プラザキサの使い方は意外に面倒

 血液凝固阻止剤「プラザキサカプセル」服用患者での重篤な出血に関する注意喚起について |報道発表資料|厚生労働省より。

○ 「プラザキサカプセル」(別添1参照)は、心房細動を起こした患者で血栓ができ、脳卒中や全身性塞栓症が発症しないよう、血液を固まりにくくするための薬剤。出血があった場合、血が止まりにくくなる副作用が知られている。


○ 6月13日までに本剤投与患者で、関連性の否定できない重篤な出血性副作用による死亡例が1例(腎不全患者)報告され、厚生労働省から製造販売業者に医療機関に対して直ちに情報提供を行うように指示してきたところ。その後、8月11日までに、関連性の否定できない出血性副作用による死亡例が厚生労働省に4例報告された。


○ これら合計5例の死亡例の年齢は、70歳代1名、80歳以上4名、性別は、男性1名、女性4名であった。


○ 患者の安全確保のため、今回、
1 本剤の投与前及び投与中に腎機能検査を行うこと。
2 出血や貧血等の徴候を十分観察し、出血が見られた場合には適切な処置を行うこと。
3 患者に対し、出血等の徴候が現れた場合に直ちに医師に連絡するよう指導すること。
が重要であり、別添2のとおり、「使用上の注意」の改訂を行うとともに、医薬関係者に対して速やかに情報提供するよう、製造販売業者に対して指示した。


○ 「プラザキサカプセル」の服用患者にあっては、鼻出血、歯肉出血、皮下出血、血尿、血便等に注意し、出血があった場合には直ちに医師に連絡することが重要である。


 【別添2】「使用上の注意」の改訂内容(PDF:183KB)をみると、次のような記載がある。

[慎重投与]
# ダビガトランの血中濃度が上昇するおそれがある

  • 中等度の腎障害(クレアチニンリアランス 30-50mL/min)のある患者
  • P-糖蛋白阻害剤(経口剤)を併用している患者

# 出血の危険性が高い

  • 70 歳以上の患者
  • 消化管出血の既往を有する患者


 P-糖蛋白阻害剤とは耳慣れないが、ノバルティス ファーマ|DR‘s Net :トップページに説明がある。キニジン、ベラパミル(カルシウム拮抗薬)、シクロスポリン(免疫抑制薬)などが例として上げられている。P糖蛋白質(p-gp;P-glycoprotein;p糖タンパク質) : 薬局薬剤師 薬の説明をみると、次のような薬が上げられている。

P糖蛋白質を阻害する薬剤
マクロライド系(クラリス他)
リピトール(アトルバスタチン)
サンディミュン/ネオーラル(シクロスポリン)
プログラフ(タクロリムス)
ジプレキサ(オランザピン)
ルーラン(ペロスピロン塩酸塩)
リスパダール(リスペリドン)
ワソラン(ベラパミル塩酸塩)
ヘルベッサー(ジルチアゼム塩酸塩)
キニジン硫酸塩水和物
アンカロン(アミオダロン塩酸塩)
ノービア(リトナビル)
ビラセプト(ネルフィナビル)
インイラーゼ(サキナビル)


SSRIジェイゾロフトセルトラリン)=パキシルパロキセチン)>デプロメールルボックスフルボキサミンマレイン酸塩))  など

 Dabigatran versus Warfarin in Patients with Atrial Fibrillation. N Engl J Med 2009;361:1139-51.を見ると、Dabigatran(プラザキサ)はWarfarinより安全ということがわかる。ただし、クレアチニンリアランス30ml/分より小さい重度腎障害患者はあらかじめ除外されている。
 出血の危険性が高い患者に注意というのは、ワーファリンも同じである。となると、腎機能障害者に十分注意をすることが最も大事となる。問題は、P-糖蛋白阻害剤(経口剤)となるが、頻用薬ばかりであり、注意をすることは実際には困難である。
 プラザキサは、画期的な新薬であるが、使い方が意外に面倒である。薬価も高い。新薬であり投与日数も14日間と制限されている。1日2回投与ということもコンプライアンスを下げる。今後、同種薬剤の発売も予定されている。プラビックスがチクロピジンにとって代わったようなことが、プラザキサとワーファリンとの間で起きるかどうかを見極める必要がある。