身体的拘束の最小化(1)定義

 引き続き、2026年度診療報酬改定について検討する。中央社会保険医療協議会 総会(第647回) 議事次第|厚生労働省総-1個別改定項目について[PDF形式:4.8MB]の479〜486ページをもとに身体的拘束最小化に関わる規定を確認する。まず、診療報酬の規定する身体的拘束の定義を確認する。

 

 

 第2部 入院料等の通則に身体的拘束最小化に関する減算の記述がある。保険医療機関全体に影響が及ぶ重要な規定である。

  • 身体的拘束最小化の基準を満たすことのできない保険医療機関について、所定点数から1日につき40点を減算する。
  • ただし、(身体的拘束最小化に関する基準のうち、身体的拘束最小化の実績等に係る基準を満たしていない場合)、身体的拘束最小化の体制に係る基準は満たす保険医療機関については、所定点数から1日につき20点を減算する。

 

 身体的拘束最小化の実績等に係る身体的拘束の基準は次のとおりとなっている。

  • 身体的拘束とは、抑制帯等、患者の身体又は衣服に触れる何らかの用具を使用して、一時的に当該患者の身体を拘束し、その運動を抑制する行動の制限をいうこと。
  • ただし、実施した身体的拘束が以下のアからウまでのいずれかに該当する場合は、身体的拘束を実施した日数に含めない。なお、アからウまでに該当する場合であっても、常に身体的拘束の解除や代替策の導入について検討し、身体的拘束の最小化に努めること。
    • ア 衣服に触れるものの、患者の動作により容易に外れ、患者の自発的な運動を制限することはない状況で用いられる、見守りや職員を呼ぶためのセンサー等を使用している場合
    • イ 処置時や移動時に、患者本人又はその家族の同意を得た上で、安全確保のために短時間固定ベルト等を使用する場合であって、使用している間、常に職員化介助等のために当該患者の側に付き添っており、処置や移動の終了時に確実に解除している場合
    • ウ 患者が訓練のために自由に車椅子を操作することのできる状態であって、患者本人又はその家族の同意を得た上で、車椅子操作による訓練の時間中のみ安全確保のために固定ベルトを使用する場合(車椅子の前にオーバーテーブルを設置する、車椅子をロックする等の方法により、患者本人の活動を制限している場合は該当しない

 

 中央社会保険医療協議会 総会(第623回) 議事次第|厚生労働省総ー2入院について(その3)[PDF形式:5.6MB]別ウィンドウで開くに身体的拘束の資料がある。

 

 この図に示されている処置時等の一時的身体的拘束や衣服に装着して患者等の離床等を把握するクリップセンサー等を身体的拘束最小化に係る実績等に含めないために、定義の明確化が行われている。

 

 なお、身体的拘束の定義が不明確のため、医療、介護の現場に混乱が起きている。臨床研究においても、身体的拘束の定義が異なると各研究を比較検討することが難しくなる。

 


 本論文では、Physical Restraintsを次のように定義している。

"Physical restraint is defined as any action or procedure that prevents a person's free body movement to a position of choice and/or normal access to his/her body by the use of any method, attached or adjacent to a person's body that he/she cannot control or remove easily.”

 身体的拘束とは、いかなる方法によっても、本人が容易に制御または除去できない方法で身体に装着または隣接させ、本人の自由な身体動作を制限し、任意の位置への移動を妨げ、および/または自身の身体への通常のアクセスを妨げるあらゆる行為または処置をいう。

 

 診療報酬で定義された身体的拘束は、上記に照らしあわせれば、身体に装着した行動制限の行為または処置に該当する。身体に隣接させた行動制限で最もよく論文に出てくるのはbed railである。四方をベッド柵で囲み、降りられないようにすることである。私は、前者を身体的拘束(狭義)、後者を身体的拘束(広義)と区別している。身体的拘束最小化の指導をする際は、まず身体的拘束(狭義)を行わないことを目指すとともに、身体的拘束(広義)である4点柵も最小化を目指すことが大事であるということを強調している。