震災関連自殺が福島で増加

 今年になって震災関連自殺が福島県で増えていることが、本日新聞報道された。


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 東日本大震災東京電力福島第一原発事故に関連する県内の自殺者が増加傾向にあることが内閣府のまとめで分かった。今年は8月末現在で15人に上り、昨年1年間の13人、一昨年の10人を既に上回っている。岩手県の5倍で被災3県で最も多い。専門家は古里を離れての避難の長期化が精神的な負担を増大させていると指摘。増加傾向に拍車が掛かる懸念があり、対策が急務となっている。


(中略)


 23年からの累計の市町村別では、いわき市が8人で最も多い。南相馬市が7人、福島市が5人、相馬市が4人と続いている。津波被害を受けた沿岸部や仮設住宅を数多く抱える中通りに集中している。死亡時の居住地を基に積算しており、双葉郡から避難し、いわき市仮設住宅で自殺した場合はいわき市に計上される。

避難長期化で自殺増 県内1~8月 被災3県で最多15人 古里離れストレス | 東日本大震災 | 福島民報


 報道のもとになった資料は、http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/toukei/index.html最新の震災関連自殺者数(PDF形式:307KB)である。下記表が、福島民報都道府県別表に一致する。なお、本資料を読むと、基礎資料は警察庁から自殺分析班に伝達され、プライバシーに配慮して、全国または都道府県別等の形式にて公表することになっている。したがって、今回、福島民報が市町村別の資料を公表したのは、同社が事前に分析班から自殺対策推進室・警察庁厚生労働省に相談し、了解を得たものと推測する。


 「東日本大震災に関連する自殺」とは、次のように定義される。

  1. 遺体の発見地が、避難所、仮設住宅又は遺体安置所であるもの。
  2. 自殺者が避難所又は仮設住宅に居住していた者であることが遺族等の供述その他により判明したもの。
  3. 自殺者が被災地(東京電力福島第一原子力発電所事故の避難区域、計画的避難区域又は緊急時避難準備区域を含む。)から避難してきた者であることが遺族等の供述その他により判明したもの。
  4. 自殺者の住居(居住地域)、職場等が地震又は津波により甚大な被害を受けたことが遺族等の供述その他により判明したもの。
  5. その他、自殺の「原因・動機」が、東日本大震災の直接の影響によるものであることが遺族等の供述その他により判明したもの。

 例えば、1)遺書等に東日本大震災があったために自殺するとの記述があった場合
     2)生前、遺族等に対し、東日本大震災があったため自殺したい旨の発言があった場合


 http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/toukei/h24.html第3章 平成24年中における自殺の分析(3)を見ると、福島県の自殺者数が全国と比べ、特に多い訳ではない。平成23年度データとその前年と比べてみても同様である。


 第3章 平成24年中における自殺の分析(1)をみると、全国的には自殺死亡率は平成22年頃より低下傾向にあり、平成24年は15年ぶりに3万人を下回っている。


 大規模災害後には、メンタルヘルスケアが問題となる*1。自殺統計だけをみる限りは、震災関連死としての自殺が増加しているかどうかは明らかではなかった。しかし、震災関連自殺に的を絞って調査してみると、福島県のみ異常な推移を示していることがわかってきた。
 原発事故収束が見えないなか、住み慣れた故郷を離れ、長期にわたって避難生活を続けていることのストレスが問題となっている。うつ病アルコール依存症、閉じこもりによる孤立など、多種多様なトラブルが被災者を襲うことをあらためて認識しなければならない。