都市部の急速な高齢者増が深刻な問題に

 医学書院/週刊医学界新聞:第3009号  2013年01月07日は、「2025年の医療と介護」という特集である。この中に、次のような記述がある。

 本特集のテーマである"2025年"は,いわゆる「団塊の世代」(1947〜1949年に生まれた人)が75歳以上の後期高齢世代となる年であり,後期高齢者が総人口の20%弱を占めることになる。団塊の世代の脳裏に「介護」という言葉が現実問題としてちらつき始める,いわば本格的な超高齢社会の始まりの年と言える。

 この高齢化は,特に東京近郊などの都市部を中心に,急速な進展が予測される。

 この間、当ブログでも、2025年問題を重視し、超高齢社会の到来にともなって生じる看取り問題、認知症対策、住まいの確保などについて関連エントリーで触れてきた。今回は、都市部における急速な高齢者増問題に関し、二次医療圏のデータを基に深刻な実態であることを提示する。


関連エントリー


 2025年問題に関して最も簡潔にまとまっているのは、第1回介護施設等の在り方委員会 H18.9.27 資料4 今後の高齢化の進展 ~2025年の超高齢社会像~である。認知症、一人暮らし、死亡者増の問題とともに、次のような指摘がなされている。

 これまでの高齢化の問題は、高齢化の進展の「速さ」の問題であったが、平成 27(2015)年以降は、高齢化率の「高さ」(=高齢者数の多さ)が問題となる。

 今後急速に高齢化が進むと見込まれるのは、首都圏をはじめとする「都市部」である。今後、高齢者の「住まい」の問題等、従来と異なる問題が 顕在化すると見込まれる。(表3)


 都道府県レベルで見た高齢者増加数の違いについては、日本の都道府県別将来推計人口 (平成 19 年 5 月推計)に詳しい。
 都道府県内でも高齢化のありさまは異なっている。医療機関の医療情報センター | ウェルネス > 運営サイト/コンテンツ > 2次医療圏データベースシステム ダウンロードに、無償の2次医療圏データベースシステムが公開されている。この中の、「2次医療圏基礎データ(巧見さん)Ver4.0.1.xls」を用いて、2010年および2025年の高齢化率、および、2010年から2025年にかけての高齢者数増加を色分けして可視化した。
 高齢化率は、データベース中にある65歳以上人口を総人口で割ったものである。2010年データは、平成22年国勢調査 人口等基本集計(男女・年齢・配偶関係,世帯の構成,住居の状態など)による。一方、2025年データは、2005年国勢調査及び国立社会保障・人口問題研究所 市区町村別将来推計人口に基づく。
 高齢化率を、20%未満(青)、20〜25%(緑)、25〜30%(黄)、30〜35%(橙)、35〜40%(赤)、40%以上■(黒)と色分けし、図示した。


# 高齢化率(2010年)


 全国的には、2010年の高齢化率は22.8%となっている。都市部を中心に20%未満(青)や20%以上25%未満(緑)の地域が存在する。沖縄も高齢化率は低い。一方、橙や赤で示した高齢化率30%以上の地域は、北海道、東北、北陸、山陰、四国、九州などに広がっている。


# 高齢化率(2025年)

 2025年になると、高齢化地図は一変する。高齢化率の全国平均は30.5%となり、30%以上(橙、赤、黒)の地域が日本全土をほぼ覆っている。高齢化率20%未満(青)の地域はなくなり、20〜30%の地域が都市部を中心にわずかに残っている。


 一方、高齢者数増の視点で見ると、逆の様相を示す。高齢者増(2010年-2025年)を、減少(青)、0〜2,499人(水色)、2,500〜9,999人(緑)、1万〜2万4,999人(黄)、2万5,000〜9万9,999人(橙)、10万人以上(赤)と色分けし、図示する。

# 高齢者数増(2010年-2025年)


 都市部で、高齢者数増2万5,000人以上の地域(橙、赤)の地域が目立つ。特に増加数の多い10万人以上の地域を列挙すると、次のようになる。
 札幌(北海道):482,480→688,293(205,813人増)
 仙台(宮城):284,772→398,010(113,238人増)
 船橋(千葉):318,099→437,217(119,118人増)
 松戸(千葉):279,825→381,042(101,217人増)
 区西北部(豊島区、北区、板橋区練馬区)(東京):382,993→561,811(178,818人増)
 八王子(東京):294,265→408,349(114,084人増)
 名古屋(愛知):471,879→585,532(113,653人増)
 大阪(大阪):598,835→702,505(103,670人増)
 神戸(兵庫):354,218→456,440(102,222人増)
 福岡(福岡):275,633→399,929(124,296人増)


 高齢者数減を認める地域(青)も散在している。高齢化率(2025年)40%以上の地域にほぼ一致する。これらの地域では、高齢者数減も生じているが、それ以上に生産年齢人口・年少人口減が大きく、高齢化率が悪化している。
 医療・介護需要の問題を考えた時、高齢化率の進行よりは高齢者数増加の影響の方が大きい。高齢者数がほぼ変化しない、場合によっては減少する地域では、現時点での需要に基づいてサービス供給体制の検討をすれば良いが、高齢者の急激な増加が見込まれる都市部では、この10数年を見越した計画を立てなければならない。その中には、看取り問題、認知症対策、住まいの確保だけではなく、リハビリテーションサービスの充実も当然入ることになる。