している」


更新:2008/05/20 21:49 キャリアブレイン


 患者や利用者の声を聞いている現場の看護師は、地に足がついた発言をする。一方、日本医師会日本看護協会も、執行部は腰が引けているとしか、言いようがない。

レッドソックス・ネーションへようこそ

 李啓充氏は、米国の医療事情に詳しい著作家という側面の他に、ボストン在住の大リーグコラムニストという一面がある。先日行われた医療講演会で勧められた著書2冊をご紹介する。

レッドソックス・ネーションへようこそ

レッドソックス・ネーションへようこそ

怪物と赤い靴下

怪物と赤い靴下


 前者は週刊文春に連載されていた「大リーグファン養成コラム」を抜粋し編集したもの、後者は鳴り物入りで入団した松坂大輔を中心にレッドソックスの波瀾万丈の1年間を綴ったものである。


 レッドソックスファンは、ヤンキースのことを「悪の帝国」と呼んでいる。2002年に、キューバから亡命したホセ・コントレラスをめぐる獲得争いに破れたレッドソックスCEOラリー・ルキーノが、金満球団ヤンキースをこう罵ってから定着した呼び名である。一方、著書名にもなっている「レッドソックス・ネーション」は、レッドソックスファンがヤンキースとのライバル関係を表現するために使用されている。「ネーション対帝国」という関係は、スターウォーズを模している。


 大リーグの選手は、単に技量的に優れているだけでは尊敬されない。ジャッキーロビンソンが活躍しなければ黒人の地位向上はなかった。ニカラグア地震の際に救援物質を運んだ飛行機墜落事故で亡くなったロベルト・クレメンテは、世代を超えて敬愛されている。大リーガーという地位が人格を磨き、社会活動に旺盛に取り組む文化を築きあげていった。
 レッドソックスは、小児癌研究基金「ジミー基金」のメイン・スポンサーであり、選手が癌と闘っている小児を励ましにいくことを当たり前のように行っている。癌を克服して、球界に復帰し、患者を勇気づけている大リーガーも少なくない。
 5月19日、レッドソックスのレスター投手がロイヤルズ戦でノーヒット・ノーランを達成した。レスターは2006年に悪性リンパ腫にかかった。その際、レスターは自ら記者会見で自分の癌について説明し、大リーグへの復帰を誓った。その11ヶ月後の2007年7月23日、レスターはメジャーのマウンドに復帰し、勝利投手となる。さらに、ワールドシリーズの第4戦にも登板し、21世紀になって2度目の優勝に貢献した。その際、レスターは「癌と診断された後、これからは、子供が野球を楽しむように野球を楽しむのだ、と自分に誓った。だからプレッシャーなど感じなかった」と語っている。


 「レッドソックス・ネーションへようこそ」も「怪物と赤い靴下」も、レスター投手にまつわるような話が満載されている。レッドソックスを愛し、大リーク選手を尊敬する李啓充氏の話術に魅了される。その一方、大リーグを覆う薬物汚染とその背景にある拝金主義にも鋭い警告を発している。


 本書を読んで、無性に野球を見に行きたくなった。日本でも地域密着型の球団が増えている。ボールパークに行き、贔屓の選手の応援をしてみたい。