回復期リハ病棟に関わる診療報酬改定の論点が明らかに

 中央社会保険医療協議会 総会(第316回)平成27年12月2日が開催され、リハビリテーションに関する診療報酬改定の議論が行われた。個別事項(その5;リハビリテーション)についてが議論のもとになった資料である。
 本資料のなかで、最も重要な課題は回復期リハビリテーション料に関するものである。


 「回復期リハビリテーション病棟におけるリハビリテーションの効果・効率」、「高密度にリハビリテーションを実施する医療機関リハビリテーションの効果・効率」と題したプレゼンテーション資料が16-19ページにある。脳血管疾患等リハ(廃用症候群以外)に関するものを下記に呈示する。


 出典となった検証調査(27年度調査)とは、中央社会保険医療協議会 総会(第313回)平成27年11月18日の、診療報酬改定結果検証部会からの報告について、総−5−2(PDF:6,397KB)のことである。この資料120-126ページに、リハビリテーション実施状況調査(回復期リハ病棟票)があり、124ページがADL調査のもとになった調査票となる。よく見ると、「FIM を選択した場合は、運動項目 91 点満点でご記入ください」とある。したがって、12月2日の中医協に「10日あたりのADLの向上」の例として出されたものは、運動FIM効率(1日あたりの運動FIM改善)×10日間の値である。中央値が1.90となっているが、別の表現をすると運動FIM効率0.19ということになる。
 中医協資料をみると、1日あたり3単位以上6単位以下の方が効率が良いようにさえ見える。また、高密度にリハビリテーションを実施する医療機関のなかで効率が悪い医療機関と良いところでは、平均年齢、認知症患者(認知症III以上)割合、入棟時平均ADLで大差がないように見える。ただし、p値をみると、効率がわるいところは、平均年齢がやや高く、認知症患者の割合が多い傾向があると読み取ることもできる。残念ながら、発症から入棟までの期間(起算日と入棟日で算定可)、入院期間(入棟日と退院日で算定可)では比較されていない。運動FIM効率が良いところのほとんどは良質のリハビリテーションを提供しているところが多い。しかし、急性期医療機関と一体となって発症から早期に受入れを行い、リハビリテーションが不十分であろうと構わずに短期間で退院させるようなところでも、見かけ上の運動FIM効率をあげることは可能である。運動FIM効率だけでリハビリテーションの質を論ずることには慎重となるべきである。なお、ADL改善に大きな影響を及ぼす発症前のADLは、今回の調査項目には含まれていない。


 診療報酬改定の方向性は、下記のとおりになる。


 論点の部分「回復期リハビリテーション病棟の入院患者に対するリハビリテーションについて、医療機関ごとのリハビリテーションの効果に基づく評価を行うこととし、提供量に対する効果が一定の実績基準を下回る医療機関においては、1日6単位を超える疾患別リハビリテーションの提供について、入院料に包括することとしてはどうか。」ということが実際に実施された場合、大打撃を受ける医療機関は少なくないと想像する。


 患者の選別が強化されるのではないかという懸念も抱く。運動FIM効率が使用されるかどうかは不明だが、もし、使われるとなった場合、運用に注意が必要となる。


 上記は過去に学会発表した資料の一部だが、運動FIM改善は33-42点付近が最も高い山型を示すことが知られている。低い方は重症患者が多いため、一部を除いて低いレベルにとどまる。また、高値群は天井効果で伸びが悪い。運動FIM効率をあげようとすると、この両者が対象者からはずれる可能性がある。重症患者だけでなく、ADL指標では推し量れない目標、例えば、IADL能力向上、失語症改善、上肢巧緻性向上を目標とした患者も回復期リハ病棟に入りにくくなる。
 診療報酬改定における成果主義は、平成20年度に実施された回復期リハ病棟に対する日常生活機能評価導入から始まった。今回の改定は成果主義をいっそう強化するものと言える。